【レポート】

WPC EXPO 2005 - 「いずれは、モノ自体が危険知らせてくれる」坂村教授

    大川淳  [2005/10/27]

    東京・有明の東京ビッグサイトで開催中の、パソコン、デジタル技術の総合展示会「WPC EXPO 2005」の初日の基調講演には、東京大学大学院情報学環の坂村健教授が「実用化に進み始めたユビキタス・コンピューティング」と題して登壇、この技術は汎用性があり、応用範囲も数限りなく、インターネットと同等以上のものになりうる、との考えを示した。

    坂村健 東京大学大学院情報学環教授

    ユビキタス・コンピューティングとは一般に、ネットワークで接続されたコンピュータが社会のあらゆる局面に溶け込んでいき、いつでも、どこでも、情報やサービスを得られるとともに、コンピュータ側は状況の変動を自動的に検知し、問題があればその解決のため自律的に対応する--といったところ。坂村教授はユビキタス・コンピューティングの目的を「コンピュータが、人間の生活空間の状況を認識し、人間に意識させることなく、最適な制御を行うもの」と定義する。

    これまで、商品の認識にはバーコードが使用されていたが、これは商品の属性や製造社名などをあらわすもので、坂村教授が参画する無線ICタグの識別コードの標準化などに取り組む「ユビキタスIDセンター」の「uID」の発想とは大きく異なる。「バーコードは意味コードであって、『uID』のucodeはモノを認識するために番号を振るだけ、それが唯一無二で他のモノとは違うことをあらわす」(坂村氏)。ユビキタス・コンピューティングの目的である最適制御を行うためには、ある「モノ」と他の「モノ」、状況を厳密に区別できなければならない。ucodeはこのような「識別」の任務を担う。

    ucodeは、基本コードが128ビット長であり、38桁の数字を用いて1日に1兆個のモノに番号を割り振る作業を1兆日実行してもまだ余裕があるという。「ユビキタスIDセンター」は、「ITRON」を軸とした開発プラットフォーム「T-Engine」を推進する業界団体「T-Engineフォーラム」内に設置されている。

    ucodeの場合、「意味」はネットワークとの交信で伝えられることとなる。食品の安全性を確認しようとすれば、農作物であれば産地、生産者、出荷日時などが要因となるわけだが、畑、農薬にまでucodeを割り振り、一つ一つが固有なものと認識され、それらの意味情報はサーバーに蓄積され、他のものと取り違えられることなく、エンドユーザーが、店舗の端末、パソコン、携帯電話などを介して取り出すことができる。

    このようなしくみは、食品に特に問題がないときには、単に作物の詳細履歴がわかったり、あるいは食材の調理法を知ったりすることを実現させるに留まるが、緊急事態にこそその真価を発揮する。坂村氏は「万が一、食中毒の危険があるような場合、食べる直前に止められるかどうかが重要」と指摘、いずれは、たとえば弁当をたべようとしているとき「弁当」から電話がかかってきて、なかに入っている卵に不都合がある可能性があり食べてはいけない、と知らせてくれるようなことが実現できるという。ただし、「あらゆる人の協力がなければ、簡単にはいかない」と付け加えた。

    坂村氏は、この領域の技術は日本が先進的であることから「食品などでの安全性、安心の確保を達成するため、世界に先駆けて使うべきであり、世界に発信していくべき。10年後には、あらゆるモノにIDがついているという状況にまで完成させたい」と述べた。

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