【レポート】
第56回国際宇宙会議(IAC)福岡大会の開催にあわせ、展示会である「宇宙フェア」が今月16日から21日まで開催された(会議は翌17日から21日まで)。初日には、既報のようにライブドア社長兼CEOの堀江貴文氏が会場を訪れ、自らが開始するプロジェクトを発表。目立つカプセル型宇宙船の展示に、ブースの前で足を止める人も多かった。
宇宙フェアではそれ以外にも、各国から様々な宇宙関連の製品・サービスが展示されている。ここではまず、宇宙開発の花形であるロケットからご紹介したい。
ギャラクシーエクスプレスが開発を進めている「GXロケット」。といってもご存じない方のほうが多いと思われるが、旧NASDAからのHシリーズ、旧ISASからのM(ミュー)シリーズに続く第3のロケットとして、日本が開発している新型ロケットだ。打ち上げ能力は、高度200kmの低軌道(LEO)で約4.4tと、ちょうどH-IIAとM-Vの間に入る形になる。
同社は民間の株式会社ではあるが、石川島播磨重工業(IHI)を始めとする国内の宇宙関連企業や米Lockheed Martinなどが出資している。JAXAやNEDOも技術協力しており、"オールジャパン体制"と言って良い位置にある。GXは全長48m・直径3.3m、2段式の液体ロケットで、1段目はLockheed Martin製のAtlasロケット1段目を活用し、2段目はJAXAが新規に開発しているLNGエンジンを搭載する。LNGを燃料とするロケットエンジンは世界で初めてという。
H-IIA/M-Vのように「完全国産ロケット」とはならないが、1段目に実績のあるAtlasロケットのエンジン(推進剤はケロシンと液体酸素)を採用することで、高信頼性と低コストを狙っている。また2段目のエンジンは新規開発のものだが、LNGは沸点が比較的高い(それでも-160℃程度だが、液体水素はもっと低い-250℃程度)ため扱いやすく、しかも比重が重いので液体水素よりも燃料タンクをコンパクトにできる。「液体水素がF1(=高性能)とすると、LNGは4tトラック(=使いやすい)」(ブース担当者)というように、GXは衛星打ち上げビジネスを強く意識したロケットである。
来年度末の試験機1号機打ち上げを目処に開発が進められている。打ち上げは種子島宇宙センターの射場が使用される予定だ。
ロケットといえば、フロリダであったり種子島であったりと、暖かい地方から打ち上げるというイメージが強いが(ロシアは別として)、北海道で開発が進められているロケットがある。前述のGXロケットよりもさらに知られていないと思うが、これは道内の大学などが協力して開発しているハイブリッドロケット「CAMUI(カムイ)」。すでに推力50kgfの小型機の打ち上げに成功している。
ハイブリッドエンジンといえば米Scaled Compositesの「SpaceShipOne」も使っていたものだが、SpaceShipOneは燃料がゴム、酸化剤が亜酸化窒素という組み合わせであるのに対し、CAMUIは燃料にプラスチック、酸化剤には液体酸素を使用する。液体酸素を使う場合、通常は複雑なバルブ機構が必要となってしまうが、独自のバルブレス方式を開発したことで、大幅な小型化に成功した。無火薬式であるので、非常に安全性が高く、燃料コストも安いのが特徴という。
CAMUIロケットは、NPO北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)に参加している北海道大学、北海道工業大学、室蘭工業大学などが開発した。今後、到達高度60km級(推力400kgf、直径24cm)、同110km級(同1.5tf、40cm)と大型化を進める予定だ。11月には、赤平市の実験場で推力400kgfエンジンの公開燃焼実験が行われる予定であるので、近隣の方はぜひご覧になってみてはいかがだろうか。
ここからは海外のロケットである。ロシア・ウクライナのISC Kosmotras のブースには、同社が打ち上げサービスに用いている「Dnepr(ドニエプル)」ロケットの模型が展示されていた。旧ソ連のICBM「SS-18」を転用したもので(発射もサイロからズドン、だ)、今年8月にJAXAの光衛星間通信実験衛星「きらり」(OICETS)と小型科学衛星「れいめい」(INDEX)を打ち上げたロケット、と言えばご存じの方もいるだろう。
