【レビュー】
かねてから噂が先行し昨年のフォトキナで開発発表されたリコーのGR DIGITALがこの10月21日に発売となった。今回このGR DIGITALを実際に試用することができたので、これがいかにGR的なのかという観点から、GR1sユーザである筆者がレポートする。
リコーのGRシリーズはもともと銀塩の35mmコンパクトカメラである。いわゆる「高級コンパクトカメラ」というジャンルに属し、ポケットに入る薄型でありながら優れた画質を持ち、なおかつ質感の高いカメラであった。発売開始は今を遡ること1996年とほぼ10年前であるが、そのコンセプトは初代GR1からGR1s(1998),GR21(2000),GR1v(2001)といくつかのモデルを経て受け継がれてきた。
一方、リコーはデジタルカメラでも歴史は古い。とはいえデジカメはデジカメとして別の道を歩んできている。同社の現在のデジタルカメラのシリーズである「Caplio」の中には、製品としての質感もよく、描写性能の良い高級機も存在する。一部では「GRと名乗っちゃえばいいのに」という冗談が飛び出すほど、GRっぽい志向があったのも確かだ。しかしながらリコーはそれを良しとせず、GRのブランドはこれまでデジタルカメラに使われることはなかった。満を持して今回新シリーズのデジタルカメラとして投入されたのが銀塩GRを継承するGR DIGITALである(写真)。
GRシリーズの特徴として広角系単焦点レンズの搭載がある。この部分がGRのGRたる所以であると言えるもので、その名もGRレンズ。35mm銀塩版では焦点距離が28mmまたは21mm、F2.8というレンズが搭載されていた。
今回GR DIGITALに搭載されたレンズも"GR"の名を冠した焦点距離5.9mm、F2.4のレンズであ(写真4)る。これは搭載するCCDが1/8インチ 800万画素のため、焦点距離は35mm換算で28mmとなり、GRシリーズのデジタル版として相応しく位置づけられることになる(写真5)。この数字からおわかりのように広角に的を絞っているわけだ。
| 写真4 | 写真5 |
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"GR LENS"の名を冠したGR DIGITAL用レンズ。果たしてその描写性能は? |
こうしてGR1sのレンズと比較してみると違いは一目瞭然。撮像素子が35mmサイズではないためレンズも自ずと異なっているのだ |
GRシリーズのもともとのコンセプトは、プロないしハイアマチュアが、一眼レフのサブカメラとして使うというもの。このため高い描写性能を持つカメラでありながら、単焦点かつ広角、という思い切った割り切りがなされている。結果、GR DIRITALのターゲットも全く同じで、デジタル一眼レフに対するサブカメラの位置付けとなる高級コンパクトカメラというわけだ。
実はこのコンセプトはデジタル一眼レフユーザにとって実にありがたい。というのも、手持ちの35mmフィルム用レンズをデジタル一眼に使用している場合には、CCDサイズの関係でその画角はどうしても望遠側に寄りがちとなる。もちろん35mmフィルムサイズの撮像素子を使用しているカメラならばそのような心配はないのだが、現在のところ撮像素子はまだ35mmフルサイズよりも小型な物が主流である。
この状況において、いざ広角側での撮影が必要となった時に、サッと取り出して簡単に撮影でき、かつ高画質なカメラがあればと思うことは度々で、実際のところ筆者もフィルム時代には一眼レフ+GR1sをそうやって使っていた。これと全く同じことがデジタルでできる、というのが今回のGR DIGITALというわけなのである。
GR DIGITALの特徴のひとつとして、発売時から用意される様々なオプションがある。もっとも顕著なのがワイドコンバータで、これを装着すると35mm換算で焦点距離が21mm相当という超広角になる。銀塩のGRではモデルによって21mmのものがあったが、GR DIGITALでは本体はそのままでワイドコンバータにより対応するようだ。なお、このコンバータを装着するには別売のアダプタが必要となる。
もうひとつユニークなのが光学ファインダだ。これはGR DIGITAL本体のアクセサリーシューに装着して使うものである。というのもGR DIGTAL本体そのものには光学ファインダが搭載されていないのである。これはすでに賛否両論あり、議論となっているところだが、銀塩GRのユーザとして言わせていただくと、光学ファインダを本体に内蔵させてほしかった。液晶による撮影はそれほど不便を感じないとはいうものの、やはり直射日光下では見えづらいし、何よりカメラのホールド感が悪い。さっと取り出して使うこととバッテリーの持ちを考えると光学ファインダは付けてほしかったのである。オプションでファインダを装着してしまうと、せっかくの軽快さが失われてしまうので残念だ(写真6)。
| 写真6 | 写真7 | ![]() |
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ファインダおよびワイドコンバータを装着したところ。これがGR?と思うようなスタイルになってしまう。かなりのギミック感が漂うがマニア心をくすぐるポイントか |
:GR DIGITAではアクセサリーシューが設けられた。外部ストロボ連動にも使えるため撮影のバリエーションが広がる |
| 写真8 | ![]() |
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電池およびメディアコンパートメント部分。上側に見えるのが専用のリチウムイオン電池で、下がSDメモリーカード。いざという時のために単4電池(2本)対応となっているのがうれしい。ただし単4アルカリ電池使用時では撮影可能枚数は約30枚程度となる |
