【レビュー】
W-ZERO3は「電話機」でありながら「PDA」としての性格を強く有しているため、マルチメディア関連にもそれなりのパワーを発揮する。一般的な音楽から静止画/動画まで、文句のない品質……とはいかないまでも、意外と使い物になるレベルで再生が可能だ。本章ではこうしたマルチメディアに関する再生能力をまとめ、既存のPocketPCの資産との互換性、活用方法について言及したい。
W-ZERO3には最近の携帯電話ではもはや定番となった、カメラ機能が備わっている。CMOS・約133万画素ではあるが、最大1280×1024の静止画と解像度320×240のWMV形式の動画を撮影することができる。オートフォーカスやLEDライトなどはなく、進歩が目まぐるしい最近の携帯電話には能力的に及ばないものの、簡単な記録には十分に使えるものだ。
液晶の広さを利用した一覧表示ができ、静止画の場合は選択した静止画からメール機能を使って送信することも出来る。動画はビットレート64kbpsとかなり低く、メール専用といった感じが強いが、通信環境+入力環境をもつW-ZERO3にとっては、取材ツールとしての役割に幅を持たせるものとなっている。少々残念なのは、マクロ機能を搭載してないため、最短撮影距離が約1.2mであることだ。携帯電話で撮影するものは人物や風景とは限らず、机の上のグッズや時刻表と言ったものを撮ることも少なくないことを考えると、カメラ機能を持たせるのであれば、マクロ切り替え機能は是非とも欲しかったところだ。
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カメラ機能である「画像とビデオ」を起動したところ。液晶面をファインダーにして撮影する。画像部分は拡大することができないので、撮影はややしづらい |
アメリカの古いコインをおよそ10cmの位置から撮影したところ。イーグルが描いてあるのだが、ほとんど見えない。最短撮影距離が1.2mしかなく、人物・風景に特化したものと考えておいた方がよい |
カメラレンズそのものは本体裏面内部にあり、裏蓋に空いた穴から撮影する形となっている。レンズ面は裏面からかなり奥行きがあるので、通常使用では指紋が付着することはないだろうが、埃は溜りやすそうだ。保護シールなどを張り付ける場合は、一旦裏蓋を外してから張り付ける方がいいだろう。
マルチメディアプレイヤーとして、標準で「Windows Media Player 10 Mobile for Pocket PC」が搭載されている(以下WMP10と略す)。再生できるファイルフォーマットはWindows Mediaフォーマットで拡張子「wmv」「asf」、音声のみの場合は「wma」及び「mp3」だ。またMicrosoftの公開情報によると、再生可能なコーデックは下記の通りとなっている。
音声系:
Windows Media Audio codec V1.0、2.0、7、8、9
MP3
映像系:
Windows Media Video codec V7、8、9(Image Codec V1、2を含む)
Microsoft MPEG-4 codec V2.0、3.0
ISO MPEG-4 video codec V1.0
W-ZERO3をミュージックプレイヤーとして使うには、WMP10で対応しているMP3形式またはWMA形式のファイルを、本体あるいはmini SDカードにコピーすればいい。他にもWindowsで利用されるWAV形式も当然再生可能だ。コピーしたファイルは、W-ZERO3本体のファイルエクスプローラで選択実行すれば、自動的にWMP10が起動し再生が開始され、再生音は背面のスピーカから再生される。しかし、昨今の携帯電話ではステレオスピーカーや3D再生すらサポートしている機種がある中、かなり立ち後れている感が否めない。
再生音をステレオで聴きたい場合は、平型プラグのステレオヘッドホンか、ステレオスピーカー用のアダプタを利用することになる。ただし、平型プラグ変換アダプタを購入する際は、モノラルタイプとステレオタイプがあるので注意して欲しい。また、「イヤホンマイク」を変換するアダプタだと、単純に3.5φプラグのモノラルイヤホンとマイクを平型プラグへ変換するだけで、ステレオヘッドホンを使うことはできない。
今回はSONY製アダプタ「DRC-M10SF」を使用した。このアダプタは単なるヘッドホンアダプタではなく、着信スイッチとマイクを内蔵しているため、ヘッドホンをイヤホンマイクとしても使えるものだ。W-ZERO3では着信スイッチを短く押すと「通話」ボタン、長く押すと「終話」ボタンと同じ役目をする。
