【レポート】
富士通研究所は16日、光通信分野における取り組みに関して、プレス向けに説明会を開催した。FTTHの普及など、光通信も身近なものになりつつあるが、今回話題となったのは都市間や都市内などでのバックボーン系の研究開発について。通信部門の責任者である津田俊隆・同社常務取締役が出席し、最新の研究成果や産学連携などについて説明を行った。
富士通は、光通信関連を得意としている企業だ。高速大容量という特性から、光通信は都市間のバックボーン回線などに多く導入されているが、ある調査によると、同社の世界市場におけるシェアは12.8%でトップだったという(2005年Q1)。技術開発もアグレッシブに行っており、1988年にはSONET/SDHを世界で初めて商用化、2000年には1.7Tbpsという超高速なWDM(波長分割多重)システムも導入している。
年々高速化されるネットワークであるが、トラフィックの増加量はそれ以上に大きい。年率2~3倍程度で伸びているという調査結果があり、これは半導体における「ムーアの法則」を上回る勢い。このとき問題となるのは、それを処理するためのスイッチやルータの規模で、トラフィック増加量が年率2倍であった場合でも、消費電力は2010年には現在の3倍、増加量が年率3倍になると同23倍にもなると試算。オペレータの運用コストを圧迫することになり、「とてもビジネスモデルとしては成り立たない」(津田常務)という。
消費電力や設置面積の問題を解決するため、同社が提唱するのが「バーチャルルータアーキテクチャ」である。電気信号のネットワークを使う限り、パケットが経路のスイッチを通過するたびに電力を消費し、その都度遅延も生じてしまうが、光のまま信号を処理する光ネットワークの活用により、この部分の消費電力を大幅に抑えることが可能になる。入口と出口をダイレクトな光パスで結ぶ、いわばネットワーク全体を1つのルータのように機能させるもので、IPの処理などはエッジ部分だけで行い、コア網はシンプルなものになるという。
同社はこれまで、大容量化(波長多重化)や長距離化(光再生中継)に加え、ネットワーク化、つまり光を制御するためのデバイス開発にも注力してきた。電気信号で光を制御できる「チューナブル」なデバイスとして、光の経路を切り替えられる3D-MEMS光スイッチ、任意の波長を選択して取り出せる光波長可変フィルタ(AOTF)、長距離伝送のための可変波長分散補償器(VIPA)などを開発。3D-MEMS光スイッチと光波長可変フィルタは情報通信研究機構(NICT)の委託研究として実施されたもので、詳細についてはこちらのレポート を参照していただきたい。
開発にあたり、富士通研究所が意識しているのは「垂直連携」だという。デバイスプロセスからシステム評価/製品化までの各段階にそれぞれ開発部隊を持つのが同社の強みであるが、システム性能を決定するキーデバイスにこだわりつつ、各段階で同時に全体最適化を図る。光ネットワークの基本要素であるWDM光増幅器の開発では、その構成がデファクトスタンダードになるなど、垂直連携がうまく機能したという。またネットワーク設計においては、光デバイス・モジュール・ノード・システムなどの各設計レイヤを全体で最適化することができるシミュレータを開発、装置コストを40%削減するとともに、設計工数を1/6に短縮することができたそうだ。
研究所と富士通本社の事業部との連携も図られている。都市圏向けWDM市場では、波長単位で光を分岐/挿入でき、しかも波長を動的に選択できる「ROADM」タイプの伸張が著しい。この分野で、同社は事業部との連携により早くから方向性を持って開発しており、その結果、アジアパシフィックでは71%、北米では83%の圧倒的なシェアを確保することができたとしている。
次世代を担う先端研究分野については、産学連携を進める。東京大学・荒川研究室との間では、量子ドットレーザーの共同研究、ドイツHeinrich-Hertz-Institutとは、640Gbpsの光増幅スイッチで協力した。量子ドットレーザーは本質的に温度依存性の問題が解決されるため、コストダウンや消費電力の低減が期待できる。また光増幅スイッチは光信号のトランジスタのようなもので、光の信号を光の制御信号で制御する。電気処理では素子の速度がそろそろ限界に近づいており、高速化が難しくなってきているが、光のまま処理することにより、それ以上の高速性能を実現する。
富士通研究所では、約100名が光関連の研究開発に従事しているという。この説明会は、同社の各研究所・特定テーマごとに、研究成果などをプレス向けに紹介するもので、今回で開催は3回目。今後も要望を聞きながら、継続的に実施するとしている。
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