しかしながらアクセサリーシューを設けた点は高く評価したい。このアクセサリーシュー、単にファインダなどを装着するためでなく、外部ストロボ連動機能もちゃんとついているのである。このためホットシューアダプタを使うことで、外部の大型ストロボを連動させられるため重宝する。これは銀塩GRには無かった大きな特長と言えるだろう。外部ストロボを使うことでライティングのバリエーションが格段に増えるため、ホットシューは実にありがたいのである(写真7)。
なお記録メディアは内蔵メモリ26MBおよびSDメモリーカード/MMC、電源は専用リチウムイオン電池または単4型アルカリ/ニッケル水素/オキシライド電池となる(写真8)。
デジカメを評価する場合、細かな性能やベンチマーク的評価というのもある側面では重要だが、「使えるかどうか?」が最も重要であると筆者は考える。そこで、何も考えず、とりあえず撮影に持ち出してみることにした。ここで言う「使えるか」の基準は、撮影時に妙なストレスを感じず、誤操作することなく撮影でき、また撮影に専念できるかどうか、である。
GR1sよりも若干コンパクトなため携帯性は抜群。今回はGR1sのウェストポーチに入れて持ち運んだが、何ら苦になることもないし、重いと感じることもない。GRシリーズで特徴的だった「縦吊」のストラップ穴もGR DIGITALには用意されているので首から下げるのも容易で、かつ使いやすい。このあたりはGRの良さを反映していると言える。
コンパクトデジタルカメラならどれでもそうだろう、と思わないでほしい。GR DIGITALはこれまでの銀塩GRシリーズ同様に、薄型ながら適度なグリップを設けることでホールド感が良く、マグネシウム合金製ボディの質感も良いため手にしっくりくるのである。GR DIGITALはこれらの点でまずは「GR的」だと言ってよいだろう。ただし、最初に面くらうのはファインダが無い点である。ついクセで覗こうとしてしまうのである。
まずオートモードで何も考えずに撮影する場合において、その軽快さはGRそのもの。電源オンからの立ち上がりも早いし、ピント合わせや撮影までのタイムラグ、撮影間隔などは文句なく良いできである。もちろん、これでもまだ物足りないと感じるユーザもいるだろうが、このコンパクトさでこの軽快さに対しては、筆者は十分であると評価する。
オートモード以外ではプログラムオート、絞り優先、マニュアルモードが使えるが、この部分の操作系は、これまでの銀塩GRとは大きく異なる。銀塩GRでは本体右上に設けられたダイアルがプログラムオートおよびマニュアル絞り(絞り優先AE)設定ダイアルだったが、GR DIGITALではこのダイアルはモード(シーン)切替用になっている(写真9)。マニュアルモードを持つため、絞りおよびシャッター速度ダイアルが必要になるが、これは本体背面のADJ.ダイアル(写真10)および前面のダイアル(写真11)で行う。このあたりの操作系は最近のデジカメ、とりわけデジタル一眼レフで一般化している2ダイアル方式になっている。マニュアルモードを搭載したことと、2ダイアル式にしたことは銀塩GRにはない特徴で、かつより表現の幅を広げることができるだけに、ありがたい機能だ。
| 写真9 | 写真10 | 写真11 | ![]() |
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上がGR DIGITAL、下がGR1sのダイアル部分。GR DIGITALではモード切替ダイアルとなっている。誤操作防止用にロックボタンが設けられるなど細かな配慮もなされている |
背面操作部。ダイアル以外に上下ボタンがあるが露出補正を用いる場合はこれで行う |
本体上面からみたの操作部。先ほどの写真(009)でもわかるようにシャッターボタンの形状は銀塩GRと同じになっている |
屋外の撮影において厳しいのは液晶モニター。大型で高輝度のものが搭載されているとは言え、やはり直射日光下では見えづらい。実際に使ってみて光学ファインダがあれば痛感するシーンである
以上のように撮影そのものに関してはこれといって大きなストレスもなく、また軽快に動くGR DIGITALは十分な性能を備えているといえる。さっと取り出してさっと撮影というこの感覚は銀塩GRの良さが十分に生かされた結果だと捉えたい。また銀塩GRシリーズは軽快でありながら高画質という特徴もあったのだが、これがGR DIGITALでどうであるかについては、次のセクションで述べることにしよう。
一点、注意してほしい所があるとすれば、それはこのGR DIGITALは決して初心者向けでもなければ万能なデジタルカメラでもない点。これまでの銀塩GRシリーズを知らずに初めてこのGR DIGITALを手にするユーザは、かなり面くらうだろう。それはひとえに35mm版換算時で焦点距離28mmという広角レンズにある。一般的なデジカメユーザならばズーム機能に慣れているため「寄って」撮影したい場合にはすぐにズームを使ってしまうはずだ。ところが単焦点のGRではそのようなことは当然できない(4倍のデジタルズーム機能は搭載されている。800万画素のCCDを採用しているためデジタルズームでもある程度は役に立つ)。ズームがなければ自分が「寄れば」よいのだが、28mmというレンズは相当に寄らないと大きく撮影できないほど広角である。広角レンズの特性を知らなければ使いにくいデジカメとなってしまうだけなので、最初の一台としてこのGR DIGITALはお勧めできない。やはりセカンド/サブカメラとしての位置付けで購入するのが良い。ただし、広角でのみ作品を撮影するなど、目的がはっきりしている場合には、このGRはお勧めの一台となるであろう。加えて旅行などの記録のように、広角レンズが威力を発揮する場合にもお勧め。イザという時は単4アルカリ電池が使えるのもポイントだ。
GR DIGITALでやや寂しい気がするのは、GR特有のピント合わせ音とシャッター音、フィルム巻上げ音がしないことだ。デジタルなのだから余計な音がしないのは当然ではあるのだが。
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