【インタビュー】

Microlithography 2006 - 光源開発の現状をCymerに聞く

    福田昭  [2006/02/23]

    半導体露光装置用光源の大手ベンダーである米Cymerに、Microlithography 2006の会場で光源開発の現状をインタビューした。同社は1990年代前半までは、光学研究用ガスレーザーを主要製品としていた。ところが1990年代後半に半導体露光装置の光源がランプからレーザーに移ったことにより、露光装置用光源の大手ベンダーにのし上がった。現在はKrF(フッ化クリプトン)エキシマレーザーとArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザーを主力製品としている。また次世代露光技術であるEUV(Extreme UltraViolet)露光に向けた光源を開発中である。

    インタビューでは、Cymerのマーケティング担当バイスプレジデントのPatrick J. O'Keeffe(パトリック J. オキーフ)博士にお話を伺った。

    Cymer マーケティング担当バイスプレジデントのPatrick J. O'Keeffe博士

    --半導体露光装置分野におけるCymerの過去の実績は。

    オキーフ博士)1997年に最初の半導体露光装置用KrFエキシマレーザー「5000シリーズ」が半導体の量産に使われ出したのが始まりだ。パルス発振の繰り返し周波数が1kHz、出力が10Wの機種である。1999年には繰り返し周波数が2kHz、出力が20Wの「6000シリーズ」の出荷を始めた。その後は繰り返し周波数が4kHzで、出力が30Wの「7000」シリーズと、出力が40Wの「7010」シリーズを出荷した。7000シリーズと7010シリーズは90nmプロセスの量産用露光装置向けに、現在も出荷を続けている。

    --ArFエキシマレーザーはどうか。

    オキーフ博士)ArFエキシマレーザーの最初の製品「XLA100」の出荷は、2003年に始めた。ArFレーザーでは波長の狭帯域化とレーザー出力の向上をKrFレーザーよりも進めるため、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)と呼ぶ新しい技術を導入した。ガスチャンバーを2つ用意し、1つをレーザー発振用チャンバー、もう1つをレーザー増幅用チャンバーとする。レーザー発振用チャンバーには狭帯域化モジュールが組み合わせてある。不足分の出力をレーザー増幅用チャンバーで補う仕組みだ。

    --液浸リソグラフィへの対応は。

    オキーフ博士)液浸リソグラフィ用ArFレーザー「XLA300」の出荷を2005年末に始めた。パルス発振の繰り返し周波数が6kHz、出力が60Wといずれも高い。45nmプロセス対応のArF液浸露光装置向けである。

    ArFエキシマレーザー(「XLA」シリーズ)開発の歴史。半導体製造技術の微細化に対応すべく、狭帯域化と高出力化を進めてきた。なおここには掲載していないが、第5世代機「XLA 400」を2005年12月に発表している。XLA400は繰り返し周波数が6kH、出力が90Wの性能を備える。出荷予定時期は2006年第2四半期である

    --今後はどのような光源を開発するのか。

    オキーフ博士)32nmプロセス向けには、光リソグラフィ技術とEUV技術の双方を想定して開発を進めている。光リソグラフィでは開口数(NA)を1.3~1.5と上げるとともに、2重露光技術(露光を2回繰り返して解像度を高める手法)を導入することが考えられる。その場合、200WクラスのArFエキシマレーザーが必要になりそうだと想定している。

    --EUV光源の開発は。

    オキーフ博士)EUV用光源の開発に力を入れだしたのはここ2~3年のことだ。IntelがEUV露光技術の開発を押し進めていることが大きい(記者注:Intelは2004年1月に、2000万米ドルを出資してEUV光源の開発でCymerに協力してもらうことで合意したと記者発表した)。

    --EUV光源の開発状況について。

    オキーフ博士)光リソグラフィ光源とは違ったアプローチがEUV光源には必要である。XeF(フッ化キセノン)エキシマレーザーで錫(Sn)のプラズマを発生させ、プラズマからEUV光を取り出す。すなわち光源は、レーザー装置とプラズマ発生装置に分かれている。いずれの装置もCymerが独自に開発した。

    開発中のEUV光源。左側のXeFレーザー装置(「XeF Drive Laser」)と右側のプラズマ発生装置(「Source Chamber」)で構成される。プラズマ発生装置内の錫(Tin)にXeFレーザーを照射して錫をプラズマ状態に変化させる。プラズマが発生するEUV光を取り出し、半導体露光に利用する

    --実用化のカギとなるのはどのような点か。

    オキーフ博士)プラズマを反射集光するコレクターが重要である。きわめて高価で、しかも複雑な部品だ。コレクターを通じてプラズマの状態を観察し、いろいろなパラメーターがプラズマに与える影響を探っている。

    プラズマの状態を観察する仕組み。左のプラズマを反射鏡(コレクター)で集光し、絞り(アパーチャー)を通してから蛍光に変換する。蛍光をCCDカメラで撮影し、プラズマ状態の変化を観察する

    --プラズマの発生方法には放電励起とレーザー励起がある。レーザー励起を選んだのはなぜか。

    オキーフ博士)初めは放電励起で開発を始めた。しかし放電励起では出力の制限があることから、現在はレーザー励起で開発を進めている。

    --励起用レーザーにもいくつかの候補がある。XeFレーザーを選んだのはなぜか。

    オキーフ博士)KrFとArFでエキシマレーザーの経験を積んでいたことが理由としては大きい。Cymerにとっては開発しやすいレーザーだ。

    Philipsが、ASMLのEUV露光機向け光源の概要を公表

    以上がインタビューの内容である。補足するとCymerは、Microlithography 2006の技術講演(講演番号6151-26)でEUV光源の開発ロードマップを一部公表した。第1世代の光源は励起用レーザー出力が9.6kW、EUV出力が110Wを目標仕様とする。第2世代光源の仕様はそれぞれ12.0kW、155W、第3世代光源の仕様はそれぞれ14.4kW、230Wとなる。

    このほかMicrolithography 2006では、ASMLのEUV露光装置「AD-tool」向けの光源技術をPhilipsが公表した(講演番号6151-25)。放電励起型プラズマ光源である。2個の錫(Sn)電極の間で放電を起こしてプラズマを発生させ、EUV光を取り出す。放電開始は、レーザーで片方のSn電極を照射することでトリガーをかける。

    EUV出力は連続運転で200Wとかなり大きい。Sn電極の寿命は20億ショットある(電極に損傷が発生しない場合)。フィードバック制御でEUV出力を一定値に保てるようにしてあり、100万ショットでの露光量ばらつきは0.21%と低い。

    プラズマが発生する飛散物(デブリ)がコレクターを汚す問題は、デブリをトラップ(捕捉)する仕組みと、デブリを除去する仕組みの導入で対応する。デブリを捕捉する仕組みを取り付けたところ、1億ショットでもコレクターには劣化が見られなかった。10億ショットまではデブリの除去なしで使えそうだとする。

    デブリの除去(クリーニング)は、コレクター表面に付着したSnをSnX2、SnX4といった錫化合物に変えてから蒸発させる仕組みである。クリーニングを10回繰り返してもコレクターには劣化がみられなかった。この結果、100億ショットの寿命が期待できるとしている。

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