【レポート】

レオナルド・ダ・ヴィンチ展 - 科学者レオナルド・ダ・ヴィンチにスポット

「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」が9月15日~11月13日、六本木ヒルズ森タワーの森アーツセンターギャラリーで開催されている。

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519年)というと、「モナ・リザ」や「最後の晩餐」といった絵画が有名なため、偉大な芸術家といったイメージが強い。しかしながら、今回の展覧会は、日本初公開となるダ・ヴィンチ直筆の「レスター手稿」の展示を中心に据え、芸術家としての側面よりも、科学者としての側面にスポットを当てた内容となっている。

ダ・ヴィンチは芸術だけでなく、天文学や物理学、解剖学、建築土木、自然科学などあらゆる分野において深く研究を行い、高い成果を上げている。その研究・観察記録は、「手稿」と呼ばれる手帳やノートとして残されており、その数は3,800枚、8,000ページ以上にものぼる。今回展示されるレスター手稿はそういった中の一部で、彼の晩年、1505、1507~1508年に書かれたもの。そのため、生涯をかけて行った研究考察の集大成として位置付けられている。また、1508年以降も頻繁に加筆が行われているという。

他のほとんどの手稿が欧州で所蔵されており、海外不出であるが、レスター手稿は米Microsoft会長、ビル・ゲイツ氏が所蔵する、唯一の個人所蔵の手稿。そのため、年に1度、1カ国だけに実物展示が許されている。日本はもとより、アジアで展示されるのは今回が初めてで、同展は、ダ・ヴィンチ直筆の手稿を国内で閲覧できる滅多にないチャンスと言えるだろう。

全18枚、72ページのレスター手稿の実物が展示されている。保存状態を維持するため、室内の照明は暗い。また、手稿を照らす照明も、一定時間ごとに光量が落ちるようになっている

レスター手稿第36紙葉裏・第1紙葉表/レオナルド・ダ・ヴィンチ 1505, 1507-8年 Seth Joel/(c)Corbis

レスター手稿は全18枚・72ページで、"天才"ダ・ヴィンチが行った天文学、水力学、地球物理学などに関する研究内容が詳細に記されている。手稿内で言及されている実験件数は905件、挿図は383個に及ぶ。また、500年も前に書かれたものでありながら、ロボットやコンピュータを彷彿とさせる研究考察もあわせて記述されており、"予見"とも言える驚くべき先見性にあふれている。同展では、そういった手稿が、1枚1枚バラバラに展示されているため、全ページを見ることができるという点でも非常に意義深い。

同手稿は、その全てが"鏡面文字"で書かれていることも大きな特徴である。鏡面文字とは、鏡に映すことで正しい文字として読める逆さ文字のことで、ダ・ヴィンチのミステリアスな部分のひとつとして語られることが多い。しかし、それに対して、本展の監修者であり、来日中のレオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館(イタリア)館長アレッサンドロ・ヴェッツォージ氏は、「彼にとって、鏡面文字で書くのが最も書きやすかったからではないか」と説明している。

また、アレッサンドロ・ヴェッツォージ氏は、レスター手稿のことを、"ハイパーテキスト"と表現する。理由は、各ページに1つのテーマが書かれているのではなく、色々なテーマが詰め込まれているからである。

ダ・ヴィンチはレスター手稿の中で、ろくろや脈拍を使って、川の流れの速さを測った実験の内容を記述しているが、そのろくろからは陶器を作る土の研究へと考察が飛躍しており、脈拍からは解剖学の研究へと考察が飛躍している。レスター手稿には、そういった次々と飛躍していく研究テーマが同じページに書かれているのである。事実、彼は、関連する自分の知識を、できるだけ1ページにまとめるために、引用を多用するなど、さまざまな工夫を行っているという。

本展の監修者であり、レオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館館長のアレッサンドロ・ヴェッツォージ氏

手稿を模したパネルの横には鏡が設置されている

一方で、彼は、地球を"呼吸する身体"として考え、観察していたといい、レスター手稿には、地球と月と太陽の関係についての考察が、挿図を交えて記述されている。それによると彼は、月には水があり、月の光は太陽の光、地球上に反射した太陽の光が月の水の波に反射された結果であると考えていた。イタリア人天文学者ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で月観測を行う1世紀前、NASAにより月の水(氷)の存在が示唆される5世紀前のことである。

また、彼は地球だけでなく、水や波に関する観察・考察にも多くの時間を費やしており、関連する実験も多数行っている。そのため、同展の会場には、レスター手稿の実物のほかに、手稿に記されている実験内容を再現したものや、考案した飛行機、揚水機の再現模型なども分野別に数多く展示されている。天文学、水力学、地球物理学に関する展示エリアでは、水流の中に障害物を置くと流れがどう変わるかなど、ダ・ヴィンチが行ったさまざまな実験内容が、同手稿を元に再現され展示されている。

レスター手稿に記述されている地球と月と太陽の関係。投影される映像は、手前のタッチパネルで選択可能

奥がダ・ヴィンチの水の波紋の研究を再現したもの

建築土木などに関する展示エリアでは、複数の再現模型が展示されている。その中で最も重要なのが「球体凧」である。これは複数の円が組み合わされた球体の凧で、中心に位置する人間が常に頭を上にし、直立しているように設計されている。これをダ・ヴィンチ自身は「全方位磁石のように働くもの」と記述している。また、彼は、友人の数学者が書いた本に、今で言う32面体のサッカーボールの挿絵を提供しており、同展にはその模型なども展示されている。

向かって一番右が球体凧の再現模型。一番左が32面体の再現模型。手前は今でいうパラシュートの原型と言われている

飛行にも強い興味を持ち、研究も数多く行っている

そのほか同展には、学習院大学の裾分一弘名誉教授が所蔵している手稿、素描、素画のファクシミリ版なども展示されている。また、会場には空間演出が取り入れられており、彼の手稿・作品が壁際に大きく投影されている。最終エリアで見られるスクリーン映像は、ダ・ヴィンチが先見的な科学探求の成果をいかに絵画の中に取り入れているかについて、実践女子大学美学美術史学科の片桐頼継助教授が分析した研究内容を映像化したもの。例えば、名画「最後の晩餐」は、イエス・キリストが喋っている声が、同心円状に伝播していく様子が描かれているといい、これは、ダ・ヴィンチが観察に余念がなかった水の波紋の広がりと同じである、との考察を紹介している。

レオナルド・ダ・ヴィンチ展は11月13日まで。"人類史上最強の頭脳"と呼ばれる彼の真の姿に出会うことができる。

学習院大学の裾分一弘名誉教授が所蔵している手稿、素描、素画のファクシミリ版

展示内容を音声や、映像で知ることができる。会場に設置されたPCを利用し、ダ・ヴィンチの他の手記を閲覧することも可能

ダ・ヴィンチの研究は、全て芸術に活かされた。例えば、自然の観察は「モナ・リザ」の背景に、水の波紋の観察は「最後の晩餐」に取り入れられた(「最後の晩餐」とは、イエス・キリストの一言が、使徒達との晩餐の空間に"波紋"を広げた、その一瞬を描いた作品である)。彼は自然の理を知らずに自然を描くことはできないとし、「芸術は科学である」と唱えた。会場で流されるスクリーン映像を通し、ダ・ヴィンチの名画に隠された謎などを知ることができる。



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