【レポート】

LinuxWorld Conference & Expo 2005 - Alan Cox氏、デスクトップLinuxを展望する

    末岡洋子  [2005/10/07]

    「ユーザーは、Macの方がインタフェースは優れていると感じつつ、Windowsが使いやすいと言う。そんなものなのだ」とAlan Cox氏。Windowsライクであるという特徴は、デスクトップLinuxにとってプラス要素になると見る

    英・ロンドンで10月5日から2日間、Linuxのイベント「LinuxWorld Expo & Conference」が開催された。イベントで大きなスポットが当たったテーマの1つが、デスクトップLinuxだ。初日の5日、Linuxカーネル開発者として知られる米Red Hat フェローのAlan Cox氏がセッションに登場、初期段階にあるデスクトップLinux市場について展望した。

    KDE対GNOMEがもたらした成果

    Cox氏はまず、デスクトップLinuxの短い歴史に触れた。1996年にMatthias Ettrich氏が初のエンドユーザー向けデスクトップLinuxプロジェクトとしてKDEを開始し、このKDEに触発される形でGNOMEが1997年に始まったといわれている。この2つのデスクトップ環境プロジェクトは、設計などの技術面、どちらが自由(フリー)かなどの思想面で対立しており、「支持派は、自分の応援するチームを信じるサッカーファンのようなものだ(笑)」とCox氏は形容する。技術ユーザーの一般的意見として、「GNOMEは外見が良く、ユーザーを何もできない人のように扱う使いやすさが特徴。KDEは、Windowsに近いが設定が難しい」と分析する。

    KDE/GNOMEの両陣営が最も熱くなるのが、どちらの方が人気があるのか? というテーマだ。だが、これに関しても信頼できる結果はない。「欧州はどちらかというとKDE派が多いことから、欧州連合の調査ではKDEが多かったが、DebianはGNOMEを使うことが多いようだし、出版社O'Reilleyのデータでも結論は出ていない」とCox氏は苦笑いした。

    だが、両者間の議論が現在のFreedesktop.orgの結成や互換性実現という結果を生んだ。Cox氏は、「それぞれ異なるユーザー層を獲得しており、(無駄な戦いではなく)総じて健康な方向に導いていると思う」とコメントする。両陣営が唯一一致している点として、「自分のOSにはリソースがたくさんあるが、安定性は十分なレベルではないと思っている」と付け加えた。

    しかし、デスクトップLinuxは技術者だけがターゲットではない。エンドユーザーという最大の難関を突破しなければならない。Cox氏は、「われわれとエンドユーザー(非技術者)の間には、大きな差があることが多い」と警告する。

    エンドユーザが実際の使用に至らない、その理由は?

    現在、非技術ユーザーによるデスクトップLinuxの受け入れが少しずつ始まっている。ITコンサルタントによると、企業IT部門のLinuxへの所感として、

    1. デスクトップLinuxそのものは十分なレベルに達しているが、アプリケーション(特に、FirefoxとOpenOffice.org)が重要
    2. Windowsとの類似性
    という。克服・改善点としては、
    1. Windowsユーザーでもトレーニングなしで使える容易さ
    2. 中央管理機能の実現
    3. 容易なアップデート
    4. TCOなど各種コスト削減
    5. ホテルや学校などでの利用を想定した閉鎖モードの実現
    の5点が挙げられるという。

    実際、コスト削減などのメリットを部門トップに説明すると好意的な姿勢を示すが、なかなかシステムへの実装には至らないのが現状。Cox氏は、実装を阻害している要因として、まず、大規模なLinux実装を手がけることができる専門家の不足を挙げた。また、フォーマットの互換性、OpenOffice.orgがMicroSoft Officeに完全に追いついていないことなども、企業IT担当者の決断に影響を与えているという。「OpenOfficeのスプレッドシートは貧弱すぎる」とCox氏。

    さらに、Cox氏はデスクトップLinux実装が進まない「隠れた理由」として、「Windows管理者がLinux実装を妨害しているという意見がある」とも指摘した。

    だが、これらはLinuxそのものの問題ではない。「デスクトップLinuxそのものは十部なレベルに達している。企業にとって重要なのはアプリケーションだが、ここでもおもしろいプロジェクトが次々と生まれている」とCox氏は楽観する。そして、「なにより、短期間でここまで達したことは、驚きに値する」と述べた。また、サーバと同様、ウイルスに関係したセキュリティ問題も、現時点では無縁だ。

    このように、デスクトップLinuxは順調に発展しており、今後も躍進を遂げそうだ。かぎを握るのは、「TCO、信頼性、親しみやすさ」とCox氏。Cox氏は、デスクトップLinuxは、コールセンターやホテルなどの業界や用途を特化した部分から浸透し、「最終的にはWindowsの対抗勢力となるだろう」と見ている。アプリケーションは重要で、ドキュメンテーション不足の解消も急がれる。中でもアプリケーションに関しては、Microsoft OfficeのLinuxへの移植は実現するかどうかわからないが、なんらかのプラグインツールが出てくるかもしれないと見ている。気になるのがセキュリティだが、「先行者の経験を見て学んでいる。いまの(Windowsの)ような状態にならないことを祈りたいし、SELinux(Security-Enhanced Linux)など、そのための技術も出てきている」とコメントした。

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