【レポート】

宇宙研・一般公開、今年は「はやぶさ」の小惑星到達に注目

1 壮大なミッションを抱えるISASの展示

    大塚実  [2005/08/08]

    宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究本部(ISAS)の一般公開が7月23日、神奈川県の同機構相模原キャンパスにて開催された。これは統合前の宇宙科学研究所(旧ISAS)時代から続いているイベントで、毎年1万人以上の来場者があるという。今年も、先日打ち上げに成功したX線天文衛星「すざく(ASTRO-EII)」の話題などもあり、1万3,000人を超える人出があったそうだ。

    朝から多くの家族連れで賑わっていた。奧には、M-3SII型ロケットの実物大模型も見える

    ペーパークラフトやうちわなどのグッズも配布されていた。入場はもちろん無料だ

    日本の宇宙開発は長らく、実用面の宇宙開発事業団(旧NASDA)と研究面の旧ISASという、両輪によって進められてきた。2003年10月に現在のJAXAとして統合され、その一部門となっているが、惑星探査ミッションなど、ISASの特徴がある魅力的な話題も多い。今回の一般公開では、ISASが行っている研究について、概要や最新の成果などが紹介されていた。

    ちなみに、今年はあのペンシルロケットが発射されてから、ちょうど50周年にあたる。その節目の年となる今回のテーマは「宙(そら)へ ±50年」。"-50年"はもちろん50年前のペンシルロケットで、そして"+50年"は次の50年を担う若い世代への期待が込められているそうだ。

    今回は6つの建物を使って展示や講演が行われた。このほかに、隣の小学校のグラウンドで、水ロケット教室も開催されていた

    もちろんオリジナルグッズの販売もアリ。すざくのTシャツが早速発売されていた

    世界初の偉業に挑む探査機「はやぶさ」

    現在、小惑星「イトカワ」に向けて、探査機「はやぶさ(MUSES-C)」が航行中なのをご存じだろうか。世界で初めて小惑星からサンプルを持ち帰る予定になっており、2005年8月8日現在、あと42,391kmのところにまで接近。9月中旬には到着する見込みということもあり、今回は大々的に実物大模型を使って紹介されていた。

    「はやぶさ」の実物大モデル。重量510kg、大きさ約1.0×1.6×2.0m(本体のみ)で、2003年5月9日、M-Vロケット5号機で打ち上げられた

    目指す小惑星「イトカワ」の大きさを示す模型。約500mくらいの小さいものらしい

    人類がこれまで、地球外の天体から直接サンプルを持ち帰ることができたのは、じつは月だけだ。だが、小惑星は太陽系初期の物質をより原型に近い形で留めているとされており、持ち帰って調査することにより、惑星が誕生したころの様子がどうだったかを知る手がかりになるという。

    サンプルの収集は、弾丸のようなものを小惑星表面に打ち込み、飛び散ったカケラを集めることで行う。この時、探査機は地表スレスレまで近づく必要があるが、この制御は搭載されたカメラやレーザー高度計などを使って、自律的に行われる。地球までの距離が遠すぎ、遠隔操作では反応が10分以上も遅れてしまうためで、この点では、はやぶさはほとんど「宇宙ロボット」であるとも言える。

    太いストローのようなパイプを地面に付けて、中で弾丸を発射。表面から飛び散った物質を集める。その上には、地球再突入用の回収カプセルが見える

    小惑星表面の調査に利用される探査ローバー「ミネルバ」も搭載している。重力が小さいので、ぴょんぴょんバウンドしながら移動するそうだ

    はやぶさにはイオンエンジンが搭載されているが、別の会場では、その運転中の様子も見ることができた。

    この中でイオンエンジンが動作中

    覗いてみるとこんな感じ

    イオンエンジンの特徴は、燃費が極めて良いことにある。推力は小さいものの、宇宙空間では打ち上げ時のような大きな力は必要なく、より遠くまで到達するためには、燃費が何より重要になってくる。燃料はキセノンが使われており、放電室内でプラズマ化。発生した正イオンが、グリッドと呼ばれる電極によって加速され、ロケットは推力を得ることができる。はやぶさに搭載しているのは直径10cmの「μ10」型だが、現在は同20cmに大型化された「μ20」も開発中だ。

    はやぶさにも搭載されているイオンエンジン。グリッドの隙間からイオンが出て行く。ちなみにISASではカーボン・カーボン複合材をグリッドの素材に採用しており、長寿命なのが特徴

    エンジンの実験装置には耐久性の高さを表す「撃墜マーク」が貼られていたが(1,000時間ごとに1枚という)、この絵はイオンエンジンではなくて「波動エンジン」のような……

    余談だが、はやぶさの"MUSES-C"という名称は、"Mu Space Engineering Spacecraft(Mロケットで打ち上げる工学実験探査機)"の3号機、という意味になる。1番目は1990年の「ひてん」で、これは月によるスウィングバイなどの技術を習得。2番目は1997年の「はるか」で、直径8メートルのメッシュ・アンテナの展開などが行われた。

    はやぶさでは、「電気推進」「自律型の探査機技術」「小天体からのサンプル採取」「地球帰還から再突入へ」という、主に4つのテーマにチャレンジする。これほど遠距離の天体からサンプルを持ち帰るなど前例のないことではあるが、この技術を確立することができれば、今後の意義は非常に大きいと言える。すでに、2010年代前半の打ち上げを目指した、次のサンプルリターン計画も考えられているそうだ。

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