【レポート】

サイエンス+フィクション - SFのサイエンスとフィクションをあえて分ける

1 科学者の研究内容をアーティストが聞き、作品化

    山田久美  [2006/02/26]

    "科学者"と言われたとき、真っ先に誰を思い浮かべるだろうか? アインシュタインやニュートン、最近ではノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東京大学名誉教授と答える人も多いだろう。ちなみに筆者は、「鉄腕アトム」に登場する、お茶の水博士を思い浮かべた。

    テーマごとに設置されたサテライトボックス。引き出して資料を閲覧できる。これはヨーロッパでバロック期に発祥した「ブンダーカマー(世界中の珍しい事物を入れた引き出し)」に着想を得ているという

    東京・お台場の日本科学未来館では、27日まで「サイエンス+フィクション」と題された展覧会が開催されている。ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンが、科学者を支援するために設立したフォルクスワーゲン財団の創立40周年記念で、2002年から行われているものだ。

    ヨーロッパ7カ所を巡った後、2005年12月から日本で開催されており、アジアでは初となる。会場の日本科学未来館は、ドイツ連邦共和国大使館/ドイツ外務省主催の「日本におけるドイツ年」(2006年3月末まで)に協賛しており、同展覧会は、ドイツで生まれた2つの展覧会を日本で公開しようという特別企画の一環で、「サイエンス・トンネル」に続くものなっている。

    "サイエンスフィクション"とは、いわゆる"SF"であり、古くから小説や映画で描かれてきた未来に関する空想の世界の話である。しかし、数多くの科学者たちが日々研究を重ねてきた結果、それらは単なる空想に留まらなかった。すでに実現されている技術も、中には少なくない。このことは、その恩恵にあずかっている我々が、最も実感していることではないだろうか。

    サテライトボックスの上に飾られたオブジェは、鑑賞料を払って解剖を見学するライデンの解剖施設(1616年)で、ローマの円形闘技場がコンセプトになっている。解剖台は円形ステージの中央にあり、どの席からも見えるようになっている。医師を対象に行われる教育目的の解剖もあれば、数日間かけて行われる一般市民を対象にした公開解剖もある。時には家族そろって見学に来る場合もあり、また、生殖器や、女性の遺体を解剖する場合は入場料が倍になったという

    そしてその一方で、科学の発展が同時に、さまざまな弊害を生み出してしまったことも事実である。我々は「今後、科学をどのように発展させていくべきか」について、深く議論していくべき局面に立たされているとも言える。

    展覧会は、サイエンスとフィクションをあえて分けるこ、"科学と社会の関係"について、あらためて考えてみようというものである。そしてそれを "芸術"と交差させた形で展示している点が斬新で、興味深い部分であると言える。"芸術と交差させた"とは、科学者の研究内容をアーティストが聞き、それによってインスパイアされたイメージをアーティストが作品として昇華した、ということである。

    テーマは大きく分けて5つで、(1)「サイエンスフィクション」、(2)「脳研究」、(3)「ナノテクノロジー」、(4)「グローバルカルチャー」、(5)「未来」となっている。それに連動して5組のアーティストが参加しており、内訳はドイツから3組、オーストリア、オランダからそれぞれ1組となっている。キュレーター(学芸員)が、普段から、各科学者の研究テーマに合致しそうな活動を行っているアーティストを選び出し、参加を呼びかけ、実現したとのことである。

    また、会場にはアート作品だけでなく、作品を中心に"サテライトボックス"が設置されている点も大きな特徴だ。これは各テーマに関連した資料やオブジェ、コンテンツを"引き出し形式"で閲覧できるというもので、現代の科学と社会を考える上でのキーワードや、多様な視点を投げかけてくれている。

    では、次ページから、実際の展示内容について簡単に紹介していくことにしよう。

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