【レポート】

ユーザーインタフェース技術は会議とインターネットで磨かれる

3 動画から音楽へ

    美崎薫  [2005/12/14]

    全体的にいうと、音/音楽の発表が目立った。動画の発表がほぼ皆無だったのと較べて対照的だった。音や音楽の研究が増えてきたと感じたのはWISS2003のときだったが、今年のインタラクションは、音の研究会かと見まごうほどに音と音楽の発表が多かった。これは、iPodに代表されるように、音がきわめて身近なツールとなりつつあることを示しているのだろう。新しい楽器を提案するもの、楽譜を表示するもの、声と音を描くもの、リズムを扱うものなど、音と一口に言っても、切り口は様々だ。まさに音の時代が到来しつつあると言えよう。技術の進歩によるデバイスの拡張でいえば、小型ハードディスク、小型ディスプレイは音、動画/映像、静止画などを扱えるように、じょじょに機能が向上することだろう。デバイスの機能でいうと、筆者は次のように考えている。

    ディスプレイ ディスク容量小 ディスク容量大
    ~3.5型 音楽 映像
    5型~ 静止画  

    映像を扱うには大きなディスプレイよりも大きなディスクが有用であり、静止画を扱うにはディスク容量よりも大きなディスプレイのほうが有効である、ということだ。これは筆者の経験的なものだが、静止画は小さなディスプレイで見るのに不向きである。それゆえ写真ビューアーはブレイクしないのかもしれないとさえ思う。写真を扱う発表も少なくなかった。興味深かった発表を挙げておこう。

    「ぱらぱらマトリクス」。写真を漫画的に表示し、1日の日記とできるようなシステム

    「ぱらぱらマトリクス」でじっさいにできた写真マンガ。おもしろい

    「ぬくぬくキー」。開発者の大垣裕美氏

    家族のつながりをキーの温かさで実現。家族が家に帰ってくるとキーが温かくなり、心も温まる

    「からくりブロック」。ブロックの組み合わせでブロック上に表示される映像が変わってくる

    「からくりブロック」の開発者、ソニーCSLの川北奈津氏

    絵のなかに情報を提示する「ficklook」。これはほしい!

    「ficklook」の開発者、玉川大学の椎尾一郎教授

    コンセプト(だけ?)が突出しており笑いを誘った、はこだて未来大学の小川浩平氏の「ITACO」。「ど根性ガエル」のピョン吉との説多数。来年はこれが飛び出すようにポップアップするインタフェースを実装予定、と言う冗談も

    ネットワークにつながった時計の針がちょっと揺れることで、「気配」を伝えるアンビエント・コミュニケーションインタフェース。早稲田大学大学院の中田裕士氏による。

    音/音楽

    音や音楽の発表は多かった。WISS2004でベスト論文賞を争った産業技術総合研究所の後藤真孝氏の「Musicream」は、インタラクティブ賞を受賞した。これはGUIを使った「ミュージック再生リスト」インタフェースの提案で、大量の音楽をきわめて直感的に扱えることが評価されたものだ。WISS2004での評価も高く、音楽時代を象徴する発表といえる。

    「Musicream」。曲が水玉として表現される

    産業技術総合研究所の後藤真孝氏。いま音楽ジャンルが空前の盛り上がりを見せていて、ノりにノっている

    ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一氏も、「UniversalPlaylist」という、音楽のプレイリストに関する提案を行った。

    ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一氏

    「UniversalPlaylist」。画面は地味だが、「好き」「嫌い」の評価を実装したところが新しい

    大量の音楽を前にしたときに必要なことは、音楽を聴いたときに「好き」「嫌い」を評価することであり、その評価によってプレイリストと呼ぶ曲の順番がダイナミックに変わっていくというのは、高いユーザビリティを実現することだろう。

    ただし、このような発表が増えていくことは望ましいが、すでに/ 現実にわれわれはiPodに代表される音楽プレイヤーを使い、個々にプレイリストを作り始めているのである。だとすれば、これらの研究が求められているのは、まさに今、この瞬間なのであって、研究室から出ないままでいてはいくら論文や研究として輝いていても、その魅力は色あせてしまうだろう。

    はこだて未来大学の藤井伯文氏は、「koekaki(こえかき)」という音で絵を描くシステムを展示し、インタラクティブ発表賞を受賞した。

    はこだて未来大学の藤井伯文氏と「こえかき」

    こちらも発表は逃してしまったので、インタラクション終了後の食事の席で実演してもらった。マイクから音を拾い、その音によって高い音だと明るく、低い音だと暗い色が画面内に縦横無尽に流れていくさまは、幻想的でアートマインドに満ちている。

    成蹊大の足立吉広氏らによる「インタラクティブ声質変換システム」は、音声読み上げにイントネーションを加え、自然な声のトーンを実現するものだ。このシステムは、近い将来、好きなスターの声で文章を読み上げてくれるシステムが実現可能なことを示唆する。音や音楽は、キーボードとディスプレイをもつ従来のコンピュータにはとどまらない範囲の広がりを見せている。筆者自身はややオールドタイプで音楽的センスにも欠けているところがあるが、ジャンルとしてはますます期待が高まる。

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