【レポート】

Developer Summit 2006 - SRA OSS石井氏語るオープンソースをビジネスで活用するには

    鶴田展之  [2006/02/14]

    2月9日、10日の2日間、「デブサミ」の愛称で知られる翔泳社主催の開発者向けカンファレンス、「Developers Summit 2006」が、目黒雅叙園にて開催された。本稿では、70を超えるセッションの中から、9日午前に行われたSRA OSS 石井達夫氏によるセッション「オープンソース・ソフトウェア(以下OSS)をビジネスで活用するには」の模様をお伝えしたい。石井氏は、オープンソースRDBMS「PostgreSQL」の開発者の一人であり、日本におけるOSS利用の第一人者でもある。今回の講演は、企業でもOSSの導入が常識となった現在、「導入するかしないかではなく、導入するにはどうしたらよいか、導入したらどうなるか、を評価する」をテーマとしたものとなった。

    石井氏は「OSSの導入には、導入の可否や導入効果を見極める指針が必要である」と説き、代表的な評価指針として「ライセンス」「開発形態」「コスト」「サポート」「トレーニングや認定制度」の5つを挙げる。

    まずライセンスに関しては、OSSの2大ライセンスである「GPL」と「BSDライセンス」の差異や、MySQLに見られるようなGPLと商用ライセンスのデュアル・ライセンスモデルが紹介された。単に利用するだけならば実務上GPLとBSDに大きな差は無いが、GPLソフトウェアを改変、リンクしたソフトウェアを開発する場合、ソースコードの公開が求められることには注意が必要だ。

    またOSSでは、開発者の質やコミュニティの成熟度はもちろん、安定性と開発速度のどちらを重視するのかといったポリシーの違いなど、バラエティに富むOSSの開発形態も評価のための重要な指針となる。PostgreSQLに代表される「コミュニティ主導型」、MySQLに代表される「ベンダー主導型」など、導入するシステムがどのように開発されているかを知らなければ、安心して長期に渡る運用を実現するのは難しいだろう。

    コスト面では、「ライセンス料」「ハードウェア価格」「導入・評価費用」といった初期費用の他に、アプリケーションの開発費用、ハード・ソフトの保守等の運用費用まで試算して評価する必要がある。OSSはライセンス料がかからない、もしくは非常に低コストで導入できる点が大きなメリットになるが、それだけでシステム全体のコストが決定されるわけではない。

    コストと並び、導入指針として盲点になりがちなのがサポートだ。石井氏は「サポートは自助努力」もしくは「コミュニティによるサポートが基本」であることを強調するが、「時間や人的リソースに余裕が無い場合は、商用サポートの有無がポイント」であると述べた。もちろん自社内の技術者を育成してコミュニティとの連携を強めていくことも重要だが、OSSの商用サポートを提供する企業は、開発にもなんらかの形で関わっていることが多い。商用サポートの利用が結果的にOSS開発者の生活を保証するというケースも、立派なコミュニティ貢献の一形態と言えるだろう。

    ところで、システムの運用には知識を持ったエンジニアの存在が不可欠だ。石井氏は、エンジニア調達の容易性と、トレーニングや認定制度の充実には、一定の相関関係があると述べる。つまり、しっかりした認定制度や教育制度が整っているソフトウェアでは、比較的容易に技術者を集められるということだ。OSSの分野では、Linuxの資格である「LPIC」と並び、石井氏が日本支社長を務めるSRA OSSが認定する「PostgreSQL CE」も高い人気を集めているという。

    以上、講演の前半はOSS導入における概略的な内容が説明されたが、後半はより実務的なOSSの導入事例が紹介された。ネタは石井氏らしく、OracleからPostgreSQLへのマイグレーションである。

    石井氏によると、PostgreSQLもOracleとほぼ同等な機能を備えており、規模的にも同等のデータベースを構築可能であるという。もちろん、細かい機能はそれぞれのRDBMSの特色もあるため異なる点も多いが、行レベルロック、トランザクション、アーカイブログといった基本機能、ストアドプロシジャ向け言語の「PL/SQL」に対する「PL/pgSQL」、「Pro-C」に対する「ecpg」など、PostgreSQLにはOracleに類似する機能も多いため、移行は比較的容易であるという。

    また、SMPが効果的に利用できるようになった現在のPostgreSQLでは、検索、挿入についてはOracleに遜色ない性能を発揮できるという。ただし、更新系について厳しく性能が求められる場合、PostgreSQLをもとに開発された商用RDBMS「PowerGres Plus」の採用なども含めた検討や工夫が必要になりそうだ。アプリケーションの移行に関しても、データベースのテーブルやSQL文の移行は容易だが、Oracle独自のAPIやライブラリを利用している場合には、作り直しのために大きな工数がかかる場合もある。

    以上のように、今回のセッションはOSSに馴染みの薄いユーザにとっても、ポイントをわかりやすく、端的に理解できる内容だった。現在OSSの導入を検討されている方は、是非基本として参考にして頂きたい。

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