【レビュー】

W-ZERO3はモバイル・スタイルを一新させるガジェットになりうるか?

7 Linux Zaurusシリーズとの比較

 

7/8

W-ZERO3を語る上でどうしても避けて通れないのが、同じシャープから出ているPMT(Personal Mobile Tool)、「Linux Zaurus」シリーズだろう。ハンディでコンパクトなコンピュータという点で、両者のキャラクタは酷似しており、電話機能の有無とOSの違いを除けば、ほぼ競合する構成であることも確かだ。

ここでは「SL-C3100」をリファレンスとして、W-ZERO3との比較を行ってみたい。

W-ZERO3とLinux Zaurusの比較。色的にわかりやすいSL-C3000と並べてみた

ハードウェアの比較 ~ W-ZERO3 vs Linux Zaurus

W-ZERO3とSL-C3100の主だったスペックは以下のとおりである。

W-ZERO3とSL-C3100のスペック比較
機種名 WILLCOM W-ZERO3 SHARP SL-C3100
プロセッサ Intel PXA270 / 416MHz IntelXScale(PXA270) / 416MHz
メインメモリ SDRAM 64 MB SDRAM 64 MB
FlashROM/ストレージ FlashROM 128MB FlashROM 128MB (一部システム領域) 内蔵Microdrive 4GB
拡張スロット miniSD SDIO/MMC CF TYPE-II
液晶部 3.7インチ 640x480 64K色 モバイルASV液晶 3.7インチ 640x480 64K色 透過型システム液晶
内蔵通信機能 PHS 無線LAN(802.11b) IrDA(116bps) USBホスト機能(v1.1)
連続動作時間 待ち受け時:約200時間 通信時:約5時間 約7時間(バックライト最小時/表示のみ) 約4時間50分(バックライト最大時/表示のみ)
サイズ 70mm×130mm×26mm 87mm×124mm×25mm
重量 220g 約298g
カメラ あり(約133万画素) なし
価格 39800円(W-SIM付+年間契約の場合) 79800円(SHARP PC ONLINEでの価格)

まずは気になるコスト的な側面から両者を眺めてみよう。絶対的な金額を見ると、W-ZERO3のコストパフォーマンスは飛び抜けているように見える。だが、これは「W-SIM 契約込み」で「年間契約」の場合の販売価格であり、実際はこの他に月々の通話料金が上乗せされることを考えると、必ずしも「安い」と手放しで褒めるわけにはいかない。

SL-C3100の場合、実際の市販価格はもう少しこなれてきているし、廉価モデルの「SL-C1000」ならばおおよそ、W-ZERO3と同程度の価格で入手できる。しかし、通信用の無線LANカードやPHSカードが別途必要となるため、オプションの費用まで考慮すると、SL-C3100も分が悪い。この辺りは「電話機」を兼ねるW-ZERO3と、純粋なコンピュータであるSL-C3100のキャラクタの違いが明確に出ていると言うべきだろう。

プロセッサ性能で比較すると、両者は同一であり、ハードウェア的な差はない。実際に差が発生するのはプロセッサ以外の部分(画面描画支援など)だが、そこまで含めて比較しても大差はなく、どちらか一方が性能的に優れているという状態にはならない。たとえば「動画再生」のタスクを実行した場合、ソフトウェア的な差異を除けば、W-ZERO3 とSL-C3100とで再生品質に殆んど差はない。プロセッサ性能で比較する限り、この両者はほぼ「互角」と判断して構わないだろう。

搭載メモリとストレージに関しては、W-ZERO3の方が苦しい。確かに、Windows Mobile 5.0ではプログラムを「Flash ROM」上に置くことができ、プログラム実行時のメモリを完全にストレージから独立させることが可能になった点で、従来のWindows CE系OSよりも使い勝手は向上している。しかしながら、搭載メモリ量を64MB以上に増設することはできないので、メモリ不足になれば適宜、実行中のアプリケーションを終了させる必要に迫られる。その一方、SL-C3100の場合も同様に標準搭載メモリは64MBではあるが、ストレージには4GBのマイクロドライブが奢られており、かなり思いきったストレージの使い方が可能となる。さらにはスワップを作成することで、仮想メモリを追加できるため、同じ64MB搭載と言えどもメモリ不足に悩まされることは少ない。

