【レポート】
半導体製造用露光装置の大手ベンダーであるASMLは、光学器械メーカーのCarl Zeiss SMTと共同で開発しているEUV(Extreme UltraViolet)露光装置の内容をMicrolithography 2006で公表した(講演番号6154-04および講演番号6151-08)。この露光装置は、2006年前半にリソグラフィ技術の開発用装置として出荷される予定である。
2009年~2010年ころに量産が始まるとされている技術ノード32nmの半導体製造プロセスでは、二つの露光技術が有力視されている。一つがArF液浸露光技術、もう一つはEUV露光技術である。32nmノードの手前に相当する45nmノードでは、ArFドライ露光技術の延長にあるArF液浸露光技術が本命だとされており、大手露光装置ベンダーであるASMLとニコンが量産用のArF液浸露光装置を出荷し始めている。32nmプロセスはArF液浸露光の改良で対応できる可能性もあるが、まだ先行きは不透明である。
| 技術ノード | 65nm | 45nm | 32nm | 22nm | 16nm | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年 | 2005年 | 2007年 | 2009年 | 2011年 | 2013年 | |
| 光源(波長) | 開口数(NA) | プロセス係数(k1) | プロセス係数(k1) | プロセス係数(k1) | プロセス係数(k1) | プロセス係数(k1) |
| ArF(193nm) | 0.93 | 0.31 | ||||
| 1.00 | 0.40 | |||||
| 1.20 | 0.28 | |||||
| 1.35 | 0.31 | 0.22 | 0.15 | |||
| 1.55 | 0.26 | 0.18 | ||||
| EUV(13.5nm) | 0.25 | 0.59 | 0.41 | |||
| 0.35 | 0.57 | 0.41 | ||||
| 0.45 | 0.53 | |||||
技術ノードと開口数(NA)、プロセス係数(k1ファクタ)の関係。ArFレーザーを光源とする露光技術で32nmノードに対応するには、NAを1.55に高めた光学系を開発し、プロセス係数を0.26に下げなければならない。一方、EUVを光源とする露光技術では、NAが0.25の光学系で32nmノードの量産に対応できる。k1ファクタに対する要求も0.59と緩やかである。ASMLの講演(講演番号6154-04および講演番号6151-08)から作成 | ||||||
32nm向けリソグラフィ技術のもう一つの候補であるEUV露光技術は、波長が13.5nmと短い軟X線を光源とする、縮小投影方式の露光技術である。ArF露光技術の光源(ArFエキシマレーザー)の波長が193.4nmであるのに対し、EUVでは光源の波長が10分の1以下と短い。リソグラフィで解像できる線幅は光源の波長に比例するので、波長の短いEUVは原理的にはArF露光に比べて微細なパターンを加工しやすい。
ただし技術的な障壁がArF液浸露光の改良に比べて低いかというと、そうではない。波長がまったく違うので、EUVリソグラフィでは光源や照明光学系、投影光学系、マスク、レジストなどの要素技術を新たに開発する必要がある。ASMLが開発中の装置(アルファデモ機ということで「AD-tool」と呼ばれている)は、従来使われてきた光リソグラフィ技術とはまったく違う技術の集合体である。このためAD-toolの外観は、光リソグラフィの露光装置であるステッパやスキャナとは、まったく違っていた。講演でAD-toolの外観写真が示されたときには聴衆が思わず引いてしまい、講演者が「Don't worry(怖がらないで)」とジョークを飛ばすほどの違いである。ステッパよりは、超高真空の薄膜製造装置に近いと言うべきだろうか。なぜか、第一次世界大戦で欧州戦線に登場した、当時の戦車を連想した。一種異様な体躯だった。
大変残念ながら、ここではAD-toolの外観をお見せできない。Microlithography 2006の講演は撮影禁止である。併設の展示会ではASMLのブースにAD-toolの装置写真を掲載したパネルが展示されていた。こちらの撮影を試みたものの、機密保持を理由に許可がおりなかった。
