【レポート】

Selete Symposium 2005 - 企業の競争力を培うものは何か

1 日本の半導体産業、利益なき繁栄と衰退

    福田昭  [2005/07/16]

    赤坂洋一(あかさか よういち)氏。三菱電機やアプライドマテリアルズジャパンなどを経て、現在は大阪大学大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 電子・光科学領域 教授。

    半導体産業を20年ほど観察してきた筆者にとって、赤坂洋一氏は、かねてからお話を伺いたい人物だった。それは同氏が半導体産業で、日本企業と米国企業の両方の経営スタイルを体験してきたからである。赤坂氏は1970年に大学院の博士課程を修了し、三菱電機に入社した。半導体プロセス開発のエンジニアとして同氏は順調に出世していった。ところが1992年に同氏は、大手半導体製造装置メーカーである米国Applied Materialsの日本法人、アプライドマテリアルズジャパンに移籍する。当時は外国系企業への転職は珍しく、ちょっとした騒ぎになった。そして10年近く、赤坂氏はApplied Materialsおよび同社日本法人の経営に携わってきた。現在は大阪大学の教授を務めている。

    「赤坂氏がApplied Materialsで体験した企業経営の中身を伺いたい」。筆者は10年近く、そう願ってきた。そしてつい最近になって、その貴重な機会に恵まれた。半導体先端技術の開発コンソーシアムである半導体先端テクノロジーズ(Selete)が5月30日に開催した「Selete Symposium 2005」(パシフィコ横浜 会議センター)で、赤坂氏がApplied Materialsにおいて体験した内容の一部を披露したのである。「企業競争力の源泉」と題するその特別講演は実体験に裏打ちされており、迫力があり、示唆に富んでいた。

    講演タイトルと内容。前半で半導体産業の歴史を振り返り、後半で米Applied Materialsの経営スタイルを紹介した。

    赤坂氏は講演の前半で、半導体産業とその歴史を振り返り、現況を概観した。まず、ほかの産業に比べると半導体産業が、いかに急激に成長してきたかを示した。2000年までの25年間に、半導体の市場規模は52倍にも成長した。

    さまざまな産業が過去25年間に成長した割合。1975年と2000年で比較した。半導体産業の市場規模は52倍と、驚異的な速度で成長した。エレクトロニクス産業の12倍というのも凄い。自動車産業は意外と伸びず、石油産業と同じくらいである。

    続いて半導体産業では過去、10年ごとにパラダイム・シフト(産業構造の大変化)が起きてきたことを示した。「学生に半導体産業を説明することを目的にこの資料を作っていて、がく然とした。10年経つと、パラダイム・シフトが本当に起こってしまっている」と赤坂氏は講演で述べている。

    半導体産業のパラダイム・シフト。

    半導体産業を地域別の生産額でみると、1975年~1988年にかけて日本がシェアを伸ばし、米国がシェアを落としてきた。1975年に米国のシェアは72%、日本のシェアは22%。それが1980年代半ばには逆転する。1988年に日本のシェアはピークに達し、49%を占めた。同年における米国のシェアは37%だった。1985年には半導体メーカー別売上高ランキングでNECが首位にたつ。1980年代は、日本の半導体メーカーの黄金時代だった。

    しかし、黄金時代は長く続かない。1988年に日米半導体貿易摩擦が勃発する。1989年以降、日本のシェアは下降して2004年には26%に下がってしまった。

    半導体生産額の地域別シェア。1988年に日米半導体貿易摩擦が起きた後も、1995年までは米国のシェアはあまり伸びていない。日本を除くアジア地域がシェアを伸ばした。

    続いて赤坂氏は、半導体事業収支の変遷を地域別と事業形態別に分析して説明した。

    1. 日系主要半導体メーカー
    2. 米国系主要半導体メーカー
    3. 主要なファブレス半導体企業
    4. 大手半導体ファウンドリ
    5. サムスン電子

    の5つに分けて過去20年の利益率を比較した。「がく然とするのだが、日米半導体貿易摩擦が起こっていた時期を含めて、日系半導体メーカーの利益率は最下位だった」(赤坂氏)。半導体貿易摩擦では、事業収支で勝っていた米国系半導体メーカーが、日本市場のシェア20%を外国系半導体メーカーによこせと要求したことになる。

    地域別と事業形態別にみた半導体事業収支の推移(1981年~2001年)。日系主要半導体メーカーの利益率は常に低いレベルにあった。サムスン電子は高い利益率を維持してきた。

    そして現在の半導体事業収支はどうかというと、Intelやサムスン電子などは30%と高い利益率を上げている。ルネサス テクノロジやNECエレクトロニクス、東芝などの日本の大手半導体メーカーは高くても10%の利益率にとどまっており、収益の格差が大きい。

    主要な半導体メーカーの利益率(2003年)。日本の半導体メーカーでは、ロームの高い利益率が目立つ。

    そして半導体メーカーの売上高ランキングの推移と、半導体製造装置メーカーのランキングの推移を赤坂氏は示した。半導体メーカーでは日系企業の退潮が目立つのに対し、半導体製造装置メーカーでは日系企業が現在でも健闘している。トップ10中の5社が日系企業である。

    半導体製造装置(ウエハープロセス装置)メーカーの売上高ランキング(1985年~2004年)。赤色の帯が日系企業、青色の帯は米国系企業、黄色の帯は欧州系企業。

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