【レポート】
大手半導体ベンダー各社による、2005年第2四半期(2005年4~6月期)の業績が出そろった。売上高の伸びは芳しくない。前年同期に比べて2桁の伸び率を確保したベンダーは、大手半導体ベンダーでは米Intelだけである。本稿で取り上げた8社の中で、6社は前年同期よりも売上高を減らした。WSTS(世界半導体市場統計)によると、2004年の半導体市場は前年比28.0%増と大幅に伸びた。しかし2004年後半から市場の伸びは鈍化している。WSTSは2005年5月末に、2005年の成長率は6.3%にとどまるとの予測を発表した。半導体大手各社の決算発表を見る限り、WSTSの予測からは大きく外れずに推移していることが窺える。ここでは大手半導体ベンダー8社の2005年4~6月期決算発表を元に、各社の業績を説明する。取り上げた企業は以下の通り。なおルネサス テクノロジは非上場企業なので、業績が公表されていない。
| 米国系企業 | Intel |
|---|---|
| Texas Instruments | |
| Freescale Semiconductor | |
| 欧州系企業 | Infineon Technologies |
| STMicroelectronics | |
| アジア系・日系企業 | サムスン電子 |
| 東芝 | |
| NECエレクトロニクス |
第1部では全体を総括し、米国系企業の決算内容をレポートする。第2部では欧州系企業とアジア系・日系企業の業績を個別に紹介する。
地域別では、米国系企業の健闘が目立つ。収入が増えずとも、利益をしっかりと伸ばしている。欧州系企業の業績は厳しい。利益の確保が難しい状態にある。アジア系・日系企業も苦しいものの、欧州系企業に比べれば健闘しているといえそうだ。製品別では、メモリーの価格低下が企業収支を圧迫している。TFT液晶パネルの価格低下によって液晶ドライバICも苦しい。マイクロプロセッサやマイクロコントローラ、DSPは比較的好調である。アナログICも健闘している。用途別では、自動車分野が変わらず好調である。パソコン向けはノートパソコンを中心に需要が上向いた。
それでは、米国系企業から各社の業績を説明しよう。
| 表1:米国系半導体ベンダー各社の2005年第2四半期(4~6月期)業績概要(出典:各社の決算資料) | |||
|---|---|---|---|
| 企業名 | Intel | Texas Instruments | Freescale Semiconductor |
| 売上高 | 92億3100万米ドル | 32億3900万米ドル | 14億7200万米ドル |
| 売上高の前年同期比 | 14.7%増 | 0.1%減 | 0.7%増 |
| 粗利益率 | 56.4% | 47.0% | 41.6% |
| 前年同期の粗利益率 | 59.4% | 45.7% | 38.4% |
| 営業利益(営業損失) | 26億4900万米ドル | 6億6900万米ドル | 1億3900万米ドル |
| 営業利益の前年同期比 | 11.3%増 | 13.0%増 | 153%増 |
| 営業利益率 | 28.7% | 20.6% | 9.4% |
| 純利益(純損失) | 20億3800万米ドル | 6億2800万米ドル | 1億2200万米ドル |
| 研究開発費 | 11億7600万米ドル | 4億9300万米ドル | 2億6600万米ドル |
| 研究開発費/売上高 | 12.7% | 15.2% | 18.1% |
| 期末時点の株主資本比率 | 80.9% | 79.1% | 65.7% |
| 前年同期末時点の株主資本比率 | 79.3%(前期末) | 77.5% | 59.3% |
世界最大の半導体ベンダーであるIntelの業績はYamashita氏が速報済みなので、ここでは補足にとどめることにする。売上高は前年同期比14.7%増の92億3100万米ドルと好調である。1米ドル=110円で計算すると1兆円を超え、1兆154億円となる。凄まじい金額だ。しかも粗利益率は56.4%で、前年同期の59.4%から3ポイント低下したとはいうものの、製造業としては極めて高い。営業利益は前年同期比11.3%増の26億4900万米ドル。営業利益率は28.7%と、これも変わらず極めて高いレベルにある。
事業部門別では、デジタルエンタープライズグループ、モビリティグループ、そのほかに区分けして売上高と営業利益が発表されている。Intelは2005年1月に大規模な組織変更を実施して用途別の部門構成をさらに強化し、顧客への即応力を高めた。顧客にとっては良いことだと思うが、製品ごとの事業収支がさらに把握づらくなった。以前はマイクロプロセッサの稼ぎが、ほかの製品の赤字を埋めていることを簡単に理解できた。今の形だと例えばフラッシュメモリーは黒字なのか赤字なのかが、隠れてしまっている。
デジタルエンタープライズグループは、デスクトップパソコンやエンタープライズ向けコンピュータ、通信インフラ、ネットワークストレージなどに向けたマイクロプロセッサやチップセット、マザーボード、ネットワークプロセッサ、組み込みプロセッサなどを扱う部門である。同グループの売上高は前年同期比1.6%増の60億100万米ドル、営業利益は同6.9%減の19億9200万米ドルだった。営業利益率は33.1%である。前年同期の営業利益率36.2%に比べると下がっているものの、非常に高い水準を維持している。