拡張性に関しても、W-ZERO3は苦しいと言わざるを得ない。唯一利用可能なのが「mini SDスロット」だが、事実上ストレージ向けのメモリカードを入れることしかできないので、新たな機能追加は望めない。この点では、汎用のCDカードスロットとSDカードスロットを備えるSL-C3100が強みを発揮する。特にCFスロットはもはや「枯れたデバイス」ということもあり、市販されている様々なカードを利用して、非常に多彩な拡張が可能だ。

SL-C3100の場合、USBホスト機能を使えるのも拡張性の点で大きな利点だ。キーボードやUSBメモリ、HDDといった主なデバイスドライバが標準で用意されているため、機動性を無視すれば思い切った拡張が可能だ。W-ZERO3もハードウェア的にはUSBホスト機能が利用できるはずだが、ソフトウェア的に非対応なため、PCとの接続以外にUSBポートを利用することはできない。

まとめると、万能型のモバイルガジェットが理想ならば、SL-C3100の方がより適しているだろう。しかし購入直後から即戦力で、難しいことを考えずに活用したい向きには、W-ZERO3のほうがいいだろう。特に「簡易さ」「気楽さ」という点を重視するならば、間違いなくW-ZERO3の方が優位と言えるだろう。

ソフトウェアの比較 ~ W-ZERO3 vs Linux Zaurus

ソフトウェアの比較
機種名 WILLCOM W-ZERO3 SHARP SL-C3100
OS Microsoft Windows Mobile 5.0 for PocketPC Lineo uLinux (GUI部分はQt/Embedded)
Officeソフト Pocket Word Hancom Word
Pocket Excel Hancom Sheet
Pocket PowerPoint なし (別売りのPixcel Viewerが必要)
PDFビューワ Pixcel Viewer なし (別売りのPixcel Viewerが必要)
動画再生 Windows Media Player10 (WMV対応) Movie Player (mpeg4/ASF 対応)

W-ZERO3に搭載されているOSは「Windows Mobile 5.0 for Pocket PC」である。これはMicrosoftのPDA/組み込み向けOSである「Windows CE」シリーズの一つとも言え、このOSがインプリメントされたPDAは「Pocket PC」という呼称で広く知られている。PC向けWindowsとよく似た操作体系と画面デザインを有し、特に勉強し直さなくても、それなりに利用可能な点が最大の利点であろう。

これに対してSL-C3100が採用したOSは「Lineo uLinux」であり、そのGUIを司るのは「Qt/Embedded」である。外観や操作感覚は確かにWindowsに似せられているとは言えるが、OSの根幹が異なるため、細やかな部分での差異は避けようがない。Windowsの名前を有するOSと、オープンソースの違いと言ってしまえばそれまでだが、多少は似ているだけに余計に差異が目立ってしまうことは否めない。

W-ZERO3のToday画面。カスタマイズも容易で、操作も比較的、直感で行える

SL-C3100のホーム画面。カスタマイズは容易だが、見た目以外でのWindowsとの互換性はあまり無い

OSにオープンソースのLinuxを採用するメリットは言うまでもなく、その「自由度の高さ」にある。開発に必要な情報や環境は大部分が無償で公開されており、誰でも自由に入手が可能だ。OSの根幹部分であるカーネルの変更もLinux Zaurusであれば可能であり、現に有志によるカスタムカーネルの配布も積極的に行われている。

また、PC用Linux向けのプログラムでも、ソースコードの入手がほとんどの場合で可能なため、やる気次第では移植して動かせる、というメリットもある。ただし、このメリットはあくまでも「開発者向け」のものであり、そこまで気合いを入れていじる気がないユーザーにはかえって「敷居が高い」と思わせてしまうデメリットにもなりうる。

