【レビュー】

W-ZERO3はモバイル・スタイルを一新させるガジェットになりうるか?

1 W-ZERO3の特色と注目点

  • <<
  • <

1/8

2005年12月14日という日は、モバイル好きな層にとって、一つの忘れがたい日となるだろう。そう、まさにこの日こそ、ウィルコムの「SIM-STYLE」シリーズの高機能端末である「W-ZERO3(WS003SH1)」が発売になった日だ。ウィルコムがプレスリリースを出したその日から、IT系のみならずTV・新聞など多くのマスメディアからも注目され、予約開始と同時に予約店に行列ができるなど、ただならぬ騒ぎを引き起こすほどの人気を博すこのガジェット。本稿では、このW-ZERO3に関して現時点で可能な限り掘り下げて説明してみたいと思う。

年末年始の休暇を心待ちにし、家族サービスの合間を縫って確保した時間を使い、ようやく届いたW-ZERO3をいじり倒そうとほくそ笑んでいる人は、是非とも参考にしてみて欲しい。また、惜しくもウィルコムストアでの抽選に漏れてしまい、いまだ購入に至ってない方も、手元に来たときに備えて読み進めて欲しい。

スマートフォンとしての特色と注目点

巷ではW-ZERO3のことを国内初のスマートフォンと呼ぶケースが多々あるが、この「スマートフォン」とは何であろうか。簡単に言うと、スマートフォンとは、「コンピュータを内蔵して、音声通話以外にも様々なデジタルデータを処理可能な携帯電話」のことを指す。つまり、NTTドコモのiモード搭載端末やauのEZweb搭載端末なども、広義の意味ではスマートフォンと言えるだろう。しかし、最近ではこうした機能を搭載することが一般化してきており、スマートフォンとはもっと「高機能・多機能」な端末を指す言葉となってきている。

こういったスマートフォンの潮流には、大きく分けて二つの流れが存在する。その一つは、老舗と言ってもいいほど長い歴史を誇るフィンランドの企業「Nokia」の「Symbian OS」を搭載した端末で、低スペックなハードウェアでも快適性を損なわず、極めて安定して動作する利点を持つ。Symbian OSの源流は今はなきPDAである「Psion」シリーズに搭載されていた「EPOC OS」であるが、改めて携帯電話向けに徹底して作りこまれ、著しい発展を遂げている。最近では、国内の携帯電話での採用が増えており、先に発売されたNTTドコモの「FOMA 902iシリーズ」では、実に4機種がSymbian OS搭載となっているほどだ。もちろん、スマートフォンだけではなく、いわゆる「高機能ケータイ」にも強いOSであり、今後もさらに広まっていくものと思われる。

Nokiaの代表的なスマートフォンの一つ「Nokia 9500」。クラムシェル型でスタイリッシュさが身上。W-ZERO3と同じようにWi-Fi(802.11b)も搭載されている

もう一つの流れは、Palmが展開しているPalm OS搭載の「Treo」シリーズである。こちらは完全にPDA向けOSである「Palm OS」を中心に据えて、そこに電話機能を付加する形でスマートフォンを成立させている。いわば、軸足は完全にPDA側にあるわけで、搭載するOSこそ異なるが、W-ZERO3の成り立ちもこちらのパターンに属する。こちらはマス的にはSymbian OSほどのマーケットは狙えないが、そのユーザー層から、より高機能・多機能を目指しやすい土壌を持つことで、マニア層やビジネス層を取り込んでの展開が中心となっている。

なお、Palmでは2006年早々にW-ZERO3と同様、Windows Mobileを搭載したデバイス(Treo 700W)がリリースされるのではないかと言われているが、現時点ではその詳細は不明だ。

Palmの人気シリーズである「Treo 600」(右)と「Treo 650」。電話機としての使い勝手も評判がよい

つまり、現時点に至るまでの発展の仕方こそ違えど、少々乱暴に言ってしまうと「PDA的な機能を一式搭載した携帯電話」が現在、スマートフォンと呼ばれるものだと認識しておけば、さほど大きく外すことはないだろう。この意味ではW-ZERO3は確かに、スマートフォンの範疇にある端末だと言って差し支えない。

実のところ、今回のW-ZERO3のような試みの端末が国内で登場するのは、初めてのことではない。PHSの黎明期には、「データ通信に強い」というメリットを活かすべく、各メーカーから様々な「音声とデータ通信の複合端末」が登場し、そしてひっそりと消えていった。また、2000年には、現在のTreoの先駆けとも言える「PHS内蔵WorkPad(IBMによるOEM版)」が登場したが、やはりブームになるには至らず、ごくごく短命に終わっている。こうした先達が消えていった理由はいくつか考えられるだろうが、その大きな理由は「PHSでの通信が従量制」であったという点があげられるだろう。

国内のPHS黎明期に登場した「京セラDataScope」(左)と「東芝ジェニオ」。DataScopeはPHS版のみではなくDoCoMo版も発売された

これらの過去の端末に比して、W-ZERO3は「定額プランを選択可能なPHS機能」と「802.11b規格の無線LAN」の二つのアクセス経路を提供し、「常にネットと繋がっていられる」というスタイルを明確に打ち出してきている。非常に低コストで、常にオンラインでいられる安心感こそが、W-ZERO3の根本的な存在理由だと言えよう。特に、コストメリットの点において、現存する他のスマートフォンに比べて大きなアドバンテージがあるといっていい。

また、W-ZERO3の場合、通信・通話機能はW-SIM(ウィルコム・シム)に完全に任せられており、本体の機能とはほぼ切り離されている点も大きな特徴だろう。仮にW-SIMを抜いたとしても、W-ZERO3は単体で運用可能だ。もちろん、PHSを用いた通信・通話は不可能であるが、無線LANを用いたデータ通信は可能であり、使用環境によっては、この状態でも全く困らない場合もあり得る。これは他のスマートフォンにはない、非常に特徴的な部分である。

W-ZERO3の電話機能はすべてW-SIM(ウィルコム・シム)によって実装されている

  • <<
  • <

1/8

インデックス

目次
(1) W-ZERO3の特色と注目点
(2) W-ZERO3の特徴
(3) モバイルガジェットとしての特色と注目点
(4) PDAとしての完成度、そして既存との互換性
(5) 各種ソフトウェアの互換性
(6) マルチメディアデバイスとしてのW-ZERO3
(7) Linux Zaurusシリーズとの比較
(8) まとめ

もっと見る

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事