モビリティグループはノートパソコンや携帯電話機、携帯型情報端末(PDA)などに向けたマイクロプロセッサやチップセット、フラッシュメモリーなどを扱う。同グループの売上高は前年同期比49.8%増の31億5000万米ドル、営業利益は同92.2%増の11億4000万米ドルだった。営業利益率は36.2%ときわめて高い。前年同期の営業利益率が28.2%だったので、利益率は8ポイントも伸びている。モビリティグループの事業が急激に伸びており、しかも利益の柱になりつつあることが分かる。
アナログとDSPの雄、Texas Instrumentsは2005年第2四半期に過去最高の営業利益額を記録した。前年同期比13.0%増の6億6900万ドルである。営業利益率は20.6%であり、前年同期を2.3ポイント上回った。粗利益率は47.0%と、これも前年同期に比べて1.3ポイント高い。売上高は前年同期比0.1%減の32億3900万米ドルとほぼ横ばい。事業のほとんどを占める半導体部門の売上高が、同0.7%減の27億6400万米ドルとなったことが響いた。ただし売上減は事業売却が主因で、営業そのものが不振だったわけではない。TFT液晶ドライバIC事業を2005年3月に沖電気工業に売却したため、その分、売り上げが減少した。半導体部門の営業利益は同12.9%増の5億9400万米ドルと2ケタ増である。顧客による値下げ圧力が強く、利益を確保しづらくなる一方の液晶ドライバICを切り離し、収支を改善した格好だ。
半導体部門は大きく、アナログIC、DSP、そのほかの3つに分かれる。アナログICはTFT液晶ドライバICを含んでいたため、全体の売上高は前年同期比で7%減少した。ただし高性能アナログICの売上高は前年同期と同水準だった。一方、DSPの売上高は前年同期比10%増と伸びた。無線通信分野による需要がさらに強まっているという。そのほかの半導体売り上げは前年同期に比べて6%減少した。RISCマイクロプロセッサとマイクロコントローラは伸びたものの、DLPと標準ロジックが落ち込んだため、全体としては収入減となった。
Freescale Semiconductorは、Motorolaの半導体部門が2004年4月に分離して誕生した企業である。といってもニューヨーク証券取引所に上場してからMotorolaが持ち株をすべて売却したため、現在ではFreescaleとMotorolaの間には資本関係はまったくない。Freescale Semiconductorは資本的には完全に独立した半導体ベンダーである。ただし半導体ユーザー、すなわち顧客としてのMotorolaは現在でも、Freescaleにとって重要な位置を占めている。Freescale Semiconductorの2005年第2四半期は、総括すると売り上げが微増、利益が倍増である。売上高は前年同期比0.7%増の14億7200万米ドル、営業利益は前年同期比153%増の1億3900万米ドルとなった。粗利益率の向上と販売管理費の圧縮が営業利益の倍増に寄与した。粗利益率は41.6%と、前年同期に比べて3.2ポイント向上した。
同社の事業部門は、トランスポーテーションアンドスダンダードプロダクツ(自動車用半導体)、ネットワーキングアンドコンピューティングシステムズ(無線通信のインフラ用半導体)、ワイヤレスアンドモバイルソリューションズ(無線通信の端末用半導体)の3部門に分かれている。最大部門であるトランスポーテーションアンドスダンダードプロダクツの売上高は、前年同期比3%増の6億6700万米ドルと微増だった。営業利益は同45%増の8700万米ドルと大きく伸びた。ネットワーキングアンドコンピューティングシステムズの売上高は前年同期比3%減の3億8700万米ドル。ただし営業利益は同32%増の9400万米ドルと伸びており、金額ではトランスポーテーションアンドスダンダードプロダクツを上回っている。ワイヤレスアンドモバイルソリューションズの売上高は前年同期比0.25%増の4億100万米ドルとほぼ横ばい。営業利益は500万米ドル。前年同期は営業損失を出しており、損失額は4300万米ドルだった。
経費の内訳をみると、研究開発投資比率の高さが目立つ。売上高の18.1%、2億6600万米ドルも研究開発につぎ込んでいる。前年同期の研究開発投資は2億4200万米ドルなので、経費としては増額である。にもかかわらず、営業利益は2.5倍に増えた。売上原価や販売管理費などを精力的に削減した結果が現れている。また第2四半期末時点の株主資本比率が65.7%と、前年同期末の59.3%に比べると6.4ポイント向上した点が興味深い。IntelやTexas Intstrumentsなどの株主資本比率は80%前後に達している。両社に近づくべく、Freescaleが財務体質の改善を急いでいる様子が伺える。
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