【インタビュー】
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米セールスフォース・ドットコムのフィル・ロビンソンCMO |
米セールスフォース・ドットコムは、2005年9月に発表した「AppExchange」の本格稼動を開始した。AppExchangeはオンデマンド型アプリケーション共有基盤で、業務アプリケーションを交換、共有、配布することができる。セールスフォース・ドットコムの顧客、開発者、パートナーが作成したさまざまなアプリケーションが用意されており、ユーザー企業は、これらを事業に活用することができるという。AppExchangeとその背景とされるビジネスWebの基本戦略を、同社のフィル・ロビンソンCMO(Chief Marketing Officer: マーケティング統括責任者)に聞いた。
--ビジネスWebとはどのようなものか?
コンシューマ向けには、Web2.0、マッシュアップ、ブログ、オープンソースなど、インターネットの新たな利用方法がさまざまに現れている。ビジネスWebは、これらの発想を、ビジネスの世界に適用したものといえる。アプリケーション、サービスなど、必要なものをWeb上から選択して、組み合わせもでき、利用することができる。ユーザー側は、データベースもメンテナンスも不要だ。ユーザー側のパソコンにソフトをもっている必要はない。AppExchangeは、このビジネスWebの発想をマーケットプレイス化したものだ。気に入ったソフトがあれば、クリック一つで手に入る。試用することもできる。
--AppExchangeの意義はどのようなことか
インターネットの進化により、コンシューマー向けのWebベースサービスが数多く提供されている。電子商取引ではeベイ、音楽配信ではアップルコンピュータのiTms(iTunes Music Store)、書籍販売ではアマゾンなどがある。それに比べて、ビジネスの領域では遅れていた面があったが、ここに来て、インターネットによるオンデマンドサービスが、ビジネスにも利用できるようになってきた。当社はもともと、CRMベンダーだったのだが、従来、ソフトを使用するには、コンピュータへのインストールを必要としていた。しかし、オンデマンド型サービスは、インストールは不要であり、Webブラウザベースでソフトを使用することが強みだ。
AppExchangeは、開発者に対し、インターネット経由で、各種のツールをフリーで提供する。これらにより彼らはWebベースでアプリケーションを作成することができる。さらに我々はホスティングサービスをしており、彼らはデータセンターを用意したりする必要もなく、ビジネスを展開していける。これは、いわば、eベイのエンタープライズ版といえるかもしれない。すべての人々に対し、Web上で、アプリケーションを利用してもらえる。さながらブログでも作るように簡単にできる。
--AppExchangeへの業界からの反応は
こうした活動の結果として、160本のアプリケーションがそろった。それらのうち20本は日本語版だ。我々のパートナーとして、Skype Technologiesなどのような新興企業がある一方、これまで通りのやり方でソフトを市場に提供している、売上高が数20億ドル規模のいわば伝統的なアプリケーションベンダーもおり、Webベース、オンデマンド供給の手法を模索している。一方、小規模の開発者もディレクトリに登録するだけで、アプリケーションを制作できる。これらのアプリケーションを組み合わせて、新しい使い方をすることもできる。
パートナーはいま、200社を超えている。日本企業では、マクニカ、シャノンが参加する意向で、さらに3社が開発表明している。AppExchangeに携わっている開発者は1,500人おり、AppExchangeサイトへのアクセスは1四半期あたり、12億ページビューで、開発者はさらに増加している。2005年9月にこのサービスを発表した時点では、集まったのは数社だったが、4ヶ月ほどで、アプリケーションは160種にまでなった。向こう1年で1,000種くらいにはなるのではないかとみている。Web上で、CRMについてコミュニティができている。ユーザー、パートナーが開発するアプリケーションはさらに増えている。従来のソフト開発のプロセスでは、企業がリーダーシップをとっているわけだが、AppExchangeではコミュニティが主導権をもっている。
--AppExchangeは何を目指すのか
このビジネスモデルは、すべての業種にわたる企業から注目されている。ロングテールの法則というものがある。すべての市場で、大手の企業は、製品の10%を扱って事業をしている。のこり90%にはリーチしていない。書店で例えると、よく売れる本、すなわち全種類の書籍の10%ほどしか売っていない。(※ベストセラー上位の書籍が、売り上げのほとんどを稼ぎ出すため、少数しかしか売れない本は、なかなか店頭においておけない)
一方、アマゾンドットコムなどのネット書店では、非常に少数派に属する本を売っている。米国のサンフランシスコでいえば、カラオケの本だとか、ブラジル料理の本などは、極めて小規模の市場にしかならないので、一般的な書店には置いていないが、アマゾンなら扱っている。ロングテールの法則とは、このような市場をカバーできれば収益につながるということだ。これらのような本は、それぞれは小規模であっても合計すれば、全体としては利益は大きくなるからだ。ネットならそれができる。
コンピュータのアプリケーションベンダーも同様に、この10%の領域にいる。CRM、ERPなど、多数の企業が利用しているので、市場としては大きいのだが、いろいろな競合同士が、同一の市場で戦っている。AppExchangeは、これ以外の90%の市場にフォーカスしていけることになる。さまざまなアプリケーションを組み合わせて、多様な需要に応えられるものを構築できる。
--セールスフォース自体にはどのような益があるのか
20年前のWindowsの状況を振り返ってみればわかるが、Windowsが基盤となって、そのアプリケーションが増加することによって、市場は活性化した。AppExchangeのプラットフォームが伸長して、ページビューが増え、ユーザーが拡大すれば、これまで、セールスフォースのCRM、SFAを使わなかった層にまでセールスフォースの製品の裾野が広がることが期待できる。
--日本市場での展開は
日本国内の企業からも良い感触を得ている。海外のベンダーが、製品、サービスなどをそのまま持ち込んでも、日本ではなかなか成功しない面もあったが、多様な要素を組み合わせて、独創的なものをつくりだす文化は受け入れられるのではないかと考えている。一方、日本では携帯電話の市場が発達しているので、モバイルは非常に重要になる。携帯電話向けの取り組みに注力し、AppExchangeを携帯電話に対応させていきたい。
--これまでパソコンソフトは、ユーザー側にソフトをインストールさせて使うのが普通だったが、基本的にWebブラウザだけで利用する、AppExchangeのような手法が、今後は一般化するのか
そうなると思う。従来のソフトの世界は、予想を上回る早さで新しい時代に移行していくだろう。
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