【インタビュー】

AppleにおけるQuickTime、H.264とオープンスタンダード・オープンソース

    木下誠  [2005/12/23]

    米Apple Computer インタラクティブ・メディア・グループ、プロダクト・マーケティングの、フランク・カサノヴァIIシニア・ディレクター

    H.264が再生可能になったQuickTime 7が出荷されて、半年が経つ。H.264の活躍する分野は、HDサイズの映画用ファイルから、iPodや携帯電話といったモバイル機器まで、幅広く拡大している。Apple ComputerのQuickTime担当である、インタラクティブ・メディア・グループ、プロダクト・マーケティングの、フランク・カサノヴァIIシニア・ディレクターに、H.264に対する手応えから、QuickTimeの今後の戦略まで、話を伺った。

    --H.264は、どの分野のコンテンツで使われることになるでしょう。

    カサノヴァ氏: 現時点では、H.264は初期の段階にあると言っていいと思うんです。私どもの調べでは、200社以上の企業が、H.264をベースにした製品を、何百もアナウンスしているという状態です。H.264の実装をハードで行うところもありますし、すべてのセットトップボックスや放送機器、そういったところでもH.264のサポートが行われています。

    現時点では、H.264のユーザとしては、Appleが一番大きなユーザだと思います。たとえば、AppleのWebサイトにあるムービー・トレイラーもそうですし、iTunes Music Storeにある、何千というビデオ。これもH.264で作られています。

    その他の分野ではどうかというと、そんなに遅れている訳ではありません。サードパーティが作るビデオが数多くありますが、自分たちの特徴を全面に出したいという希望があれば、やはりH.264をベースに、自分たちの製品を作らなくてはいけないわけです。

    誰もがH.264を、多いに気に入っているようです。

    --デジタルコンテンツを流通させるには、DRM(Digital Rights Management、デジタル著作権管理)が重要になると思います。QuickTimeが、DRMを含めたソリューションを展開することはありますか。

    カサノヴァ氏: いい質問ですね。まず、Appleは、現在DRMとしては、iTunes Music Storeに焦点を絞っています。多くのエネルギーと人材を投入して、この安全なDRMを実装しようとしています。DVD以外の分野では、ここにあるものが、最も成功したDRMソリューションである、と考えています。

    HD DVDもBlu-rayも、独自の暗号化技術を使っていくことになるでしょう。しかし、現時点では、QuickTimeによる汎用のDRMがあるわけではありません。将来的にはそうなるでしょうが、現時点ではAppleのフォーカスは、ここにあるわけです。

    --iTunes Music StoreのDRMを、それ以外に開放することはありますか?

    カサノヴァ氏: ご存知のように、Appleは将来について、何のお話もしません。現時点で話せるのは、このDRMは、MacintoshとPC、そしてMotorolaの携帯電話にだけ、採用されている、ということです。

    --HDコンテンツについてお聞きしたいと思います。アメリカや日本で、放送によるHDの世界が始まりつつありますが、それらにQuickTimeは対応できるでしょうか。

    カサノヴァ氏: QuickTimeが再生できるのは、標準のMPEG-4ファイルということになります。誰かが、H.264をベースにしたフォーマットを作ったとしても、そこに企業独自の情報が入っていたら、QuickTimeでは再生できません。

    しかし、QuickTimeと共に出荷されているフォーマットというのは、多くの放送局や、携帯電話や、DVDが選んだものと同じです。

    --地上波デジタルや、ネットワーク上にあるファイル、DVDのようなパッケージといった、すべてのHDコンテンツが、QuickTimeで統一的に扱えればうれしいのですが。

    カサノヴァ氏: 質問を理解しました(笑)。

    (フォーマットの)標準は標準ですから。QuickTimeが無くても、セットトップボックスのメーカーによるボックスでも、放送を受信する受信機であっても、どれでもかまわない訳です。ボックスの中にQuickTimeを入れる必要はありません。

    私どもが、いま多く関心があるのは、コンテンツホルダーや放送業者といったコンテンツ作成の方にあるわけで、セットトップボックスといったハードには興味がありません。

    --コンテンツの作成分野に興味があるといういことですか?

