【レポート】

8輪電気自動車「Eliica」プロジェクト

1 Eliicaプロジェクトとは

    平岡伸二  [2005/09/28]

    8輪電気自動車「Eliica」をご存じの方は多いだろう。一般には、電気自動車、8輪駆動、片山右京氏による最高速チャレンジ、研究目的などのイメージを持っているかも知れないが、実際は慶応義塾大学と参加企業による「電気自動車による環境問題の解決」をテーマとしたプロジェクトから生まれた車だ。

    8輪電気自動車「Eliica」のフロントビュー(右)とリヤビュー(左)

    Eliicaとは、「Electric Li-ion Battery Car」の略で、リチウムイオン電池を電力源とし、環境に優しく高性能を兼ね備えた電気自動車のこと。その特徴として1回の充電での航続距離の長距離化と短時間充電が可能なことなどがあげられる。今や100円で買えるガソリンは1リッターに満たないが、Eliicaは100円の電気代で約100kmも走行可能なのだ。また、回生ブレーキ(減速時に車輪がモーターを駆動することで発電する仕組み)により、エネルギーを電気として回収できるため、充電の必要性はおのずと低い。現在、1号車は400km/hを目標とする最高速挑戦車、2号車は高加速性能挑戦車として開発を行い、安全性の検証、乗用車としての運動性能の評価など、実用化に向けて研究開発が行われている。

    Eliicaプロジェクトとは

    地球温暖化の原因といわれるCO2のうち、20%はガソリンや軽油などを燃料とする自動車・内燃機関から排出されていると言われている。昨今、内燃機関+モーターのハイブリッド車も少しずつ普及してきているし、各社様々な方法で環境性能の改善への動きが見られるものの、抜本的な解決にはまだ多くの課題を残している。そこで、排気ガスも水も出さない「電気自動車を実用化して一般に普及させることによって環境問題の抜本的な解決を図ろう」というのがEliicaプロジェクトなのだ。

    発端は、1983年から電気自動車の開発をはじめ、2001年までに7台を製作していた慶応義塾大学の清水教授と、当時は三井住友銀リース社長であった現吉田教授が、清水教授製作の電気自動車「KAZ」に試乗した際、その抜群の加速力と静粛性に感動したことに始まるという。そして世界の環境問題解決の視点から、吉田教授が清水教授の電気自動車実用化プロジェクトを支えていくことを決意したのだという。ビジネスに精通した吉田教授と日本の電気自動車の第一人者である清水教授とが出会い、究極の環境性能を備えたエコカーの実用化を目標としたEliicaプロジェクトが発足した。

    Eliicaプロジェクトの体制は、プロジェクト統括責任者が慶応義塾大学 政策・メディア研究科 吉田博一教授、技術総括責任者が同・環境情報学部 清水浩教授。それに大学の技術スタッフ8名、総務スタッフ5名、大学院生約10名、学部学生約50名の総勢約70名で構成される。車体コンセプトの決定、仕様、デザインはすべて慶応義塾大学で行い、車体製作は慶応義塾大学と協賛企業との合同で行っている。プロジェクトは国の予算に頼らず、環境問題の抜本的解決に対する研究・取り組みに賛同する企業群で構成される。慶応義塾大学を核に、エネサーブ、ダイワハウス工業をはじめとした30社以上の民間企業のバックアップを得て展開している大型産学共同プロジェクトである。

    大型リチウムイオン電池の普及低価格化のビジネスモデルを目指す

    Eliicaが更なる進化を遂げるには、大型リチウムイオン電池の低価格化が必須となる。リチウムイオン電池自体は様々な用途で様々な仕様のものが普及しているが、自動車用など、特殊な用途の大型リチウムイオン電池となると、特注するか小型品を大量に使用するしかない。大型電池自体の需要は、病院や通信システム、ビルなどをはじめ様々なところで使用されており、需要自体は多いものの、それらは特注品であったり、数で仕様に合わせていることが多いのが現状なのだ。したがって、電気自動車の実用化、普及には大型リチウムイオン電池の低価格化が必須であり、そのためには民生利用による大量普及が必要なのだ。

    このような状況により、Eliicaプロジェクトの参加企業の中で更なる環境エネルギー問題への対応のための研究会が発足、その活動からも大型リチウムイオン電池の有用性が明らかになった。そうなると各企業とも大型リチウムイオン電池ビジネスの機運が高まり、需要の確定、低価格化、ビジネスモデルの策定、などを掲げた「L^2プロジェクト」を立ち上げるに至った。Eliicaプロジェクトから新たに環境問題に取り組むプロジェクトが発足したわけである。

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