【レポート】

鳥を科学するバイオプレーンに迫れ!

1 航空機力学を極めた次世代凧「バイオカイト」

    湯木進悟  [2005/11/29]

    もういくつ寝るとお正月~♪……。まだ紅葉の秋にして少し気は早いかもしれないが、日本人ならだれでも1度は口ずさんだことがあるこの歌は、お正月には凧上げて~というフレーズに続き、正月の伝統行事として真っ先に凧揚げが紹介されている。

    最近の子どもたちも、正月には凧揚げをして遊ぶのだろうか? 寒い冬に子どもたちが楽しそうに凧を揚げて走り回る光景を、昔ほど見なくなってきたような気はするものの、大人も年中楽しめるように、この現代において次世代凧なる「バイオカイト」を普及させようと奮闘している人々がいる。しかも、バイオカイトの開発からさらに飛躍して、リモコン操作で自由にコントロールできるIT凧「バイオプレーン」の発売まで間近に迫っているという。

    江戸時代より「丹醸(伊丹の酒)の町」としても知られる、兵庫県伊丹市に本社を置き、バイオカイト、バイオプレーンの開発および販売を手がける森久エンジニアリングを訪ねて、森一生社長に話を聞いてみた。

    森久エンジニアリングの本社がある伊丹は丹醸の町として知られ、周囲には白雪の長寿蔵などが並ぶ

    バイオプレーンは、空を眺めれば飛行機が手に取るように見える伊丹空港のそばで誕生した

    凧でも飛行機でもない新境地を

    森久エンジニアリングのオフィスに入ると、壁にはずらりとバイオカイトが飾られている。それらは、四角形や菱形の和凧、三角凧のゲイラカイトとは異なる、実にユニークなデザインばかりである。ハヤブサ、ワシ、トビ、カラスなど、鳥をリアルに絵柄で再現したものから、チョウ、セミ、カブトムシ、クワガタムシに始まって、トラやオオカミ、アニメキャラクター、車、ペット、果ては顔写真に至るまで、バイオカイトと一口に言っても、そのデザインはバラエティー豊かだ。

    森一生社長

    オフィスにはバイオカイトがずらりと並ぶ

    最初に断っておかねばならないが、森久エンジニアリングは、バイオカイトの研究・開発を目的に誕生した企業ではない。主力事業としては、蛍光灯を光源にした水耕栽培で、省エネ&省スペースの高効率高速栽培を実現するという「野菜生産システム(小型植物工場)」などがあり、また、三菱電機より技術供与を受けて開発が進められた製品も少なくないという。

    野菜生産システム

    開発した凧に囲まれる伊藤利朗博士

    ここで話は5年程前に遡る。森氏が、ビジネス上の深い関係にあった三菱電機生産技術研究所の伊藤利朗博士から、ふと「凧を開発したので商品化しませんか」との話が持ちかけられたのだという。凧……と、最初に電話で聞いた時の森氏の正直な感想は、「さて、困ったなあ。凧揚げなどという遊びは、もう今では廃れてきているし、それを売り出したところでどうだろう……」というものだったようだ。

    複雑な気持ちで、伊藤博士に誘われるまま自宅を訪ねて見ると、何と家中に凧ばかり! しかも変わった形のものばかりである。戸惑いながらも、森氏はその中からカラスのデザインを選び、伊藤博士と一緒に近くの公園へ向かった。凧を釣り竿のようなリールにくっつけて、糸を自然に送り出すと、あら不思議! まだこちらは立ち止まっているのに、しかも微風しか吹いていないのに、まるで風船が空に上がっていくように、あっという間に真上に高くカラスの凧が揚がっていくのである。

    実は、伊藤博士は、流体力学および航空機力学の観点から、伝統凧を努めて理論的に追求してきたのだという。凧職人は、その経験を通して、どこをどう工夫すればよく揚がる凧ができるのか、職人の勘で直感的に理解しているものの、同博士は、なぜ凧が揚がるのか、その原理を科学的に解明することに努力を傾けたようだ。

    バイオカイトを飛ばしにやって来た伊藤博士(左)と森氏

    伊藤博士がキアゲハのバイオカイトを手から離すと……

    ゆっくりと微風でも飛び始める

    風に乗ってどんどん揚がる

    トビのバイオカイトを揚げてみる森氏

    空高く安定して飛んでいくのがバイオカイトの大きな特徴

    同博士によれば、伝統的な凧が、風を全面に受けながら風圧を利用して揚がっていくのに対し、主翼と水平尾翼を装備して、飛行機に似たデザインで作り上げた凧は、風に対して浅い角度で入り、揚力が働いて上昇していくという。勢いよく風を受ける凧を糸で引っ張りながら、力強く揚げる伝統凧とは異なり、同博士が開発した凧は、もちろん糸が付いているので凧であることに変わりはないものの、上空を安定して飛ぶ飛行機のようである。

    揚力で空をスイスイと飛ぶ凧……。森氏は、すぐさま商品化に向けて全面的な協力を約束し、バイオカイトの発売へと踏み切る決意を固めた。

    伝統的な凧とは異なり、バイオカイトには揚力が働く

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