それでは講演で示された、AD-toolの要素技術を見ていこう。まず光源は、錫(Sn)のプラズマ線源である。プラズマから波長13.5nmの軟X線を取り出す。そして光学系は、複数の多層膜反射鏡を組み合わせた反射光学系である。13.5nmの波長領域ではレンズ材料が存在しないため、屈折レンズが使えず、多層膜反射鏡を使わざるを得ない。しかも反射鏡の反射率は67%と、それほど高くはない。反射率が70%の反射鏡を2枚使うと、X線の強度は半分(49%)に下がってしまう。このためEUV露光装置に組み込める反射鏡の枚数は、6枚~7枚程度だとされている。
露光方式はマスクのパターンを4分の1に縮小し、スリットで露光領域を走査する走査型縮小投影方式である。この点はArFスキャナー(走査型縮小投影露光装置)と変わらない。露光領域もArFスキャナーと同じ、26mm×33mmである。
講演では、AD-toolを使って線幅と線間隔が1対1の微細なパターンを解像してみせた。50nmのパターン、40nmのパターン、35nmのパターンを解像した写真がそれぞれ示された。いずれも光学系の開口数(NA)は0.25、露光エネルギー密度は平方センチ当たり18mJである。焦点深度(DOF)は50nmのパターンを形成したときに300nm、40nmのパターンを形成したときに270nmだった。また直径60nmの孤立したコンタクト孔を解像した写真も表示された。
実用化に向けた大きな課題の一つに、多層膜反射鏡の劣化がある。反射鏡の表面に炭素(カーボン)が付着することと、表面が酸化することが考えられる。炭素が厚みにして1nm付着するごとに反射率は1%低下し、酸化膜が厚みにして1nm成長するごとに反射率は3%低下すると、ASMLは述べていた。同社がAD-toolを実際に運用した結果では、酸化膜の成長は見られず、炭素による汚れが主体であった。そこでAD-toolには、運転中に炭素の汚れを取り除く仕組みを導入した。
また光源と照明光学系では、Snプラズマから発生する飛散物(デブリと呼ばれている)が、照明光学系を汚すという問題がある。デブリの影響を緩和する仕組みをAD-toolでは導入し、照明光学系のコレクターの寿命で50Gパルスを達成したとしている。量産使用では1年~2年の寿命に相当するという。
このほかMicrolithography 2006では、ニコンが技術開発用EUV露光装置「EUV1」を開発中であり、2007年前半に出荷予定であると表明した。あいにく講演時間の重複によってニコンの講演(講演番号6151-05)は聴講できなかったが、併設の展示会でEUV露光装置の内容がパネル展示されていた。
ニコンの技術ロードマップでは、32nmノードの量産開始時期を2012年~2013年(フラッシュメモリーの32nmノードが2012年、DRAMとマイクロプロセッサの32nmノードが2013年)と想定している。この時期に向けてEUV露光装置を開発中である。初代機「EUV1」を2007年前半に、第2世代機「EUV2」を2008年に出荷するというスケジュールが組まれている。
EUV1は、AD-toolと同様に、4対1の縮小投影光学系を備えた走査型の露光装置となる。光源はAD-toolと異なり、キセノン(Xe)のプラズマ線源である。
| ベンダー | ASML | ニコン |
|---|---|---|
| 装置名 | AD(alpha demo)-tool | EUV1 |
| 出荷開始時期 | 2006年前半 | 2007年前半 |
| 光源の波長 | 13.5nm | 13.5nm |
| 縮小倍率 | 4分の1 | 4分の1 |
| 露光領域寸法 | 26mm×33mm | 26mm×33mm |
| 開口数(NA) | 0.15~0.25 | 0.25 |
| 取り扱えるウエハーの直径 | 300mm | 300mm |
| 反射鏡の枚数 | 6枚 | 6枚 |
| フレア | 16%(量産時の目標値は8%) | 10% |
| 位置合わせ精度 | 12nm | 15nm |
| 線幅と線間隔が1対1のパターンの解像力 | 40nmm | 45nm(目標32nm) |
| 孤立パターンの解像力 | 30nm | 25nm |
| スループット | 約10枚/時間 | 5~10枚/時間(10W、5mJ/平方センチ) |
| 備考 | 2006年前半に、Albany NanotechとIMECに出荷の予定 | |
ASMLとニコンがそれぞれ開発中のEUV露光装置 | ||
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