【インタビュー】
--さきほどからも話に出てますけども、将棋とかチェスのような、戦略ゲームがやはりお好きなんでしょうか?
そうですね。上手くはないし、趣味で毎日やってますというのでもないんですけど、好きですね。最近も『月刊将棋世界』という雑誌を買ったんですけど、それに『驚異の1525手! 詰将棋最長手数 ミクロコスモスの世界』という付録がついてて……(と、鞄から小冊子を取り出す)。
--それは何ですか!?
詰め将棋の解説なんですけど、日本で一番長い詰め将棋。詰み上がるまでに1525手もかかるんです(笑)。あと、詰め将棋の歴史が書いてあるんですけど、すごいのはいろんな人が詰め将棋の技法を開発してるんですよ。"と金送り"とか"持駒変換"とか、全然意味がわからないんですけど、その技法同士が組み合わさって、新しい技法になったりする。将棋って、ルールはたったひとつなのに、これだけすごい世界が広がってる。そういうのが好きだし、憧れるんですよ。
--憧れるし、作ってみたいとも思わされる。
そうですね。『KING OF WANDS』を作ってみて思ったんですけども、最終的に自分の作ってみたいゲームって、将棋とかチェスみたいなものなんです。でも、将棋やチェスは、ルールを覚えるのがちょっとしんどい。それを覚えなくていい、将棋みたいなものができたらいいなあ、と。5行ぐらいのルールがボンと提示されていて、あとはやってるうちにどんどん作戦やルールがわかってくる……みたいなゲームができれば、もう死んでもいい、くらいの気がしますね。
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『日本文学ふいんき語り』(双葉社・2005年)。米光氏ら3人のゲーム作家による文学作品についてのてい談集。取り上げた作品のゲーム化を想定した企画案も収録。 |
--あと、米光さんといえば、ファンタジックな世界観も持ち味ですけども、やはり、ある種の世界観というのはゲームに必要なんでしょうか?
いや、世界観がない作品もやりたい気持ちはあるんです(笑)。でも、あると間口が広がるんですよね。『KING OF WANDS』は、魔法使いの学校という設定ですけども、それで興味を持ってくれる人もいるだろうし、そういう設定があることでルールがわかりやすくなるところも、若干あるんです。ルールがストンと気持ちに落ちてくる、その手がかりに世界設定がなればいいなあ、と。
--一方で『日本文学ふいんき語り』みたいなお仕事もされていて、あちらは"文学をゲームにしてみよう"という試みなわけですよね。文学作品の世界観からルールを見つけ出す、みたいな。
そうですね。それはもう職業病で、いつも考えちゃうんですよ。文学じゃなくても、例えばラーメン屋の行列を見ながら"ゲームになるんじゃないか?"と(笑)。この間、テレビでホストを題材にしたドキュメンタリーを観たんですけど、すごく面白いんですよ。店長が若いホストをどうやって教育していくのか――土下座したり、反対する親のところに行って説明したり。ある意味、すごくゲーム的で、給料を渡すときでも、目の前に店員をずらっと並べて、直接手渡しするんですよね。で、一番成績のいいヤツには封筒を二束、ボンと渡して、一番ダメなヤツはペラペラの封筒、みたいな。それでやる気を起こすんですけど、すごくゲームっぽいなあ、と。
--何を見てもゲームと結びつけてしまう(笑)。
--それでは最後に、今後、米光さんはどういうゲームをつくっていきたいと考えているのか、お聞かせいただければと思うんですが。
ネットワークゲームが面白いので、引き続きやっていきたいですね。あと『KING OF WANDS』をやって感じたのは、いわゆるゲームっぽいゲーム――スーパーファミコン時代のようなゲームを作ろうと思ってたんですけども、その一方で"これはちょっとゲームっぽいな"くらいのものも作ってみたいんです。例えばブログをやってると、アクセスが増えるのがなんとなく面白かったりする。"こんな記事を書くと、これだけコメントが返ってくる"とか。それこそ、若い人が携帯で短いメッセージをガーッとやり取りしているのも、僕から見るとゲームっぽい。ちょっとわかりにくいですけども、それくらいのものもやってみたいんですよね。
--いかにも"ゲームやるぞ!"という感じではなくて、日常のちょっとした隙間にあるゲームっぽさ、みたいな。
逆に、もっとゲームっぽくなると、世界ってもっと面白いのに、というのはあります。例えば、銀行のATMでも、女の人のグラフィックが"ありがとうございました"って出てくるじゃないですか。あれを、"俺カスタマイズ"できれば面白いだろうな、とか思うんですよね。お金を預けたら、"ありがとう、だいぶお金持ちになったわ"とか。あとは、たまごっちみたいに、ずっとお金を出し入れしてないと餓死してる(笑)。で、餓死するとマズいから、ちょっと振り込もう、とか(笑)。気にしない人は全然気にしないんだけど、気づいた人はクスッと面白がれるような、そういうものがたくさん世の中にあるといいな、と思うんですよね。ゲームっぽいものがそういうところに入っていくことで、いろんな人が楽しめるといいし、自分も楽しいだろうな、と思います。
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