【レポート】

MIX 06 - ゲイツ氏とティム・オライリー氏が"Web 2.0"対談

    Yoichi Yamashita  [2006/03/24]

    MIX 06でBill Gates氏が基調講演を行った後、対談セッションが用意された。ゲストの質問にGates氏が答えるという形だが、そのゲストがWeb 2.0というキーワードを広めたTim O'Reilly氏だった。

    Tim O‘Reilly氏(左)とBill Gates氏

    「私がここにいるのは、私がWeb 2.0というアイディアで、無数のブログのポストとVC(ベンチャーキャピタル)の参入を促した人物だからだろう。ここではLiveソフトウエアと呼ばれているが、インターネットをプラットフォームとして進化させようとしている点で、我々は同じことについて話していると思う」とO'Reilly氏。ただし、O'Reilly Mediaの創設者である同氏は、オープンソースを支援してきた人物としても知られる。同じことを話しているかもしれないが、"相容れない価値観"も持っている2人の対談である。

    O'Reilly氏はまず、1人のハッカーがGoogle Mapsと掲示板サービスを組み合わせて、賃貸情報データを地図上に表示するサービスを構築したことが、マッシュアップが注目されるきっかけになったと紹介。Gates氏が基調講演で触れたWS-*仕様のような重々しいフレームワークとは無関係の場でマッシュアップが起こっていると指摘した。これに対しGates氏は、マッシュアップの起こりは自分たちがBASICでシンプルなプログラムを組んでいた頃と同じであり、その技術が成長し始めたら、誰もが有効に活用できる仕組みを用意する必要があると述べた。

    具体的には、コンポーネント化された複数のWebサービスを結びつけてアプリケーションを構築するソフトウエア環境の実現へと向かうことになる。このインターネットの進化の中で、OSはWebサービスを実行する環境という役割を担うようになる。そこでO'Reilly氏は、「共通のプロトコルに従って小さな要素が結びついてきた、これまでのインターネットのようなOSになるのか、それともWin32と同様にマスターシステムとして君臨し、開発者を支援するOSになるのか?」と尋ねた。

    Gates氏の答えは「両方を兼ね備える」だ。認証システムやリッチなプレゼンテーション・フォーマットなどは、すべてのWebサイトで利用可能であり、それらを呼び出すかは開発者の自由である。「実際のところ、Microsoftからのサービスと他の企業のサービスも呼び出してつなぎ合わせるアプリケーションが存在するだろう。だが、サイトのユーザーにとっては意識する必要のない違いだ」とGates氏。Microsoftのフレームワークを利用してLiveアプリケーションを構築すれば、統合的なサービスの実現というメリットがある。だが、サードパーティが異なるライブラリを持ち込めるのもWindowsプラットフォームのメリットであり、"包括的なモデル"であり続けることを強調した。

    Googleとのライバル関係についてO'Reilly氏は、Microsoftがこれまでとは違う競争を強いられていると指摘した。Lotus、WordPerfect、Netscapeなどのケースでは、ソフトウエアを企業やエンドユーザーに販売するMicrosoftと同じビジネスモデルの企業が相手だった。だが広告モデルを採用するGoogleや垂直型のソリューションを提供するAppleの音楽事業は、異なったビジネスモデルでMicrosoftの前に立ちはだかっている。

    これについてGates氏は素直に脅威を認めた。「広告モデルの可能性ついては、たしかに過小評価していた。だが、このような例は過去にいくつもあった。重要なのは事実を認め、正しく評価し、それを乗り越えようとすることだ」とGates氏。ただし、Microsoftの持ち味を損なう方法では意味がない。たとえばAppleの音楽事業のビジネスモデルはiPodの好調な売り上げが基盤となっているが、携帯電話に置き換えただけで崩れてしまったと指摘した。

    同氏はMicrosoftのビジネスモデルを支える要素としてボリューム・コンセプトを挙げた。製品開発にコストをかけても、多くのユーザーに利用してもらえれば、結果的に優れた製品をより安く提供できる。「Microsoftは、他のどのような企業よりもソフトウエアの価格を引き下げる努力をしてきた」とGates氏。その背景にはユーザー中心という姿勢が存在する。だから、PCからデジタル家電という動きの中でも、Microsoftはデバイス中心ではなく、ユーザー中心であり続ける。Webサービス戦略においても同様のアプローチを保つ。

    O'Reilly氏によると、Cal Henderson氏がFlickrを開発したとき、30分おきに新しいビルドを公開していた時期があったという。またGoogleやAmazonは、実験的なサービスを継続的な"ベータ"として公開し続けている。最後の質問はこのようなスピード重視のソフトウエア開発を「Microsoftも採用するのか、それともリスクと見るか?」だった。

    Gates氏はソフトウエアのタイプによる使い分けになると答えた。たとえばSQLデータベースは、互換性やトランザクションの信頼性などを徹底的にテストした上で提供する必要があるため数年ごとのリリースを維持し続ける。OSのカーネル、スケジューリング・アルゴリズム、ファイルシステム・アルゴリズムなども同様に2~3年のサイクルを守る。一方で「ブラウザはより機敏な開発になる。9カ月なのか12カ月なのかはっきりとは言えないが、過去3年間よりもずっと短いサイクルになるだろう。MSN Messengerは機敏な開発な好例だ。1年に3度のメジャーリリースを繰り返しており、それがユーザーの幅広い採用につながっている」とGates氏。

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