Windows Mobileの方は完全にMicrosoftにコントロールされたOSであり、一般ユーザーが手を加える余地は非常に少ない。開発環境も有償であり、必要な情報が必ずしも公開されているとは限らない、という状態である。だが、Windows向けのプログラミングに慣れた開発者であれば、Windows Mobile向けの開発はさほど難しくない。加えて国内のみならず、海外でも多くのファンが自作のプログラムを発表しており、選択肢の多さで言えば、Linuxにも十分対抗できるといっていい。インストール方法も単純であり、とりあえずのお試しも気軽に行える。肩の力を抜いて扱えるという点で、Windows Mobile は「敷居の低い」OSだと言えるかもしれない。

双方に標準搭載されているOffice系ソフトで比較すると、Windows Mobile採用のW-ZERO3の優位性が出てしまうのは仕方のないところだ。SL-C3100の「Hancom Office」も良くできたソフトウェアではあるが、PC向けOfficeとの互換性の点ではどうしても苦しいところがある。別売の「Pixcel Viewer」を導入すれば、閲覧のみではあるが互換性はかなり改善されるので、SL-C3100でOffice系ファイルの必要性が高い場合は、考慮すべきだろう。

一方、W-ZERO3はあまり難しいことを考えずに、普段使っているOffice文書をほぼそのままで取り扱える。マクロなどの細かい部分は再現不可能だが、グラフなどを含めて閲覧の再現性はかなり頑張っているといっていい。個人利用の場合はさほど恩恵をこうむることはないかもしれないが、ビジネス用途を考えるとこれは大きなアドバンテージと言えるだろう。また、PDFに関しても標準搭載の「Pixcel PDF Viewer」で対応しているため、ファイルの閲覧機能に関しては標準状態であっても非常に気配りがなされていると言えよう。

まとめると、「作る楽しさ」のSL-C3100、「使う楽しさ」のW-ZERO3、といったところだろうか。予め準備されたものは少ないが、自力でそれらを補完できる手段が豊富に用意され、自由に際限なくいじり倒せるのがSL-C3100であり、それに対して誰でも肩肘張らずに使い始められる代わりに、ユーザーが介入できる範囲がかなり限定されているのがW-ZERO3なのだ。両者は完全に異なるベクトル特性を有しており、キャラクタ的にオーバーラップする部分は極めて少ない。したがって、ソフトウェア的な優位性を比較することなど、ある意味ナンセンスとも言える。ユーザー自信が「どのような方向性を望むか」で選択すれば、ほぼ間違うことはないだろう。

W-ZERO3 vs Linux Zaurus 通信環境の比較

通信環境の比較
WILLCOM W-ZERO3 速度 月額料金 SHARP SL-C3100 速度 月額料金
ウィルコム定額プラン+データ定額 (※1) 4x \3950 bitwarpPDA (※4) 4x \2100
ウィルコム定額プラン+リアルインターネットプラス[1x] 1x \5000 KWINS forPDA (※5) 4x \1750
ネット25 (※2) 4x \5400      
つなぎ放題[4x] 4x \9300      
つなぎ放題[1x] 1x \5800      
パケコミネット(※3) 4x \4700      
W-ZERO3の通話プランは、ウィルコム定額との組み合わせを除いてすべて、年間契約を含む各種割引プラン適用前の料金。
SL-C3100でもAirH"カード端末を使えば、ウィルコムのデータ通信系料金プランを利用できる。

※1:利用パケット数と利用形態に応じて、上限ありの従量制料金が適用される
※2:パケット交換方式の他に、フレックスチェンジによる接続も可能
※3:月当たり20万パケットまでは定額、以降は従量制課金
※4:端末購入費や初期費用が別途、必要
※5:6ヶ月、若しくは12ヶ月単位でライセンスを購入する形式。端末購入費や初期費用は別途、必要

