【レポート】
P.A.Semiはサンタクララで2003年に創業されたファブレスCPUベンダーである。同社を設立したのはDEC AlphaのLead Deginerなどを務めたあと、DEC/IntelのStrongARMやSiByte SB1250の設計などに携わったDan Dobberpuhl氏で、(今回発表を行った)Keller氏はその部下だったということらしい。
さてそのP.A.Semiが今回発表したのは、PowerPC互換チップである。互換というか、IBMからは正式にアーキテクチャライセンスを受けた上で、独自にインプリメントを行ったCPUということになる。特徴的なのはそのサイズや消費電力で、1.5GHz動作で4W、2GHz動作でも7Wという徹底的な低消費電力が特徴的である(Photo10)。またこのコアを集積するためのCONEXIUMというInterconnectや、ENVOIという周辺I/Oも同時に発表された。
ではまずCPUコアについて説明したい。PA6TというこのコアはPowerPC 2.04 architecture spec(power.orgではまだ一般公開していない。現状公開されているのは2.01)相当で、つまりPowerPC 970と互換の32bit/64bitプロセッサということになる(Photo11)。しかもSuper-scalar、Out of Order完全実装、おまけにHypervisor/Virtualizationをサポートといっている。ここまで言われると普通に考えられるのは、全く独自のCPUをつくり、その上でPowerPCの仮想マシンを動かしているのではないか? ということだ。実際パイプラインを見ると、それを裏付けるような構成が見えてくる(Photo12)。先頭からFetch/Decode/Issueと続くあたりはPowerPC Nativeな構成に見えるが、9段目でIssueがMicroOp Bufferと繋がっているところが、単にOut of Orderの並び替え「だけ」を行っているようには見えない。このあたりの詳細は説明ではうまくぼかされてしまっていたが、やけにIntegerのパイプラインが短いあたりも非常に気になる。ちなみに全部が全部仮想化されているわけではないようだ。FPUやVMXのパイプラインはPowerPCのそれとかなり近く、これらはPowerPC Nativeで実装されているのではないかという気がする。
次にこれをつなぐCONEXIUMについてちょっと触れたい。CONEXIUMは要するにFSBにあたる部分で、複数のCPU/L2キャッシュを接続するものである(Photo13)。I/OはENVOIと呼ばれる機能ブロックで相互接続されるため、CONEXIUMは単にENVOIへの接続を提供するだけで、ここに直接I/Oが接続されるわけではない。そのCONEXIUMはクロスバーをベースとしたものであるが、クロスバーで相互接続されるのはデータ部だけで、アドレスバス(と恐らくコマンドバス)はシェアードになっていることだろう(Photo14)。クロスバーの目的は同時に複数のトランザクションを同時に実行するためというよりは、接続するデバイスが増えても性能を落とさないためにあるようだ。一方ENVOIはというと、複数のI/OデバイスやOffload Engineをスマートに接続するためのConfiguable I/Fである。Photo15の例でいえば、PCI Expressと10GbEのXAUI、及びGbEのSGMIIといったMAC層だけ実装すれば、PHY層はENVOIのSERDESにお任せできることになる。また、外部にOffload Engineを搭載することも容易というものだ。
既に同社は、これを組み合わせたPA6T-1361EとPA6T-1682Mという2つの製品をリリースしている。Photo16はPA6T-1682Mの構成で、なかなか強力な構成になっていることが判る。用途としては、ネットワークスイッチとかNAS/iSCSIのコントローラなどを想定しているという。また、これとは別にカスタムで、例えば1CPUの簡単なネットワーク機器(Photo17)から、消費電力100Wのお化けコントローラ(Photo18)まで自由に構成できるとしている。今は1P~2Pコアに専念するが、2007年後半から2008年には4P/8Pのコアも導入する予定としており、性能をスケーラブルに上げやすい事をアピールしていた(Photo19)。
ところで最後にちょっと性能の話であるが、2GHzコアのPA6T-1682Mの性能がSPECintで1000以上/コアと示されている。現行のPowerPC G5よりちょっと高速であり(2GHzのPowerPC 970がSPECint 2000で800程度)、このあたりがスーパースケーラやアウトオブオーダの威力ということか。ただ同社はPA6T単体というよりもCONEXIUM/ENVOIまで込みにしたSoCの形での提供をメインと考えており、そうなると主要な競合相手はFreescaleのPowerQUICCシリーズということになるだろう。このマーケット、今まではPowerQUICCの天下だったわけだが、強力なコンペティターが出現したということになるだろう。
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Photo11:特徴的なのは"Bi-endian per process"で、こんな機能が本当に要るのか?という気になる。 |
Photo12:別のプレゼンテーションではL1ロードが4clock、L2ロードが22clock、Open Pageが90clock、Close Pageが110clock、Remote L1(CONEXIUM経由で他のCPUのL1アクセス)が30clockとあった。 |
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Photo15:ENVOIの核となるのは24のSERDESで、これをどう使うかはアプリケーションで自由に構成できる。 |
Photo16:この構成で消費電力は動作時に5~13W、待機時は1W程度だそうだ。 |
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