Dneprは3段式のロケットで、先ほどSS-18を転用したと書いたが、1段目と2段目は全くそのままのSS-18を使用する。核弾頭の代わりに衛星を搭載する3段目だけが少し異なるのだ。その特徴は、1機あたり10億円程度と言われる打ち上げコストの安さである。これは軍縮でどうせ廃棄するものを使っているわけで、新規に機体を製造しなければならないH-IIAやM-Vなどと比較するのは酷であるが、複数の衛星を搭載することも可能なので、そうするとさらにコストは安くなる。
元々ICBMということだけあり、信頼性も非常に高く、商用化後は5回の打ち上げを全て成功、1970年代からのSS-18時代を含めても、成功率は97%となっている。日本・アジアでは、住友商事が代理店を務める。
打ち上げ能力は、高度400kmのLEOで最大3t程度(軌道傾斜角によって異なる)。より増強するため、第4段となるキックステージ「Space Tug(ST)-3」の開発が進められており、これは2006年に実用化の予定。また液体エンジンのST-3に固体エンジンのST-2を追加したST-1も予定されており、月遷移軌道に550kg、火星遷移軌道に350kgを投入できる能力が見込まれている。
ニーズがあるのかどうか良く分からないが、これまでは考えられなかった月や火星までも、民間の衛星が行くことになる日もそう遠くないかもしれない。
インド宇宙研究機関(ISRO)も、新型ロケットを開発中だ。従来の「GSLV」の発展型である「GSLV MK-III」で、静止トランスファー軌道(GTO)に4tの衛星を投入できる能力を持つ。GSLVが2tだったのでその倍、日本で言えばほぼH-IIAに匹敵するクラスのロケットである。ちなみにこの"GSLV"という名称だが、"Geosynchronous Satellite Launch Vehicle"、つまり"静止衛星打ち上げロケット"を略しただけという、非常に素っ気ないことになっている。
名称は"MK-III"が付くだけだが、実態はほとんど別物と思えるほどの改良が施されている。GSLVは3段式ロケットで、燃料は1段目が固体、2段目がUDMH(非対称ジメチルヒドラジン)、3段目が液体水素、そしてUDMHの補助エンジンが4本付く。GSLV MK-IIIは2段式となり、燃料は1段目がUDMH、2段目が液体水素、そして固体ロケットブースターが2本だ。高さはGSLVの49mから、GSLV MK-IIIでは42.4mと低くなっている。
1号機の打ち上げは2008年を予定しているという。ちなみにGSLVは2001年以来、これまでに3機が打ち上げられているが、全て成功している。
また同国初となる月探査機「Chandrayaan-1」についてのパネル展示も行っていた。2007~2008年の打ち上げが予定されているもので、高度100kmの月の極軌道へ、重量590kgの探査機を送り込む。この"Chandrayaan"という名称はサンスクリット語で"月の乗り物"とのことで、これまたそのまんまの名前であるが、1号機の後にも、2号、3号と続く計画はあるそうだ。
衛星を打ち上げるロケットではないが、ドイツ航空宇宙センター(DLR)は、空力実験用の「SHEFEX」(Sharp Edge Flight Experiment)ロケットのモックアップを展示していた。その名称の通り、先端部分が平面の組み合わせで構成されているもので、大気圏再突入時の圧力や温度などのデータを取得する。
通常、再突入を行う宇宙船の表面は曲面で構成されるが、これを平面の組み合わせにしてしまえば、コストの削減が期待できる。だがその分、角張った機体は空力的な問題も出てくるので、風洞実験やシミュレーション計算のほかに、実際に飛ばして検証する必要が出てくる。このロケットはそのためのもので、再突入後に最高でマッハ8まで達し、先端の温度は1,800℃になると見込まれている。
表面の耐熱素材はカーボンファイバーとシリコンカーバイドの複合材(C/SiC)で、これは2,200℃まで耐えることができる。来週にも打ち上げられる予定ということだ。
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