【レポート】
キヤノンは、自社の製品や技術を紹介する展示会「Canon EXPO 2005」を開催した。前回開催は2000年 -- つまり、5年に1度という長期スパンで開催されている展示会だ。コンシューマ向けからビジネス向け、医療向けなど、同社製品が一堂に会した大規模な展示会で、既存製品だけでなく、現在研究開発中の技術も出展、同社の未来像を伺わせる展示会となっている。
展示されていた中での注目は、次世代の新ディスプレイパネルといわれる「SED」だ。東芝と共同開発されるこのパネルは、高輝度、高い色再現性、高速な応答性、低消費電力などのメリットを備える次世代パネルで、これを使ったテレビを、キヤノンらは「第3の薄型テレビ」として、来年以降製品を投入していく(ちなみに、3LCDテレビ陣営は、3LCDテレビを「第3」、SEDテレビを「第4の薄型テレビ」と呼んでいる)。
今回出展されていたのは、36型の薄型テレビ。CEATEC JAPAN 2005などでもSED陣営はこの36型テレビを出展しており、いわばおなじみのものだが、展示の仕方でかなり近づけたため、じっくりと画質などを確認できた。
SEDは来年には登場する見込みだが、それから更に先を見据えた製品のデモが会場では行われていた。出展されていたソリューションは、SEDテレビを中心としていかに写真やムービーを簡単に、便利に楽しむか、というもの。
閲覧には、「フューチャーフォトアルバム」を利用、独特のインタフェースで日付を選択して写真を探せるほか、被写体を自動で認識し、被写体ごとに写真を閲覧できたり、被写体の顔を自動で判別して、顔をズーミングしながらスライドショーを表示したり、といった機能を備える。
データはネットワーク経由で読み出し、家庭用ゲーム機のコントローラーのようなリモコンで操作することを想定、大画面のSEDテレビによる閲覧環境を実現する。
プリンタ方面では、デジタルテレビのデータ放送から受信したデータを印刷する仕組みを備えた「デジタルTVプリンター」を展示。これは放送波と同時にXHTMLで送られるデータを印刷するプリンタで、このデータは通常の番組のようにテレビ画面に表示されないもので、放送している番組内容のより詳細な情報が提供される。現在はまだこのデータ送信は行われていないというが、今後業界での対応が進められていく計画だという。
プリンタではこのほか、来年上期に発売予定という、プロ・ハイアマ向けのA3+、半切りサイズまで対応するインクジェットプリンタが参考出展されていた。最高解像度は4800dpiで、アート紙などへの印刷にも対応。何よりも、10色顔料インクを搭載した点が新しい。
今まで、同社製品ではこのクラスで顔料インクをサポートした製品はなく、大判プリンタのみだった。しかしアート作品など、展示目的のプリントでの保存性などから顔色インクの要望が高く、今回製品化を目指したそうだ。インクタンクなど、その詳細は明らかにされなかったが、価格は9万円前後を予定しているという。
デジタルカメラ関連では、燃料電池を使ったデモを出展。同社は10月に燃料電池への参入を発表したばかりだが、大型化しがちな開発中の燃料電池にあって、すでにデジタルカメラ内に入るレベルの小型化を実現している。
この燃料電池は、酸素と組み合わせて電気を作り出す水素を、カートリッジから注入する交換式のもので、デモ展示されていたものは、電池の中央が分かれ、片方には酸素、もう片方には水素を入れ、水素のカートリッジはなくなったら交換することができるというもの。
実際に、デジタル一眼レフカメラのEOS Kiss Digital Nと、コンパクトデジタルカメラのPowerShot G6に燃料電池を入れて駆動させていた。この2つのカメラ(製品)に使われているリチウムイオン電池と同じ容量を実現している、ということで、現時点ですでに燃料電池とリチウムイオン電池で同じ枚数の撮影が可能だそうだ。ただ、同じ枚数がとれるだけでは燃料電池のメリットは薄く、今後さらに研究開発を続け、高容量化を図っていきたい考えだ。
同様にデジタルカメラ向けの有機ELディスプレイもデモ。今回はデジタル一眼レフカメラ(きょう体はEOS 5D)を使い、実際に有機ELを搭載した。有機ELは高精細で明るく、色再現性も高く、さらに広視野角、高速応答、低温動作などメリットが多い。今回搭載したのは2.4型・320×240ドット・167ppiのモニタで、輝度は300cd/平方m、コントラスト比は500:1、NTSC比で70%の色再現域を備えているそうだ。
現時点では寿命など、まだ解決すべき課題はあるが、今後順次解決を図っていく考え。今回のEXPOの基調講演で御手洗冨士夫社長は、キヤノンは製品開発の内製化を進めていると語っており、こうした電池、液晶を自社でまかなうことで調達コストの削減も狙っている。
研究段階の技術としては、顔検知技術と、それを応用した笑顔検出、まばたき撮影防止といった技術を展示していた。
顔検知は、目、鼻、口の位置などを元に人間の顔のパターンを抽出、検知する技術。集合写真のような複数の顔が並んでいてもそれぞれの顔を検知可能で、表情や顔の造形による影響は少なく、高速な検知が可能だという。
これをベースにしたのが笑顔検出。顔検知技術で人間の顔にピントを合わせ、その人が笑顔になった瞬間にシャッターを切る、というもので、キヤノンオリジナルのアルゴリズムを使うことで笑顔を判定、高速に検知できるそうだ。シャッターチャンスを逃さず、笑顔になったときに自動で撮影することが可能になる。
まばたき撮影防止は、笑顔検出と同様に顔検知技術をベースとし、被写体がまばたきをしている間はシャッターが切れず、目を開いているときだけシャッターが切れる、というもの。こちらも独自アルゴリズムを使った高速な検知が可能だという。瞳孔と白目の部分を検出することで、まぶたを閉じているか開いているかを判断しているようで、被写体が目をつぶったところを撮影してしまう失敗を減らすことができる。
さらに、検出した顔を常に追い続ける自動追尾カメラもデモ。これも顔検知技術をベースにしており、さらに動体予測機能を搭載することで、常に人の顔を追い続けられる。基本的に顔検知技術は、2つの目・1つの鼻と口で顔を検出しているため、片方の目しか写らない構図などには効果を発揮しない。
こうした技術はまだ研究段階で、まだ実際にカメラへ応用するかどうかについては未定だというが、応用範囲の広い技術でもあり、今後の研究が楽しみではある。
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