【レポート】

北海道、宇宙へ挑戦中 - CAMUIロケットの燃焼実験を見てきました

1 町はずれに立つ巨大な鉄塔、それが実験場

大塚実  [2006/01/10]
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CAMUIロケット400kgf級の実物大モックアップ。デザインはほぼこのまま行く予定だという

「北海道」は牛乳やメロンやラーメンだけではない。ロケットも作っているのだ。そのロケットとは、昨年10月に福岡で開催された宇宙フェアのレポートでも紹介したのでご記憶の方もいるかもしれないが、道内の3大学・4企業が産学連携で取り組んでいる「CAMUI型」ハイブリッドロケット(以下、CAMUIロケット)。すでに推力50kgf級の打ち上げに成功しており、この春には、より大型化した推力400kgf機の打ち上げを予定している。

昨年の11月19日には赤平市において、400kgf機エンジンの公開燃焼実験が行われた。前述の記事では呑気に「近隣の方はぜひご覧になってみてはいかがだろうか」などと書いていたが、結局自分で行くことになったのでここでレポートしてみたい。

そこには鉄塔が立っていた

札幌から旭川方面に特急で1時間弱、滝川駅からは今度は根室本線のワンマン列車に乗り継いで、1駅行くと東滝川駅だ。朝9:45に筆者が着いたときには、5cmくらいの積雪で辺りは真っ白。これまで、ロケットの取材というと種子島や鹿児島・内之浦(現・肝付町)といったように、南の方にしか行ったことがなかった筆者。"ロケット"と"雪"というミスマッチに違和感を覚えつつも、国道38号線を東に歩くこと10分。JRの陸橋を越えたあたりで、向こうに大きな鉄塔が見えてきた。

東滝川駅前。筆者はコンビニか何かで昼食を買っていこうと思ったのだが……。結局、しばらく進んだところにあるAコープで、いなり寿司とカニコロッケを購入

赤平市に入ったあたりで見えてくる鉄塔(写真中央)。近くのどこからでも見えるので、目印としては最適だろう

近づくと、それは高さ約50mという巨大な構造物。これについては後ほど述べるが、この場所がCAMUIロケットの実験が行われている「赤平実験場」なのだ。

これが遠くからでも見えた鉄塔の正体。じつは無重力実験用の落下塔

公開実験ということで、一般の人にも公開されていた

じつはこの実験場、植松電機という民間企業の敷地内にある。なぜロケットの実験が、大企業でもない地元企業の工場で? と思われるだろうが、なんとCAMUIロケットの機体はここで作られているのだ。機体の開発を担当しているのは、同社専務取締役の植松努氏。家業を継ぐ前は、三菱重工業でロケット関連の仕事をしていたという経歴の持ち主だ。CAMUIロケットの開発にも、「そのときの経験がすごく活きている」という。

燃焼実験は右下の小屋で行われる。すぐ奧に見えるのはなんと社長の自宅。協力の度合いが尋常ではない……

CAMUIロケットで「宇宙開発の小型化」を目指す

永田晴紀・北海道大学大学院助教授。以前は日産自動車の宇宙部門(現、IHIエアロスペース)でロケット開発に関わっていた。「北海道に骨を埋める覚悟」という

実験を前に、プロジェクトリーダーである北海道大学大学院助教授・永田晴紀氏からプロジェクトの概要についての説明があった。今回の実験は一般にも広く公開されているもので、このブリーフィングにも、見学に来た一般の人が多数参加していた。

前述のレポートでも少し述べたが、CAMUIロケットは固体の燃料と液体の酸化剤を使用するハイブリッドロケットだ。燃料となるのはプラスチック(ポリエチレン)で、固体ロケットのような火薬は使わない。これにより、燃料コストが1/200以下(これは、1億円が50万円ですむレベルと考えれば分かりやすい)になるほか、火薬のような管理コストも不要で、大幅なコストダウンが可能となる。

「世界の液体大型ロケットでの打ち上げ単価は1kgあたり100万円。かといって、10kgの衛星を1,000万円で上げてくれるロケットはない」と同氏。「相乗り」という手もあるにはあるが、それではメイン衛星の都合で様々な制約がかかってきてしまう。液体ロケットは小型化が難しかったが、そのコスト性能比を小型ロケットで実現するのが、このCAMUIロケットというわけだ。400kgf級は到達高度60km程度で、用途も気象観測などに限られるが、将来的には3段式で10kgの衛星投入が可能なクラスも視野に入れている。

小さいロケットを安く打ち上げるということで、「宇宙産業の様相ががらりと変わるだろう」と永田氏は見る。米国などでは「SpaceShipOne」など民間による宇宙開発も盛んになってきたが、日本ではまだまだ国(JAXA)と大企業がやるもの、というイメージが強い。中小企業が参入するにはコストがかかりすぎるという問題がまず参入障壁としてあり、現在衛星やロケットを手がけているメーカーにしても、収益の面ではあまりいい話でもなくなってきており、業界として閉塞状態にあるようにも見える。

しかし、コストが下がれば、「あとは個人の知恵と技術の勝負」(同氏)。「宇宙開発はそもそもマスプロダクションで勝負する産業分野ではない。規模が小型化すれば中小企業でも大企業に勝てる」(同)とし、民間の参入による活性化に期待する。マーケットが広がれば、産業の活性化にも繋がる。

それによって、アプリケーションの多様化も進むかもしれない。気象や通信なんていう"真面目"なものだけでなく、いずれはもっと"遊べる"ものが出てきてもいい。今でこそ「コンピュータでゲーム」なんて当たり前だが、当初は弾道計算などをやるものだったのだ。ケータイも、気がつけばカメラなんだかゲーム機なんだか分からなくなっている。余談ながら、永田氏も「くだらない使い方ができるようになれば」と話しており、学生にアイデアを出させたところ、「たまごっち」のように育てる衛星、なんてものも出てきたそうだ。

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インデックス

目次
(1) 町はずれに立つ巨大な鉄塔、それが実験場
(2) 白銀の地に伸びるオレンジの炎、そして……
(3) ロケットがあれば、やはり衛星もあった
(4) 北海道宇宙科学技術創成センターの活動


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