【レポート】
Internet Week 2005の初日に行われた「Enjoy! Mobility Day!」(日本UNIXユーザ会主催)では、モバイルコンピューティング全般の話題から携帯電話のフルブラウザに関するセッションまで、モバイル関連の様々な話題が取り上げられた。中でもモバイルブロードバンドに関しては、Wi-Fi・WiMAX・iBurstといった最近話題の様々な通信技術について、ライブドア・Intel・京セラとそれぞれの分野を代表する企業からパネリストが登場し、現在の状況と今後の見通しについて語った。
最初に登場したライブドアの伊勢幸一氏は、12月1日に正式サービスをスタートさせたばかりの公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」についての現状と今後の見通し、そして苦労した点について語った。
まず現時点でのアクセスポイント(AP)の数については「公式には2200カ所と言っているが、実際には12月1日時点で約1,500カ所」と工事が思うように進んでいない状況を語った上で、「年内には2,000カ所を目標にしている」と述べた。今のところ実際のユーザ単位のスループットは「平均5Mbpsくらい」とのこと。なお会場では実際のAPの設置状況を示したマップも披露していた。
その上で伊勢氏は「我々はプロトコル開発会社ではなく、既にあるプロトコルを使ってサービスする会社」「今後もコストエフェクティブなものをどんどん取り入れて行きたい」と語ったほか、ブロードバンドタワーとホーキングの両社と提携して自動販売機にAPを設置していく方針について「阪神大震災のときでもなぜか自販機だけは電源が生きていて商品が購入できた例がいくつもあり、うまくいけば災害時の通信手段としても使えるのではないか」と述べた。
今後の課題について伊勢氏は「まだ一般にはWi-Fiはなじみが薄く、SSIDやWEPなどもなじみのない言葉」と述べた上で、そういったことに詳しくないユーザでも簡単に同社のサービスを利用できるように「接続ツールなどを提供していきたい」と語った(実際接続ツールは12月5日から提供が開始されている)ほか、セキュリティ全般についても「無線だけでなくセキュリティが甘いものは多数存在しており、ユーザへの啓蒙活動が必要だ」との認識を示した。
後半はサービス開始までの苦労話に移り、例えばサービスに関する検討を開始した2004年夏の段階ではMIMO技術を採用したAPを使うことを考えていたのが、4カ月後になってAPメーカーから「やっぱり(ライブドアの要求仕様に適合するものは)作れません」との連絡がありその間の作業が全部無駄になったエピソードを披露。その後2005年春になって最初の500台のAPが完成したものの(結局ほぼオリジナルな製品を開発してもらうことになったという)、製品の製造段階でファームウェア等の仕様がまだ決定していなかったため、その500台のAPに1台1台手作業で設定情報を入力していかなければならず、結局関係者が総出で約5日間かかったことなど、いろいろな裏話が飛び出した。
他にも、とある区役所からは、電柱にアクセスポイントを設置する工事の許可に関して「APの設置自体は許可するが、光ファイバや電線を敷設するのは美観を損ねるので困る」と言われ工事ができなかったとのエピソードや、話題となった衆議院選挙がらみの工事の遅れの話について「通常は5時間ぐらいの作業で一気にAPの設置から光ファイバ・電線の敷設までを一気にやってしまうのだが、選挙中は選挙カーの妨害になると、法的には問題ないものの色々とまずいことが起きるため、作業を1.5時間ぐらいずつに分割して行ったところ工事期間が3倍になってしまった」と語るなど、いろいろ苦労したものの何とかサービス開始にこぎつけた様子を示していた。
続いてインテルの竹井淳氏は、同社が推進するWiMAXに関する現在の状況について語った。
竹井氏はまず「WiMAXがあればWi-Fiはいらないのではないか」といった意見が最近聞かれる点について「Wi-Fiの方が速度は速いが、例えば田舎は携帯電話が最も有利だし、それぞれが相互補完しながら使われるもの」と述べた上で「ある地域に対する公共ネットワークを構築するという意味では、ライブドアと目指すところは似ている」と語り、WiMAXだけでなく様々なプロトコルが共存することで無線ネットワークが作られるという認識を示した。
そして竹井氏はWiMAXの技術的な概要を解説した上で「WiMAXはMobile IPを利用することを前提にアーキテクチャを作っている」と語り、最初から無線区間を担当するアクセスプロバイダ、IP Connectivityを提供するISP、アプリケーションを提供するASPがそれぞれ分離した形をWiMAXでは想定していること、そして現在その三者の責任分界点を定める文書を作成していることなどを明らかにした。
WiMAXに関しては従来IEEE802.16のワーキンググループ、そして業界団体であるWiMAX Forumにおいて標準化活動が行われてきたが、竹井氏は「WiMAX Forumではアカデミックな人が入ってくることができない一方で、ネットワークアーキテクチャを語る上でWiMAX Forumだけでは人手が足りない」として、11月にバンクーバーで行われたIETF会合で「IPv6 over 802.16」に関するBoFが開催され、IETFにおいてもWiMAXに関するワーキンググループ設置に向けた動きが始まったという。
このようにWiMAXを巡っては世界的に活動が活発化している上、日本でも「2007年には周波数が開く準備ができそう」(竹井氏)とのことで着実に動きが進んでいるが、竹井氏は「今のところ新しい使い方があまり湧いてこないのが不満」と語り、WiMAXを使った新しいアプリケーションの開発に期待する姿勢を示した。
なお竹井氏は「WiMAXのチップセットが2008年以降のCentrinoに入ってくる」との見通しも明らかにしたほか、「Appleも新しいメディアには敏感であり、IEEE802.11aを最初に入れたメーカーを想像すれば自ずとわかるのではないか」と語り、Apple Computerが早い段階でPowerBookなどにWiMAXを搭載してくる可能性があることを示唆していた。
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