【レポート】

ApacheCon Europe 2005 - Cludscape設立エンジニアが語る「Derby」の今

    末岡洋子  [2005/08/09]

    ドイツ・シュツットガルトで開催された「ApacheCon Europe 2005」では、さまざまなテクニカルセッションが提供された。ここでは、「Derby」に関するセッションの様子をまとめる。

    昨年8月に米IBMがASFに提供したJavaリレーショナルデータベースプロジェクトが「Derby」だ。約1年を経た現在、DerbyはASFのIncubationプロセスにあるが、オープンソースプロジェクトとしての新しいスタートを順調に切ったようだ。

    Derbyは、もともと「Cloudscape」という名称で知られていたもの。もともとは、1996年に米ベンチャー企業のCloudscapeが開始したものだが、Cloudscapeは1999年末に米Informix Softwareに買収された。その後2001年、IBMがInformixを買収したことで、IBMの製品となった。

    この日、Derbyのセッションを担当した、Cludscapeの設立エンジニアのDan Debrunner氏は、Derbyの特徴を、「Pure Java、組み込みデータベース、軽量、標準ベース、完全なRerational DB」と述べる。

    Pure Javaであるため、ハードウェア、OSを問わず動く。Linux、UNIX、Windowsに加え、Mac OS Xにも対応する。組み込みに対応することで、アプリケーションのJava仮想マシン(JVM)で動き、起動・停止はアプリケーションで操作できる。データベースはディスク上にあり、単一のJVMよりJDBCでアクセスする。

    Derbyの容量は約2MBと軽量だ。標準技術としては、SQL・J2SE・JDBC・J2EE・J2ME/OSGi・DRDAなどをサポート、APIはJDBCとSQLに対応する。標準対応の最大のメリットはマイグレーションという。Derbyには、エンタープライズ級の機能はないが、Derbyを導入して、必要にあわせてエンタープライズ対応のDBに移行したり、Derbyで開発し、エンタープライズ対応DBで実装するようなことが考えられるという。

    このほかの特徴として、Derbyはマルチユーザー、マルチスレッド、トランザクション、バックアップ&リストア、SQL、データキャッシング、ステートメントのキャッシングなど、リレーショナルエンジンに必要な機能を網羅している点が挙げられた。

    運用におけるガイドラインとして、Debrunner氏がアドバイスしたのは、CPUを1~2基搭載したマシンに最適であること、データ容量は50GB以内(高速ディスクコントローラがあればなお良い)で、RAIDなどにより物理的に複数のディスク上で利用できること、アクティブなコネクションは20~30が好ましいことなどだ。ちなみに、2 CPUマシン上で動かした場合、Derbyの性能ベンチマークは、通常のエンタープライズレベルのデータベースに匹敵するレベルという。

    Derbyを組み込みではなくクライアント/サーバ環境で利用するための技術として、Network Serverも紹介された。TCP/IP上でDRDAを用いることで、通常のRDBMSのように利用でき、PHP、JDBC、ODBC/CLI、Perlなどのアプリケーションと接続できる。また、「Jeronimo」などのJ2EEアプリケーションサーバとの統合も容易に行えるという。

    現在、「Derby」のツールとしては、SQLスクリプトのij、スキーマ抽出のdblook、バージョン情報表示のsysinfoの計3つがある。

    ASFの下でオープンソースプロジェクトとして開発が再開してから約1年、Debrunner氏は「経過は順調」と述べる。現在、バージョン10.1のリリース待ちの段階だが、今後の課題として、JDBCやSQLでサポートや機能を拡張していくようだ。また、Network Serverにより、オープンなTCP/IPポートができることから、リスクが増える点も課題だ。回避策としては、Java 2 Security Managerと併用したり、デフォルトでループバックアドレスのみを受けるようにするなどを挙げた。

    Derbyに当初から関わっていたDebrunner氏は、オープンソースにして「コミュニティの力に驚いた」と述べる。ソースコード公開後、6時間26分で最初のダウンロード&ビルドが、7時間43分後には最初のバグレポートがあり、その3分後には、パッチが発行されたのだそうだ。また、2度の買収で一度はCloudscapeを離れていた初期のユーザーが、オープンソースになったために戻ってきたという現象もあるという。

    Dan Debrunner氏

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