【レポート】
キヤノンが開催した同社製品・技術の展示会「Canon EXPO 2005」において、基調講演として御手洗冨士夫社長が登壇した。御手洗社長は、社長就任以降の経営改革とその成果、今後の取り組みなどについて語った。次期経団連会長への就任が内定した御手洗社長だけに、講演の内容は自社の経営戦略から、日本型経営、今後日本経済が進むべき道まで、多彩な内容となっていた。
御手洗社長が社長に就任したのが1995年。当時のキヤノンは、連結売上高が2兆900億円、借入金が8,400億円、有利子負債依存度が33.6%と、経営的に脆弱だった。これを解消するために御手洗社長は、「2つの意識改革を行った」。それが部分最適から、企業の全体を見る全体最適へ、売り上げ優先から利益優先への転換だ。バランスシートを重視し、PC事業など7つの不採算事業から撤退したことで、「734億円の売り上げを失ったが、260~300億円の赤字を解消した」。
さらに従来のベルトコンベア方式をやめ、セル方式を導入する生産改革も行い、世界にある工場で合計20km以上のベルトコンベアが排除されたという。セル生産の導入で人員も減り、今年までに4万5千人相当の合理化が実現できたほか、100万平方mの空きスペースの確保、外部倉庫の返却など、多くのメリットが生まれたという。また、設計品質や開発スピードの向上を狙い、全社への3D CADを導入、開発期間が18カ月から12カ月になった。こうした改革により、「常に競争力の向上を狙った」。
こうしたコストダウンと新製品開発スピードの向上により、連結売上高に占める原価率は、95年の61.3%が2004年には50.6%に減少、売上高に占める新製品の比率は同44.1%から同64.8%に向上した。
さらに連結売上高は同2兆円強から同約3.5兆円へ、連結の税引き前収益は同1千億円から同5千億円に拡大し、「利益体質に転換した」。また株主資本比率が同35.1%から同61.6%、有利子負債依存度は33.6%から1.1%に改善、さらに時価総額は同1.56兆円から同5.46兆円に、国内企業での順位は43位から9位へと向上した。これらの成果により「21世紀の飛躍の足がかりを築けた」。
キヤノンの改革は、96年からのフェーズI、2001年からのフェーズIIとすすみ、2006年からはフェーズIIIが開始される。このフェーズIIIでは「蓄えた力を十二分に使う」ことで、さらなる飛躍を目指す。
世界経済は現在、「2つの大きな潮流がある」。それがグローバル化とブロードバンド化で、今後はこれがさらに進展すると御手洗社長。グローバル化では、世界的な経済規模の拡大を指摘。その中でも、いわゆるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)という「世界人口の4割を占め、GDPでは8%」のこれらの国が、21世紀中にG7全体を上回る経済規模になる、と指摘。さらに中国は、安価で豊富な労働力を背景に世界の工場となっているが、今後日本を抜いて世界3位の経済大国になり、年8~9%の成長を持続すると予測する。
ブロードバンド化の進展により、動画を駆使したより高度なコミュニケーションが実現し、多元的なテレビ会議が実用化されることが期待されるなど、デジタルイメージングがさらに重要視される。同社は、次期Windows OS「Windows Vista」のカラーマネージメント技術に共同で取り組んでいるが、同社では、20世紀から21世紀への節目に、自社製品のデジタル化を一気に進めており、今後は、「デジタル製品同士を連携させ、全く新しい製品を出したい」と目標を述べる。「グローバル化とブロードバンド化という2つの波は、またとないチャンス」。
ブロードバンド化の波は、動画へのニーズを高め、イメージング機器の中軸にディスプレイが据えられる、と御手洗社長。この分野で同社は「SED」の開発を東芝と進めており、86年から開発を続けてきたこのディスプレイも、ようやく来年には、まずはテレビとして商品化する。
出力の中心となるテレビに加え、デジタルカメラ事業も同社の中心だ。この市場は2008年には全世界で1億台規模になり、そのうちの25%以上のシェアを確保することを狙う。同じく主軸のプリンタ事業も、複合機のラインナップの強化、FINEヘッド、インク、メディアをさらに徹底的に強化していく。デジタルビデオカメラでは、HD対応のカメラを投入する。
今後の事業戦略の土台となるのが研究開発だ。2004年は、連結売り上げの8%・2,750億円を研究開発費として投入していたが、これを2010年には5,000億円規模まで拡大する。そのうち、2,000億円を基礎研究にあてることで、さらなる成長を目指していく。
