【レポート】

SIGGRAPH 2005 - HDとHDRが次々と商品化される一般展示レポート(2)

1 コントラスト比20万:1、最大輝度3,000cdの超HDR液晶ディスプレイが量産化

    西川善司  [2005/08/16]

    映像ディスプレイ機器がハイビジョン(HD:High-Definition)化し、3Dグラフィックスはハイ・ダイナミック・レンジ(HDR:High Dynamic Range)レンダリングを積極的に利用するのがトレンドとなってきている。

    時代はHDとHDRを求めている。

    昨年、EMERGING TECHNOLOGIES展示セクションレポートでも紹介したSunnybrook Technologies社のハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)液晶ディスプレイが、ついに量産モデルとなって登場した。

    製品名は「DR37-P」。なお、この量産化に伴って心機一転、社名をBRIGHTSIDEに変更している。

    世界初のHDR液晶ディスプレイ量産製品「DR37-P」。全体の大きさはW118cm × H85cm×D14cm。奥行きはともかく、横方向の額縁の厚さが凄い。重さは同画面サイズの液晶テレビの3倍の約72kgとかなり重い。

    BRIGHTSIDEブース。今年のSIGGRAPHには、社名も変更し、展示会場もEMERGING TECHNOLOGIESセクションから一般展示セクションにブースを移しての参加となった。


    彼らのHDR液晶ディスプレイ原理は簡潔に説明するとこうだ。

    通常の液晶ディスプレイでは常時点灯される冷陰極放電管(CCFL)と呼ばれる蛍光管バックライトを液晶パネルの後ろに配置して各画素を発光させている。黒色は液晶素子がこのバックライト光をシャットアウトして表現することになるが、実際には完全に遮断できず漏れてきてしまう。これが液晶ディスプレイの「黒浮き」現象の主な原因だ。

    HDR液晶ディスプレイではCCFLの変わりに、高輝度な複数個の白色LEDを液晶パネル背面に敷き詰めるように格子配置し、入力映像の輝度情報に従って階調発光させる。

    そう、イメージとしては白色LEDを使って白黒映像を表示するイメージだ。これにより、黒色の部分はバックライトとなるLEDが消灯するので完全な漆黒となり黒浮きが低減でき、ダイナミックレンジが劇的に向上する……というわけだ。

    今回発表された量産モデル「DR37-P」では、そのスペックが昨年の試作モデルに対してさらに大幅な進化を遂げている。

    コントラスト比は昨年の試作機の4万:1から驚きの20万:1へと向上。一般的な高コントラストといわれる液晶ディスプレイが1,000:1程度だから、DR37-Pはその200倍ということになる。まさに桁の違うハイ・ダイナミック・レンジぶりといったところ。

    最大輝度においては3,000cd/平方メートル。これも一般的な高輝度液晶ディスプレイの6倍。ちなみに、漆黒表示となる黒色の輝度は0.015cd/平方メートルだという。そう、3,000÷0.015=200,000で、コントラスト比20万:1となるのだ。

    左が通常の液晶ディスプレイ、右がHDR液晶ディスプレイDR37-P。対抗馬の通常の液晶ディスプレイのスペックは37インチ、1920×1080ドット、コントラスト比1,000:1、最大輝度550cd/平方メートル。右の映像の輝度に合わせて撮影してみた。輝度の差異がすさまじいことを感じる。

    逆に左の通常の液晶ディスプレイの表示映像の輝度に合わせて撮影すると、DR37-Pの映像は激しく白飛びしてしまう。それだけDR37-PのHDRぶりは凄いのだ。

    白色LEDの個数は試作モデルの32×24=768個に対して、DR37-Pでは画面サイズが広がったこともあり1,380個(縦横の内訳は非公開)に増えている。各LEDは映像輝度に応じて8ビットスケールでその輝度が独立に制御される。液晶パネルのフルカラー表現がRGB各8ビット制御されるので、BRIGHTSIDEではDR37-PはRGB各16ビットのダイナミックレンジ表現が出来るとしている。フルカラー表現にして48ビットカラー、理論値にして約281兆色表現可能ということになる。

    パネル解像度は1920×1080ドットのフルHD(リアルハイビジョン)。画面サイズは16:9アスペクト比の37V型。表示面積にして横82cm×縦46cmとなっている。なお、液晶パネルは台湾Chi Mei Optoelectronics製のものを採用しているとのこと。

    寿命は約15万時間で、CCFLの約3倍。また、白色LEDの輝度減退や変色に対応するため、マニュアル操作にはなるが輝度キャリブレーションが行える仕組みを備えているという。

    接続端子はPC入力系としてDVI-Dシングルリンク(通常のDVI-D)、DVI-Dデュアルリンクに対応した2基のDVI-D端子を装備。そしてビデオ入力系としてはシングルリンクHD-SDI、デュアルリンクHD-SDIに対応した2基のBNC端子を装備する。ちなみにHD-SDIとは業務用のシリアル・デジタルビデオフォーマットの規格。

    PC、ビデオ、いずれの場合もシングルリンク入力接続した場合は通常の24ビット、1677万色カラー映像をダイナミックレンジを広げての表示となる。つまり、リアルHDR表示を行うためにはデュアルリンク接続が不可欠というわけだ。デュアルリンクHD-SDI接続にはプロフェッショナル機材が必須なので利用の敷居は高いが、DVI-Dデュアルリンクは2基のDVI-D出力機能を持った最近のPC用ビデオカードがあれば行える。

    ブース内では、通常の37インチサイズの液晶テレビと横並びにして比較展示を行っていたが、確かにその違いは歴然。DR37-Pの表示映像は、明部は驚くほどまばゆく、それでいて暗い階調は漆黒からリニアに始まっており、確かにそのHDRぶりは異質な感じさえするのだ。

    価格はUS$49,000とのことで、とても素人が手を出せるものではないが、それもそのはずで、やはり、映像制作現場や医療現場などのプロフェッショナル用途を前提としているとのこと。最近では、地球上空の人工衛星にて撮影されたHDRイメージの可視化デバイスとしての利用についての問い合わせも来ているそうで、ジオフィジカル分野からの注目も熱いそうだ。

    しかし、このDR37-P、問題点もある。

    まず消費電力の問題だ。消費電力はピーク時で1,680W。プラズマディスプレイも真っ青な電気喰いである。

    もう一つの問題は、発色について。白色LEDは青色LEDにYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を組み合わせて作られることもあり、出力光は純白ではなく若干の偏りがある。この色バランスの偏りについてはだいぶ改良が進んでいるが、それでもDR37-Pの映像は全体的に黄色に寄った色合いになってしまっている。聞いてみると、現在、色温度は5,600K固定設定になっているそうで、これについてはチューニングを推し進めて改善していきたいとのこと。

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