さて、実際にヘッドホンを接続してみると、W-ZERO3はそこそこ聴ける音を奏でてくれる。もちろん専用プレイヤーではないので、音量以外の調整は出来ないし、その音質も若干こもった感じがある。しかし、通勤通学のお供程度には十二分に役目を果たしてくれるだろう。
なお、WMP10はDRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)にも対応しているので、インターネットでダウンロード販売されている楽曲も転送することができる。この場合、購入後、PC上の「Windows Media Player 10」でライセンスを取得し、同ソフトの「同期」を使うことで可能となる(ただし、ポータブルオーディオへのコピー権があるものに限られる)。カードリーダー経由でmini SDに書き込むことができる場合もあるが、原則として「Active Sync」を使ってPCとW-ZERO3を接続した後に、PC上の「Windows Media Player 10」の同期リストから楽曲を選択し、W-ZERO3と同期するという手順となる(一部エラーが出て、W-ZERO3で再生できないこともある)。
忘れがちではあるが、W-ZERO3は「電話機」である。ごく当然の機能ではあるが、音楽を聴いている最中でも、着信音も鳴るし着信した電話を受けることもできる。ただし、問題がないわけではない。ここではその概略を説明しよう。
W-ZERO3の音量調節はサイドボタンで行う。ただし、この音量調節はW-ZERO3が再生する全ての音に影響を与えてしまう。五段階しかないが、WMP10での細かい調整は画面上の「+」「-」ボタンを使えばいい。WMP10は一旦再生を開始すると「OK」ボタンでウィンドウを閉じても再生を続けてくれる。つまり、音楽を聴きながらメールの送受信も出来るわけだ。もちろん、電話も受けることができる。
W-ZERO3に着信があると、聴いている音楽の中に電話の着信音が混ざって聞こえてくる。ここで「通話」ボタンを押すと音楽は止まり(再生が停止するわけではなく、WMP10が再生している音楽だけが止まる)、そのまま通話することができる。電話が終わり「終話」ボタンを押すと、止まっていた音楽が再び聴こえるようになる。つまり、これで音楽を聴いていても、電話の着信に気付かなかった、ということはないわけだ。こういった機能は別々の機器を使うよりも都合がいい。
ただし、「マナーモード:標準」に設定している場合(「システム音:OFF」「着信音:OFF」の設定)、音楽を聴くことも着信音も鳴らない。「マナーモード:おやすみ」の場合(「システム音:ON」)は音楽を聴くことができるが、着信音は鳴らない。一般的な携帯電話ではマナーモード中でもイヤホンからは着信音が鳴ることが多い(もしくは選択可能)が、W-ZERO3はマナーモードとイヤホンマイクとの使い分けが少々難しいかもしれない。
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「スタート」「設定」「待ち受けモード」の「マナーモード」設定画面。全てOFFの場合はイヤホンからも音が出ない |
「おやすみ」に設定すると、「システム音」がONなので、WMP10での再生では音楽の音は出るが、「着信音」がOFFなので着信音はしない |
W-ZERO3は、このWMP10で再生可能なものであれば、基本的に着信音に設定できる。そこで着信音の設定を一通り説明してみよう。まず、着信音に設定したいファイルを本体にコピーしておく。mini SDにある音楽ファイルを選択すると、スタンバイ時に着信できなくなるため、必ず本体へコピーする必要がある。
「スタート」→「設定」→「個人用」タブから、「着信音/バイブ」のアイコンをタップすることで着信音の設定が出来る。着信音を設定できるのは「電話」「ライトメール」「メール」で、「着信音量」のタブでは、再度ボタンで設定されたメイン音量に対するパーセンテージで設定し、それぞれ「一定」「STEP」「消音」と音量変化も設定可能だ。「メロディ」タブでは着信音の選択ができる。音楽ファイルを設定するには、プルダウンメニューから「<<ファイル参照>>」を選択する(一覧の最後に表示される)。ここでファイル一覧が表示されるが、アイコンに赤い「カード」マークが付いているものはmini SDにあるものなので、WMP10 と同じ形のアイコンだけのもの(つまり本体内にあるファイル)を選択する。
