【レポート】

Radio Access Networks - 固定電話と携帯電話の融合(FMC)、まずは企業分野から

    末岡洋子  [2005/10/17]

    固定電話と携帯電話の融合(Fixed-Mobile Convergence)が着実に進んでいる。最近では英British Telecom(BT)が、1台の携帯電話でGSM網と固定電話網(Bluetooth経由で呼を転送)を利用できる「BT Fusion」というFMCサービスを一部で開始し、話題となった。そのBTのFMCプロジェクトに参加している英Commilの事業開発副社長、Derek Troughton氏が、オランダ・アムステルダムで開催されたイベント「Radio Access Networks」にてFMCの現在と将来について見解を語った。

    BT Fusionでは将来、IMS、SIP(Session Initiation Protocol)、無線LANを利用し、法人分野を目指す

    まずTroughton氏は、FMCについて「単なる(固定網と無線網の)デュアルモード端末ではないし、固定から携帯への移行(Fixed to Mobile)でもない」と述べた。そして、「複数のアクセスドメインで一貫性のあるサービス配信を実現すること」と定義し、これをユーザーに意識させることなく実現することが大切だと続ける。たとえば、PCの世界ではユーザーはYahoo!、MSN、AOL、Skypeなど複数のアカウントを持ち、それぞれにログインしているが、このような状況は好ましいとはいえない、とTroughton氏。

    だが、FMCのモデルはまだ明確になっていない。通信を取り巻く環境を見てみると、携帯電話の加入者数は世界10億人を上回ったが、電話の呼の7割はいまだに固定網から発信されているといわれている。ブロードバンド加入者数は世界1300万世帯に達しており、無線LANも着実に浸透している。このような環境の中、固定網と無線網が融合するとどのような世界になるのかはまだ分からない。サービスも見えないし、誰がプレイヤーとなるのかも見えていない。BTの例でも分かるように、既存の固定網事業者が進出を狙っているし、携帯オペレータ、ケーブル事業者、無線LANアクセスポイント事業者の進出も考えられる。

    FMCを実現するためには、端末の対応も必要だ。BTのFusionでは米Motorolaの端末が採用されたが、2006年には20機種ほどの端末が出てくるのではないか、とTroughton氏は予想している。技術的には、IP網をベースに無線網でマルチメディアサービスを実現するIMS(IP-based Multimedia Subsystem)もFMCを加速しそうだ。

    このような現状を踏まえながら、「まずFMCの導入が進むのは企業分野だろう」とTroughton氏は見ている。コンシューマーと企業ではニーズと優先順位が異なるが、企業は現在モバイル化が進行しつつあることから、FMCを受け入れる土壌が形成されつつある。

    しかし、企業分野と一口に言っても社屋内だけではない。本社、支社、公共の交通機関、ホテル、空港、家庭、ビジネスユーザーはあらゆるところで通信技術を利用する。ユーザーのニーズは、場所、時間、端末を問わず、同じPIM、アドレス帳などのアプリケーションを使いたい、というものだが、IT管理者にとって、PDAや携帯電話が管理対象となることは、負担増を意味する。サービスプロバイダは、システムにさらなる複雑性とコストを加えることなく、モビリティのメリットを実現する必要がある。

    FMCはエンタープライズモバイルの答えとなるか?「もちろん、イエスだ」とTroughton氏。モバイル化、IP化、ブロードバンド化の流れは避けられず、固定網、無線網、それぞれのプロバイダは手を組むことになるが、どのプロバイダにとっても法人は未開拓分野。どのように協業するかが重要となる。市場の流れだからといやいや手を組んだのでは、顧客にメリットやバリューをもたらすことはできない、とTroughton氏は続ける。

    Troughton氏は、「まずはビジネスモデルの確立が必要」と述べる。バリューチェーンができあがり、生産性の改善、コスト削減などのメリットをきちんと測定し、示すことが必要となる。「(ある分野のニーズを満たす)ソリューションは生まれつつあるが、市場はまだ分断されており、ユーザーのニーズと完全に一致していない」とTroughton氏。また、課金、端末、ネットワークなどの技術的課題もある。なお、免許などに関わる法規制もまだ定まっていないが、法規制が定まることは、FMCの将来をある程度方向付けるだろうと見ている。

    このイベントで別のセッションを行ったBTの担当者によると、BT Fusionは来年以降サービスを本格化し、Bluetoothだけではなく、無線LAN経由で呼を転送する。法人分野もターゲット顧客として見ているという。

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