【レポート】

通信業界を待ち受けるFMC、欧州では?

1 欧州におけるFMC

    末岡洋子  [2006/02/09]

    固定電話の世界と携帯電話の世界が融合する"FMC(Fixed Mobile Convergence)"が、ゆっくりと夜明けを迎えている。英ロンドンで1月25日より3日間開催された「FMC 2006」では、実現に向かって通信業界、IT業界が歩みはじめたことを体感できた。その模様を含め、欧州のFMCの状態をレポートする。

    BT、TeliaSoneraなどがFMC実験スタート

    英British Telecomが「BT Fusion」を開始したのは昨年秋のことだ。それに続き、スウェーデン・フィンランドのTeliaSoneraもデンマークで実証実験を開始し、フランスでもNeuf Cegetelが今年半ばにも、「BeautifulPhone」という名称のFMCサービスの実験を開始する予定だ。

    BTが世界に先駆けて開始したFusionでは、デュアルモード端末を利用して、GSM網と固定網の両サービスを利用できる。屋外ではGSM網(BTはMVNO(Mobile Virtual Network Operator)として英VodafoneのGSM網を利用)、家庭ではBluetooth経由でブロードバンドルータの「BT Hub」に接続することになり、同社が人口の99%をカバーしているというブロードバンドを、今後の戦略の中心にとらえていることがわかる。

    会期中、セッションに登場した同社モビリティ・コンバージェンスでチーフを務めるSteve Andrews氏は、成功のかぎは「ワイヤレス対応した固定サービス」と語る。コンセプトとしては、ブロードバンドのもたらすリッチさと無線技術のもたらす自由さを合わせるという、固定主導のアプローチだ。

    「失敗は許されない」と英BTのSteve Andrews氏

    BTではBT Fusionの提供前、2年間を費やして、各技術とその技術が与えるメリットを理解し、顧客のニーズを調査分析したという。その結論は、「顧客は、時間とエネルギーを減らし、生活をシンプルに、便利にするサービスであれば、それを受け入れる」とAndrews氏。つまり、需要は十分にあるということだ。そこで、同氏が課題として強調したのは、「複雑な技術によりさまざまなことができるということを、どうやって顧客にシンプルかつ分かりやすく伝えるか」だ。

    そのような背景もあって、BTのサービス開始は予定より遅れた。そして現在でも、ゆっくり離陸の"ソフトローンチ"であることを強調している。その影には、「失敗は許されない」というプレッシャーが見え隠れする。開始後数カ月たった現在も、予期しないトラブルをできる限り防ごうと注意しており、実際大きな苦情は出ていないようだ。

    Andrews氏は今後の計画として、今年2月にビジネス顧客向けのBT Fusionを開始すること、夏にはBluetoothの代わりに無線LANを用いたBT Fusionのトライアルを開始することを明らかにしている。また、料金プランも拡充するという。BT Fusionは、ゆっくりと、着実に歩みを進めているようだ。

    UMAはモバイルオペレータを救う?

    BTやTeliaSoneraのFMCサービスでは、UMA(Unlicensed Mobile Access)という技術が用いられている。UMAは、ライセンスされていない周波数帯を使ってGSMなどのセルラー側の無線技術と接続するインタフェース技術で、無線LANとのやりとりを実現する。2005年4月に標準団体の3GPP(3rd Generation Partnership Project)により承認されたことから、急浮上したキーワードだ。

    UMAの仕様、UMA Technologyの策定には、韓国のSamsung、LG電子、フィンランドNokia、スウェーデンEricssonなど合計14社が参画している。UMA Technologyのメンバーで、当初からUMAを用いたソリューションを提供しているベンチャー企業が米Kineto Networksだ。同社でマーケティング・ディレクターを務めるSteve Shaw氏は、「UMAは、VoIPプロバイダや固定プロバイダとの戦いに直面しているモバイルオペレータのための技術」とまとめる。

    「日本は携帯電話、ブロードバンドの両方が普及している面白い市場」とShaw氏。日本でどのようにFMCが進むかに注目しているという

    固定電話から携帯電話やVoIPへの移行(あるいは、同じユーザーパイをめぐってVoIPプロバイダを含めた通信事業者間での取り合い)がいわれるが、違う見方もできる。Shaw氏は、同社が参画しているTeliaSoneraのパイロット例を挙げる。固定と携帯の両事業を持つTeliaSoneraは、固定ベースのブロードバンドでのシェアを生かし、携帯電話分野にサービスを拡大するアプローチを試みている。同社のFMCサービスがユニークな点は、デュアルリングサービスだ。ユーザーが家に帰宅すると、ネットワークが自動認識し、携帯電話の番号にかかってきた電話を、携帯電話でも固定電話でも受けることができる。ユーザーは、固定網を維持しつつ新しい便利さを手に入れることになる、とShaw氏は説明する。

    UMAの仕組み

    Shaw氏は、UMA技術により携帯電話の世界で「データアプリケーションのルネサンスが起こる」と予言する。「いま現在、携帯電話でのデータ利用があまり進まないのは、PCでマルチメディアを体験したユーザーにとって物足りないから」とShaw氏。「たとえば、4MbpsのDSL回線があり、UMAをサポートした携帯電話があれば、同等の速度でストレーミングできる。ユーザーの体験は大きく変わるだろう」とShaw氏は続ける。

    一部では、将来、メッシュネットワークのように無線LANのアクセスポイントがユビキタスに存在するようになり、セルラー網は不要になるのではないか、という極論もある。これに対し、Shaw氏は、「GSMが到達したユニバーサルな標準は、計り知れないメリットを与えている。これがなくなることはないだろう」と語る。UMAは一時的なソリューションと見られているが、GSMに限らずセルラー網という既存資産を持つオペレータにとっては戦略的な技術となりそうだ。

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