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「スタート」「設定」「着信音/バイブ設定」を選択したところ。着信音はメイン音量に対してのパーセンテージで設定する |
着信音は「一定」「消音」「STEP」と変化させることができる |
ファイルを選択したら「OK」ボタンでその音楽ファイルが着信音に設定される。電話の場合はここまでだが、メールとライトメールの着信音に設定する場合は、引き続き「呼出時間」タブで、再生する時間等を設定する。再生する時間は秒数(0~99秒)で指定するか、再生回数(0~5回)で指定する。これは、設定する音楽ファイルの演奏時間によって、秒数で指定するか、演奏回数で指定するか使い分けることができるので便利だ。
W-ZERO3は購入後、単純にインターネットに接続さえすれば、Pocket Internet Explorerとの連携で動画を楽しむことができる。例えば、 NHKオンラインのニュースの動画や、Yahoo! Japanの動画ニュースなどが視聴可能だ。PHS経由の4xパケット通信の場合は56kbpsなどのナローバンドでないと正常に視聴することが出来ないが、無線LANで接続している場合は200kbps程度まではストレスなく視聴することが可能だ。それ以上になると音声と映像がずれる現象が現れる。NHKオンラインの300kbpsの動画を無線LAN経由で試してみたが、映像が音声に対して1/3秒ほど遅れる感じをうけた。また、Yahoo!!の動画サービスはニュース映像を除き、残念ながら試聴することができなかった。
しかし、この機能は電波状態が良ければ無線LANの範囲外、例えばバスや電車の中でも視聴できるのは非常にありがたい。特にニュースなど速報性が高いものは、耳にした瞬間に映像を見たいものだ。ブックマークから選択、リンクをタップするだけでニュース映像を視聴できるという機能は、非常に高いアドバンテージになると言えよう。
もちろん、ネットワーク上のニュース映像以外、例えば、PCで録画したテレビ番組をW-ZERO3で楽しむことも出来る。WMP10での動画再生は、映像部分はQVGA(320×240)・200kbpsを目安に、音声を含めると300kbps程度で作成するといいだろう。変換用のソフトウェアとしては、Windows XP SP2の自動更新で入手できる「ムービーメーカー2.1」や、少々古いが「Windows Media Encoder 9」が利用できる。ただし、動画のファイルサイズには注意が必要で、サイズが大きくなると、WMP10を起動した際に、同時起動中のプログラムを閉じるように要求されることがある。最悪、システムはフリーズ、リセットを余儀なくされることもあるので注意が必要だ。システムがフリーズするのは、映像がWMV形式で圧縮されているものよりもMPEG-4 形式で圧縮されているもので発生することが多いように見受けられる(Windows Media Encoder 9でMPEG-4形式を作成するには別途設定が必要)。
上記以外の他形式を再生したい場合は、サードパーティのプレイヤーを使うことになるが、今回は定評のある「The Core Pocket Media Player」(通称TCPMP)を紹介する。「TCPMP」は従来「Beta player」という名称であったPocket PCやPalm用のプレイヤーで、「Donation Ware(気に入ったら寄付することを条件とするソフトウェア)」となっている(実際にはプロジェクトへの寄付で、「TCPMP」の「TCPMPについて...」にはGPL と記されている)。
TCMPのダウンロードページにアクセスし、ページ冒頭に明記してある文章(英文)を理解したら、「Windows Mobile version」の「Latest version」を選択する(現時点では0.71)。すると各種ファイルのダウンロードページに移動するので、そこから「tcpmp.arm.cabs.0.71.zip」を選択する(W-ZERO3にはARMが搭載されている)。するともう一度ページを移動しダウンロードが始まる。ダウンロードが終わったら、ファイルを展開し「tcpmp.arm_ce3.cab」というファイルをW-ZERO3へインストールする。インストール終了後は、「スタートメニュー」「プログラム」から「TCPMP」を選べば起動する。ファイル再生は「ファイル」の「開く...」を選択して、ファイル一覧から選べばよい。