キヤノンのこだわりは、徹底した国内開発・製造・生産だ。内製化を進めることでコストダウンを図りつつ、海外への技術の流出や漏えいを防ぐことを重視する。
これらの戦略によりフェーズIIIでの最終目標は、フォーチュン誌らによる世界のトップ100社に食い込むことだ。2010年には、経営指標のすべてが100社以内にはいることを目指し、その結果として「グローバルエクセレントカンパニー」になることを目標とする。
それを実現する経営について御手洗社長は、「合理化の追求」を挙げる。合理化というと、米国型経営が思い起こされるが、御手洗社長は米型経営を国内に持ってきてもだめだという。その国の文化や風土、伝統をふまえた合理化でないと意味がなく、米型経営は米国の文化にあった手法のため、日本にはなじまない。日本型経営の象徴ともいえる終身雇用制度も、「まだ日本社会に収まりがいい。日本社会は人材の流動性が低く、終身雇用制も合理性がある」という。
「経営者は、現在の社会状況をふまえて、状況を冷静に分析、時代にあった経営をすべき」と御手洗社長。技術開発には長い年月がかかり、終身雇用制度の下で、社員は安心して開発ができる、社員を育てる教育の効果がある、といった終身雇用制度のメリットを挙げつつ、御手洗社長は、「処遇が年功序列だと、緊張感がなくなる」とデメリットも挙げる。
さらに「今は学校から非競争で横並びだ。農業やサービス事業でも競争が必要。これからも成長を続け、豊かな生活をするためには、社会の価値観を変える必要がある」と強調。現在の日本の価値観は「平等主義」であり、これを「競争原理に基づく公平」へと転換する必要性を訴える。
さらに合理性について御手洗氏は、「もの作りの合理性」についても言及。国内では、今後の少子高齢化による労働者不足が見込まれているが、資源が乏しく、輸出に頼る日本は、製造業は今後も主力事業の1つであり続けるが、この労働力不足で「転換期にきている」。現在、生産拠点を海外、特に中国へ移転することが大きな流れとなっているが、今後中国が人民元を切り上げ、コストメリットがなくなったとき、今まで作り上げてきた中国の工場を、また移転できるか。「それは現実的ではない」と御手洗社長は述べ、中国は国内向けの生産拠点ではなく、現地生産拠点にする必要がある、という。
では、国内向けの生産はどうするのか。海外での生産以外に、別の解決方法がある、と御手洗社長。「人件費の割合を下げるのが勝負所。ロボットの導入は、日本ならではの技術。国を挙げて生産技術を強化すべき」と語る。「1企業の努力で変えられるものではないが、先陣を切って挑戦したい」。
| SEDテレビで見る写真、笑顔を逃さないカメラ - キヤノンの新技術 [2005/10/28] |
| PC/プリンタと無線で接続/連携するデジタルカメラ"IXY DIGITAL WIRELESS" [2005/10/26] |
| キヤノン、PIXUSシリーズをリニューアル - さらなる進化を目指し7機種発表 [2005/9/28] |
| Microsoft、キヤノンと共同開発の色情報管理システムをWindows Vistaに採用 [2005/9/14] |
| 千葉工大 東京スカイツリータウンキャンパスがオープン! - 新型ロボも登場 [19:00 5/23] |
| 産総研、変性タンパク質の活性を回復させる有機ナノチューブゲルを開発 [18:30 5/23] |
| NIMS、空気中の物質を感知して発光するフィルムを開発 [18:29 5/23] |
| 日本NI、最大6.6GHzでRF信号ルーティングが可能なスイッチモジュールを発表 [18:26 5/23] |
| TI、SPICEモデル付きのSAR ADCを発表 [18:24 5/23] |
|
白か黒か? 『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ』、7月12日放送 [00:47 5/24] ホビー |
|
TVアニメ『Fate/Zero』、第21話「双輪の騎士」の先行場面カットを紹介 [00:16 5/24] ホビー |
|
アニメ「夏目友人帳」展覧会の開催決定、主題歌集発売で [00:00 5/24] ホビー |
|
[ポケットモンスター]人気投票で放送作品を決定 異例の試み [00:00 5/24] ホビー |
|
【コラム】Windowsスマートチューニング 第188回 Vista/7編: タスクスケジューラでリマインダー通知を行う [23:07 5/23] パソコン |
4つの診断で、自分の適性を見つめなおそう!
働くこと・挑戦し続けることへの思いを綴ったインタビュー
あなたにピッタリのアドバイスを読むことができます。
転職に必要な情報が収集できます
企業からアプローチのメッセージが届きます。