Linux Zaurusがヘビーユーザーから支持される理由のひとつに、「安価な通信環境の構築が可能な」点が挙げられる。表に掲載している通り、so-netの「bitWarp PDA」やKWINSの「KWINS for PDA」といった安価な128K(4x)対応のPHSパケット通信環境が提供されているため、「いつでもどこでもネットに繋がっていられる」環境を気楽に持てる点が強みだ。PHSを使わずに無線LANや有線LANに切り替えたいなら、CFカードを挿し換えて対応することができる。もちろん、本体内蔵の機能ではないので別途購入のコストは掛かるが、汎用性という点では優れている。また、通信環境のセットアップには丁寧なウィザードが用意されており、マニアでなくとも設定と変更が比較的、容易に行える点は評価すべきところだろう。

SL-C3100の通信環境の設定画面。ウィザードもあり、初心者でもわかりやすい

一方、W-ZERO3の場合、PHS機能はW-SIMで、無線LAN機能は内蔵で賄っているため、こうした機能への追加コストは発生しない。PHSデータ通信と無線LANによる通信をシームレスに切り替えて利用できるところが、この端末の大きな利点であり、特徴でもある。通信コストという点では確かにLinux Zaurusにやや劣る場合もあるが、ウィルコムが提供する多彩な料金プランの中からユーザーにもっとも適した組合わせを選ぶことで、コスト的な差異はかなり縮めることが可能だ。各種設定の容易さも称賛すべき親切さで実装されているが、特に無線LANに関して所々で挙動が変だったり、判りづらいとも思える場面に遭遇することがある。こうした点は今後解消されていくことに期待したい。

通信状態は常に、画面上部のメニューバーで確認できる

公式サイトから入手できる「無線LAN接続切替ツール」で、接続先情報の整理もかなり楽に

両者を使い比べてみると、通信機能を内包している点でやはり、使い勝手はW-ZERO3の方が良好と言えるだろう。カードを挿し換えることなく、外出・帰宅後の通信環境を切り替えられるのは、一度慣れてしまうと便利の一言に尽きる。しかしながら、Linux Zaurusでは月額2,000円前後で4x相当のデータ通信環境が手に入る訳で、他の携帯電話との併用などを考慮すると、コスト的なメリットは捨てがたいものがある。

ここでの比較結果もやはり、ユーザーの利用形態に左右されるものだと言えるだろう。あえて優劣を論ずるならば、シームレスな通信環境が用意されているW-ZERO3に一票を投じるが、Linux Zaurusも決して劣るものではない。

W-ZERO3 vs Linux Zaurus ~ 周辺機器の互換性

W-ZERO3とSL-C3100の双方で利用可能な周辺機器は、正直なところ、あまり多くはない。SL-C3100が基本的に「CF/SDカードスロットを使って拡張しつつ活用する端末」であるに対して、W-ZERO3の拡張性は皆無といっていいからである。そんな中でも両者が共通して使える周辺機器が存在する。それが「ACアダプタ」とその関連製品群である。

ACアダプタ関連の互換性
メーカ 品名 型番
SHARP 純正ACアダプタ EA-72
純正ACアダプタ(SL-C3100用) EA-75
ダイヤテック MICROPOWER SHARP Zaurus対応 FPS-101E1
PowerBank slim FPS220U
PowerBank slim for PSP FPS220PSP
PowerBank for Zaurus/Genio FPS-501ST
P CORD アジャスタブル電源ケーブル ピーコード PCORD

注意して欲しいのは、ここで挙げた互換性はあくまでも執筆時に実験した範囲での話であり、ウィルコムやシャープ、ダイヤテック、そのほかの各メーカーが動作を保証するものではない、ということだ。実際に利用する際は、各自、自己責任にてお願いしたい。

ともあれ、「Linux ZaurusからW-ZERO3に移行したい」あるいは「両方を活用していきたい」というユーザーは、これらの周辺機器に関しては使い回しが利く可能性が高いということだ。参考にしてもらえば幸いである。

7/8

インデックス

目次
(1) W-ZERO3の特色と注目点
(2) W-ZERO3の特徴
(3) モバイルガジェットとしての特色と注目点
(4) PDAとしての完成度、そして既存との互換性
(5) 各種ソフトウェアの互換性
(6) マルチメディアデバイスとしてのW-ZERO3
(7) Linux Zaurusシリーズとの比較
(8) まとめ

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