    カサノヴァ氏: そうです。私たちにとってコアになるのは、まさにコンテンツの作成です。QuickTimeと、Final Cut Proのようなその他のテクノロジーも、すべてH.264と互換性のある技術な訳ですから。

    たとえば、Final Cut ProでH.264のコンテンツを作れば、ケーブルテレビのサービスを介して、そのサーバからセットトップボックスの方に送ることができます。H.264というフォーマットを標準にしているので、H.264を見ることができる訳です。

    別にセットトップボックスに、Appleのソフトが乗っている必要は無いです。でも、QuickTimeで作ったファイルを、そのプレイヤーが直接再生する、という形はとっています。それが標準のいい点だと思います。

    --今後、QuickTimeは、どのような方向に力を入れていきますか。

    カサノヴァ氏: 色々な方向に、QuickTimeを進化させていきます。QuickTimeは、様々な人々にとって、様々な形で、重要なものだと思います。

    NTTドコモやKDDIは、iモーションのような映像サービスの作成に、QuickTimeを使っています。世界中のテレコム企業が、QuickTimeを使ってストリーミングをしていますから、そういったところとも関係を持っています。3G携帯電話の分野でも、今後ともQuickTimeは重要性を発揮していくでしょう。

    それからハリウッドですが、すべての映画スタジオが、コミュニケーション用に、あるいはデジタルコンテンツの製作に使っています。ですから、そちらの方向にも、QuickTimeを進化させていきます。こういった映画スタジオにとって重要なコーデックも、プロファイルの中に追加していきたいと考えています。

    そういった映画の環境と、3G携帯電話の環境の開発では、かなり違いがありますが、両方とも私たちには重要なんです。QuickTimeというものを効果的に、戦略に適した形で、進化をさせていくことで、それぞれの業種でいいものができあがっていくと考えています。

    --QuickTimeの得意分野として、インタラクティブムービーがあったと思います。QuickTimeのインタラクティブ性は、今後どうなるでしょうか。

    カサノヴァ氏: 何か新しいことがあるかというと、そういうことはありません。

    現在、インターネットの世界では、面白い進展が数多く見られます。Flash、Flex、SVG、SMILといった様々なものが、インタラクティブの分野で登場しています。Web 2.0と呼ばれるものが、今発展していますが、そいういった進化の状態をトラッキングすることは、重要だと考えています。

    QuickTimeはインタラクティビティに関しては、非常にすばらしい機能を持っていましたから、このWeb 2.0の進化にも、かなりの興味を持っています。

    --H.264についてもう一つ質問があるんですが、x264というH.264用のコーデックが存在します。

    カサノヴァ氏: x264ですって?それはどこの製品ですか?

    (Webブラウザで検索する)これですか?オープンソースですね。

    (説明文を読む)ここに書いてありますね。x264は、H.264に入っている技術の一部を作り直して、特許の問題を回避したもの、とあります。こうしたものを、私たちが配布することはありません。

    世界中に、頭のいい人はたくさんいます。特に、オープンソースの世界にいる人は、色々な活動をしている訳ですが、中には、私たちとはちょっと違った考えをする人もいます。それも1つの考え方だと思います。

    (Webページを見ながら)ざっと見る限り、非常に強力な技術が、色々入っているようですね。ところで、まだ質問は終わっていませんよね?

    --QuickTimeでこれらのファイルを再生できるようになりませんか。

    カサノヴァ氏: こういう形で作ったコンテンツを、QuickTimeで再生してみることは、面白いとは思いますよ。でも私たちは、それら用の正式なテストをしているわけではありません。ファイルを送っていただいたら、再生してみますよ(笑)。

    --先日、NTTドコモとテキサス・インスツルメンツが、H.264を再生できるチップセットを開発しました。現在、NTTドコモは3gpを使って配信していますが、今後、H.264が3gpを置き換えていくんでしょうか。

    カサノヴァ氏: お見せしましょう。

    (QuickTime Playerでムービーを開く)これが、H.264の普通のムービーです。メニューから、書き出しを実行して、フォーマットから3gを選択します。(3G 書き出し設定のパネルが開く)このスクリーンこそ、ドコモやKDDIが、毎日使っているスクリーンなんです。3gpの中から、H.264を選択することができるんです。

    ですから、3gpは大きな傘ということになります。その傘の下に、H.264があるわけです。(傍らにある携帯電話を取り上げて)このドコモフォンは、H.264はサポートしていませんが、MPEG4をサポートしています。でも、QuickTime 7と新しいチップセットがあれば、ドコモもKDDIも、H.264をお見せできるということになります。

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