【レポート】
インテルが現在行っているワイヤレスブロードバンド関連の研究開発状況を報告する「インテル・ワイヤレスブロードバンド技術セミナー」が、10月31日に都内にて開かれた。昨年まで行われていた「Intel R&D Day」に代わるイベントとして開かれた同セミナーでは、主にインテルが国内の大学と共同で行っている研究開発に関する現状報告や、ワイヤレスUSB・WiMAX・IEEE802.11nといった次世代の注目技術の概要解説、慶應義塾大学の村井純教授による招待講演などが行われた。
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Intel シニアフェローのケビン・カーン氏 |
基調講演にはIntelでシニアフェローを務めるケビン・カーン氏が登場し、「スマートCMOSラジオの可能性」と題して、いわゆる「ソフトウェア無線」の可能性と、それに向けたIntelの活動について語った。
まずカーン氏は、IntelがCentrinoを投入して以後、急速にノートPCにおける無線LANの搭載が進んだことについて触れた上で「今後同じような現象がノートPC以外の世界でも起きるのではないか」と予想。しかしその際に無線ネットワークに求められる要素はその利用状況によって様々に変化するため、ハードウェアにはフレキシブルな対応が求められるとして、ソフトウェア無線(SDR: Software Defined Radio)が非常に重要な要素となると語った。
そしてカーン氏は、いわゆる4G(第4世代携帯電話)について「そもそも3G自体成功しているかどうかというと疑わしいところがある」と述べた上で「4Gは考え方自体が変わり、全く新しいプロトコルを作るのではなく、既存の3GやWiMAX、無線LANなどを必要に応じて組み合わせるようなものになるのではないか」との見解を示した。
カーン氏はIntelが実際に現在開発しているRF CMOSチップ(1チップで5GHz/2.4GHzの両方に対応し、1チャネル当たり100MHzの帯域幅に対応する)の写真を示しつつ、ソフトウェア無線のメリットについて「IEEE802.11a/b/g/nや3G・UWB・Bluetoothなど、既存のプロトコルに幅広く対応できるだけでなく、新しいプロトコルが登場した場合にも市場への製品投入までにかかる時間を短くできるし、異なるプロトコル間のコーディネーションも容易になる」と語った。
カーン氏は会場との質疑応答において「現在各国で割り当てられている電波帯域の中で、実際に使用されている帯域はごく一部で、大半は電波が出されていない」と述べた上で「ある帯域で実際に電波が出されているかどうかを調べて、もし電波が出ていなければそこを使ってしまうといったことが考えられるのではないか」と語り、そこで臨機応変に電波帯域を利用するやり方こそが「Cognitive Radio」である、との見解を示した。カーン氏は「もちろん実現は相当先になるだろうが、既にFCC(米連邦通信委員会)ではそのような検討も行っている」と語り、電波帯域の不足が問題となることが多い昨今の動向に対する解決策としても「Cognitive Radio」が有力な案であることをアピールしていた。
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慶應義塾大学の村井純教授 |
村井氏はインテルがCentrinoの宣伝コピーとして使った言葉でもある「Unwired」を講演タイトルに選んだが、講演内容はワイヤレスブロードバンドというよりは、無線技術全般とインターネットの今後の関係に関する話題で持ち切りだった。
村井氏は「インターネットも最初は固定のメインフレーム同士をつなぐ技術に過ぎなかったものが、今やコンピュータだけじゃないいろんなものがつながるようになってきている」「5年前に『体重計がインターネットにつながる』と言ったらジョークに過ぎなかったものが、今やそのようなものが商品として登場してきている」と述べ、そのための重要な技術として無線技術が重要な地位を占めていることや、IP電話やオンラインゲームなど「これまでに考えられないような低遅延を要求するようなアプリケーションが増えてきている」ことについて解説。
そして村井氏は「Unwired」を実現するものは何も無線LANや携帯電話といった通信系のプロトコルだけに限らないとして、「例えばデジタルラジオが本格的に立ち上がって、世の中のラジオが全てデジタル化してTCP/IPをしゃべるようになったら、それだけで日本国内で3億台はデバイスが増えることになる」と指摘。このようなパラダイムシフトが今後も様々な分野で起きるだろうと予想した。
その上で村井氏は、現在各国ごとに分かれて管理されている電波帯域の割当について言及し、「今やスペクトラムはグローバルマーケットを考えなきゃいけない時代になっているが、Internetの世界では(IPアドレスの割当などについて)理想論を議論できる場があるが、電波の世界ではそういった議論の場がない」として、「電波の世界でも理想論を議論できる場がいるんじゃないか」と語った。
最後に村井氏は、日本がモバイルインターネットの分野で世界の先駆けとなれる可能性があると述べた上で「パイオニアはいろいろ失敗もするし血も出るかもしれないが、それが世界への貢献につながる」と語り、失敗を恐れずに新しい技術やサービスに挑戦していく重要性を訴えて講演を終えた。
これ以外に同セミナーでは、慶應義塾大学の中川正雄教授・笹瀬巌教授、東京工業大学の益一哉教授が、インテルとの共同研究内容について解説したが、いずれもまだ共同研究自体が今年からスタートしたばかりとのことから、具体的な研究成果についての言及はなかった。
IEEE802.11nやWiMAX・ワイヤレスUSBといった、Intelが標準化について力を入れている各種無線プロトコルの現在の状況についても報告がなされたが、基本的に新しい情報はなかった。中でもIEEE802.11nについては、TGnSyncとWWiSEという2つの有力提案の統合状況が注目されるところだが、講演に立ったインテルの庄納崇氏は「IEEEの会合がない月にも毎月会合を持って議論している」と語ったものの、統合提案自体はまだ完成に至っていないことを明らかにした。
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