「TCPMP」では「WMP10」とは異なり、全画面表示(オプション-ズーム-Full Screen)をすると映像を画面全体まで拡大して再生することができる。もちろんWMVやASF以外のファイルも再生することができる。携帯電話向けのファイル(ASF形式、映像MPEG-4形式、音声G.726形式)も再生が可能だ(WMP10では音声が出力されず、映像も拡大されない)。
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「The Core Pocket Media Player(通称:TCPMP)」の「開く...」でファイルを選択。フォントが大きめ |
「TCPMP」では縦位置でも拡大表示される |
「Full Screen」にしたところ。液晶を生かしきることができる |
ところで、W-ZERO3と同じく通信機能を持ったプレイヤーとしては携帯ゲーム機であるプレイステーションポータブル(PSP)がある。PSPは映像圧縮にMPEG-4 H.264/AVC、音声圧縮にAAC(MPEG-2 Advanced Audio Codec)を採用している(最近発売された新型iPodも同形式をサポートしている)。
このAAC形式の音声に関しては、「rarewares 」 )からTCPMPの前身の「BetaPlayer」用AAC Pluginをインストールすることで再生が可能となる。同サイトにアクセスし「BetaPlayer AAC plugin Windows Mobile version」にある「tcpmp_aac_plugin.windows_mobile.0.66.zip」をダウンロード、展開し「aac.setup.0.66.exe」を実行、Active Sync経由でインストールするか、「aac.cabs.0.66.zip」をさらに展開してできた「aac.ARM.CAB」をW-ZERO3にコピーしてインストールする。
また、前述の「TCPMP 0.71」では対応できてなかったが、「picard」氏 )が非公式版として公開している「0.71d」ではAVC形式に対応している。これらをインストールすることでPSPやiPod と同様のファイルを再生することが可能となる。なお、このバージョンはテストバージョンであるため、前述の「0.71」をインストールしている場合は、一度アンインストールしてからの方がいいだろう。試しに、PSP用の変換ソフトウェア「Image Converter 2 Plus 」を使い、AVC形式768kbpsで変換したファイルをW-ZERO3で再生したところ、PSPと同じとはいかなくとも美しい映像を見ることができた。
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PSP用MPEG-4 H.264/AVC対応変換ソフトウェア「Image Converter 2 Plus」。W-ZERO3に「TCPMP 0.71d」および「AAC Plugin」を導入してあればこのソフトウェアで変換されたPSP動画も視聴可能だ |
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「Image Convertor 2 Plus」で作成したファイルを「TCPMP 0.71d+AAC Plugin」で開く。拡張子は「.mp4」だ |
縦位置での再生。そこまで大きな差は感じない |
「Full Screen」での再生。「WME9」で変換したファイルに比べ、ブロックノイズの無いクリアーな映像であることがわかる |
もっとも、PSPはゲーム機としてもビデオプレイヤーとしても、映像出力に特化された機器であることを考えると、ポータブルプレイヤーとして、W-ZERO3とPSPを比較するのは少々酷なことではある。
しかし、メーカーからの機能追加を待つしかないPSPに対して、W-ZERO3はユーザーがアプリケーションをインストールすることで多彩な機能を追加できる。そして、そのチューニングの楽しさ、使いやすいキーボード、さらには通話機能までをも一台で済ませることができるW-ZERO3は、マルチメディアプレイヤーとしても十分な魅力があるだろう。
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