【レポート】

CEDEC2005 - 物理エンジンの現状と仕組みを理解する

1 グラフィックスがリアルな割に動きが物足りない現状

    西川善司  [2005/09/14]

    最近、メキメキと頭角を現しているのが物理エンジン「NovodeX」の開発メーカー、米AGEIA Technologiesだ。SCEの次世代ゲーム機、PLAYSTATION 3の開発環境の物理系ライブラリの実質的な標準ポジションを獲得し、年末には世界初の物理エンジンプロセッサ「PhysX」を搭載した物理エンジンアクセラレータの発売を予定している。

    CEDEC2005では、この注目のAGEIAがセッションを行ったので、レポートをお届けする。

    AGEIAが日本で公の場で講演するのは今回のCEDECが初めてということもあり、このセッションは非常に業界関係者からの注目度が高かった

    AGEIA Technologies Senior Field Applications Engineer,Thomas Lassanske氏

    Physics Processor Unit(PPU)「PhysX」チップ搭載の物理エンジンアクセラレータカードの試作ボード。製品版ではPCI Express x4カードとして登場する予定

    物理エンジンのマルチスレッド化はマルチコア時代に適合するパラダイム

    壇上に上がったLassanske氏が最初に述べたのは、最近の3Dゲームの現状と進化の方向性についてだ。

    まず、3Dグラフィックスが非常にフォトリアリスティックとなっているのに対し、これに見合う挙動が付いてこない点を指摘した。

    つまり、端的に言ってしまえば「映像は綺麗なのに動きが古くさい」ということ。例えば非常に写実的なグラフィックスなのに、地に足が付いていないような、荷重移動の感じられない単調な動きをするゲームは今でも多い。もちろん、ゲーム性の関係上、あえてそうしているタイトルも無いわけではないが、特に理由もなくそうなっているのではないか疑わしいタイトルも少なくない。

    これからの3Dゲームはグラフィックスのリアリティに見合う挙動……すなわち物理シミュレーションを実装していくべきではないか、ということをLassanske氏は指摘したのだ。そして、3Dゲームプラットフォームとしての最新PCや次世代ゲーム機は、マルチコアCPUを搭載するようになることにも触れた。

    例えばPLAYSTATION 3は「SPE(Synergistic Processor Element)」と呼ばれる128ビットSIMDベクトルRISCプロセッサを7基も内包する非対称型マルチコアCPUだし、Xbox 360はPowerPC970互換のCPUコア「PX」を3基搭載した対称型マルチコアCPUだ。PCもAMDやインテルがデュアルコア(マルチコア)やSMT(Simultaneous Multi-Threading:マルチスレッド同時処理)対応CPUをリリースしてきている。

    「これまでは物理シミュレーションにパワーを割くほどCPUパワーに余裕がなかったが、マルチコア時代ではその要求に耐えうるコンピューティングパワーがある。」(Lassanske氏)

    3Dゲームの物理シミュレーションの高品位化の要求にマルチコアCPUでならば応えられるのではないか……こういうわけだ。

    そしてこの数少ない実例の1つが、AGEIAの物理エンジン「NovodeX」だという話の流れになる。NovodeXはマルチスレッド・アーキテクチャで設計されており、前出の全てのマルチプロセッサ・プラットフォームで利用可能であるからだ。

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