【レポート】

SIGGRAPH 2005 - DMP、日本独自設計の3DグラフィックスIPコアをデモ

3 PICA200 - DMP Maestroテクノロジーが携帯機器へ

    西川善司  [2005/08/16]

    Figure Maestro

    髪生成(ヘアジェネレータ)、ポリゴン分割(サブディビジョン)、プリミティヴ生成、ディスプレースメントマッピングをサポートする高度なジオメトリ・エンジン。髪生成は、キャラクタに植え込んだ"ヒレ"ポリゴンに対し、パラメトリックな密度制御で線状の髪の毛を生やすことができる。髪の毛一本一本に対し、ピクセル単位の異方性ライティングも自動的に行われる。

    3Dゲーム等で髪の毛の実装は自前でやろうとすると、シェーダをどうするか、モデルデザインをどうするか等々、様々なやっかいな問題とぶつかる。Figure Maestroならばこれらの問題を全て一元的に管理できる。

    ポリゴン分割は、3Dオブジェクトのジオメトリ構造に対し、任意の指定した分割数でポリゴンを自動分割できる仕組み。分割は各頂点の向きである法線ベクトルを補間するようなメソッドで分割され、ATI RADEON 8500に実装されていたN-PATCHと同種の技術と思われる。これを活用すると、粗い3Dモデルをより細かで滑らかな3Dモデルとして描画でき、さらに視点からの距離に応じて分割数を変えることでLOD(Level of Detail)的な処理系を自動的に実装することができる。

    ポリゴン分割のデモ。左が粗いモデル、右が法線ベクトルを補間するN-PATCH式に分割されたモデル

    プリミティヴ生成は、入力された1個の頂点に対して複数の頂点、ポリゴンをパラメトリックに生成できるもの。次期Windows VistaのグラフィックサブシステムであるWGF2.0(≒DirectX 10)に実装予定のジオメトリシェーダを簡略化しハードウェア実装したようものだ(WGF2.0のジオメトリシェーダはプログラマブル)。この機能を活用すると3Dモデルにヒレを生やしたり、バンプマッピングで毛皮(Fur)描画を行う際に必要なポリゴン(特にこれをシェルと呼ぶことが多い)を自動生成できる。ディスプレースメントマッピングは、凹凸情報をテクスチャ化したハイトマップ(高さマップ)に従って、3Dモデルを変形できる仕組み。かつてMATROXのParheliaシリーズがハードウェア実現したことで話題となった。

    Glare Maestro

    光源と視線関係が特定の関係になったときに、テクスチャを用いずに、光筋の数や輝きの色などを指定して煌めき(グレア)やレンズフレアをプロシージャル生成できるエンジン。

    逆光時の定番スプライト処理。ハイダイナミックレンジレンダリングのグレア効果とは異なる。

    なお、ここで示したMaestro技術はDMPの技術デモWebサイトで、ムービーファイルとして公開されている。興味のある読者は是非ダウンロードして実行してもらいたい。

    ULTRAY2000の技術を携帯機器へ~「PICA200」コア

    DMPでは、ULTRAY2000をウルトラハイエンドクラスのグラフィックスワークステーション向けのビデオカードとして提供していく計画だが、それと同等か、それ以上に力を入れていきたいのが携帯電話、携帯機器などの組み込み用途だという。Maestroエンジンの徹底した消費電力あたりのハイパフォーマンスを目指すスタイルは丁度、消費電力性能が最重要視される携帯機器の設計思想と見事に合致するからだ。そこで、DMPでは、組み込み向けに、ULTRAY2000のプログラマブルシェーダエンジン+Maestroエンジンの必要な機能を任意にチョイスして各プロセッサメーカーの製品に実装できる、3DグラフィックスIPコアとしての提供も開始する。このソリューションには「PICA200」という名称が付けられており、実装する機能数によっても異なるが50万~200万トランジスタ規模のコアブロックになるとのこと。いうまでもなく、ULTRAY2000同様にOpenGL/ES1.X、および2.0に対応するポテンシャルを持つが、その動作消費電力は100mW以下となる予定。

    3Dコアの設計者からソフトウェア開発支援スタッフまでが、すべて日本にいるために強力なサポート体制が提供できることを武器に、特に進化の著しい日本の携帯電話メーカーに売り込みを開始しているという。ご存じのように現在は、PC、ゲーム機、組み込み機器、携帯電話など、あらゆる分野の3DグラフィックスエンジンがATIとNVIDIAによって押さえられている。この厳しい状況の中で、日本"発"の3Dグラフィックス技術がどこまで立ち向かえるのか、非常に興味深い。

    (トライゼット西川善司)

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