【インタビュー】

ApacheCon Europe 2005 - Apacheの成功は柔軟なライセンス形態とコミュニティ--ASF共同設立者に聞く

    末岡洋子  [2005/07/21]

    オープンソースのWebサーバ「Apache」で知られるApache Software Foundationが、18日よりドイツ・シュツットガルトにて「ApacheCon Europe 2005」を開催中だ。オープンソースの影響力が大きくなっている今、ASFの方向性はオープンソースのみならず、ソフトウェア業界全体の注目を集めている。ASF共同設立者Lars Eilebrecht氏に、組織としてのASFの運営方針、その歴史と現在、今後の展望について聞いた。

    --Apache Software Foundationについて教えてください。

    Eilebrecht氏 : WebサーバのApacheプロジェクトそのものは1995年ごろに発足し、その後1999年にNPO(非営利団体)組織となりました。この頃から、Apache Webサーバの人気が高まり、関連したプロジェクトが立ち上がりはじめました。それとともに、Apacheという名前とソフトウェアそのものの乱用が増えたことが、NPO組織となった大きな理由です。

    オープンソース開発が、個人の善意のみで開発、貢献、リリース、評価される時代は、残念ながら終わったのです。現在ASFは法を専門に担当するチームを持っていますし、ボランティアベースの弁護士もいます。

    このほかの役割として、メンバーが代わっても作業が続くようにインフラストラクチャを整えることです。ハードウェアインフラ、コミュニケーションインフラ、ビジネスインフラの提供などです。

    この間、人数という点では、当初20人程度でスタートしたのが、いまでは150人程度に増えました。メーリングリストの登録者数としては、1万人に達するレベルです。

    プロジェクトも、httpサーバの「Apache」だけではなく、先日米Sun Microsystemsより認定を受けたJ2EEアプリケーションサーバ・プロジェクト「Geronimo」を初め、現在28のプロジェクトが進行しています。プロジェクトの中には、サブプロジェクトを設けているものもあります(図1参照)。

    図1 : Apacheのプロジェクト構成

    ASF共同設立者Lars Eilebrecht氏

    組織には、コアグループとなるコントリビュータがおり、ソースコード管理レポジトリにアクセスできまず。貢献度が高くなればより重要な決定に加わることができます。これは、われわれの哲学でもあります。

    地域的には、欧州、北米の開発者が多いのですが、ロシアや東欧の開発者も増えました。日本やアジア諸国は、言語の壁からか、多くの割合を占めていません。学生もいれば、働いている人もいます。私も含め、参加者は共通して、プログラミングが楽しい、Apacheをよくしたいと思って参加していると思います。

    重要な決定を含め、多くのことは、メーリングリストで行われていることから、このような会議を開くことは非常に意義があることです。現在、欧州と米国の2カ所で開いていますが、いつもメーリングリストのみでコミュニケーションしていた開発者同士が、顔をあわせることで、お互いの理解が広がります。

    --現在、Apacheのシェアはどのぐらいですか? 人気の理由はどこにあると考えますか?

    Eilebrecht氏 : 71%といわれています。1996年以来、シェアは常にトップだったと思いますが、その理由を一言でいうなら、優れているから、でしょう(笑)。技術では、モジュール性というApacheの特徴が受け入れられたと思っています。

    技術以外の理由として、ライセンス形態が商用フレンドリだった点も挙げられます。ApacheはOSI(Open Source Initiative)が承認したApache Licenseの下で提供されていますが、これはかなり縛りがゆるいものです。たとえばFree Software Foundation(FSF)のGNU General Public License(GPL)の場合、このライセンスの下で配布されているソースコードを自社製品に利用した場合、その製品のソースコードを開示しなければなりませんが、Apache Licenseはこれを要求しません。もちろん、公開は大歓迎で、公開してくれるにこしたことはありません。でも、その判断は個人や組織に任せており、必須ではありません。たとえば米IBMは、Apacheを自社ミドルウェア「WebSphere」のベースに採用して、機能拡張を行ったのですが、ASFにそのソースコードを還元してくれました。

    これは、企業のみならず、個人開発者にとってもApacheを魅力あるものにしています。Apacheを製品の中に組み込んでいるベンダーは、米Hewlett-Packard、IBM、米Apple Computerなどさまざまです。

    われわれは、Apacheをさまざまな人がさまざまな目的に利用できるようにすることが大切だと考えています。

    --ASFでは参加者数が増え、プロジェクト数が増えました。さらにはオープンソース自体が主流になってきました。これまでの体制を見直す可能性はあるのでしょうか?

    Eilebrecht氏 : これといった計画は、現時点ではありません。プロジェクト数も、これ以上増やす、あるいは減らす、など明確な方向性があるわけではありません。われわれが避けようとしているのは、SourceForgeのように単なる開発のプラットフォームに過ぎず、ただ無差別にプロジェクトと技術情報を羅列するだけに終わってしまうことです。SourceForgeのリストにあるプロジェクトの中には、事実上空っぽのものもあります。

    そのため、プロジェクトを評価するApache Incubatorというプロセスを設けています。ちゃんとしたコードベースがあるか、ヘルシーなコミュニティがあるかの2点を主として評価します。あとは、IP(知的所有権)などの面をクリアしているかどうかも、確認します。最近の動きとして、米BEA Systemsの「Beehive」など、企業がプロジェクトを貢献してくれることがありますが、これらもIncubatorを経て、Apacheプロジェクトとみなされます。

    いったんプロジェクトとなった後も、必要がなくなったなどの理由から閉鎖されたものもあります。

    --今後の展望をお聞かせください。

    Eilebrecht氏 : 私がApacheに参画して8年となりますが、Apacheそのものも進化しました。Apacheは現在、2.0が登場し、2.1もアルファ版がでています。この8年間、一貫していることは、高い品質のオープンソースソフトウェアをつくる、という点です。今後も、これはわれわれの目標であり続けることでしょう。

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