【レポート】
富士通らが中心になって以前から推進しているコンピュータのアーキテクチャ「IP-Processor」に関する業界団体であるIP-Processorコンソーシアムが、7月11日に東京・蒲田の富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにおいて全体会議を開催した。同会議では今後のIP-Processorのロードマップについての解説が行われたほか、実際にIP-Processorを導入した様々なシステムが紹介された。
IP-Processorのロードマップについては、富士通・産業ビジネス本部ITプロダクトビジネス統括部担当部長の品川雅之氏より、現在の製品群と今後の開発の方向性について解説がなされた。
現在IP-Processorの主力製品となっている、TransmetaのEfficeonを搭載した「IPC60」シリーズについては、既に本体「IPC60G」や、HDDやFDD、PCカードスロット等を搭載したシャシーにIPC60Gを載せた「IPC60 ボックスシリーズ」などが発表されているが、品川氏はこれに加え、19インチラックにフルにIPC60Gを搭載した「IPC60Rack(仮称)」をこの秋頃から発売する予定があることを明らかにした。
これは現在のデータセンタにおいて、一般的に1ラックあたりの電源用量が20~40A程度しか提供されていないのに対し、一般的な1Uサーバが1台当たり200W程度電源を食ってしまうため、実際には1ラック当たり10台程度しかサーバを収容できないという問題があることに対応したもので、「IPC60なら1台あたりの消費電力が20W程度なので、19インチラックにフル実装した場合(160ユニット)でも消費電力は3.2KVAで済む」(品川氏)ために大量のCPUを搭載できるという。またIPC60はユニットの奥行きが小さいことから、電源容量さえ許せば19インチラックの背面にもユニットを設置することでさらに高密度の実装も可能だとのこと。
これ以外にも、IPC60をベースにした分散ストレージ「IP-Storage540」(詳しくは後述)や、日本電算機(JCC)の手によるThin Client「Quality Client System(仮称)」などの開発が進んでいるとことが語られた。
ただIPC60には、昨今のTransmetaの経営不振などの影響から、Efficeonの開発が今後どうなるのかという点での不安がつきまとうのも事実(品川氏は「NDAの内容を含むため詳細に関してはお話できないが、少なくとも供給に関しては今後も継続されることを確認済み」と語った)。とはいえx86ベースのプロセッサでファンレス動作が可能なものというと選択肢が極めて限られる。そこで現在富士通ではIPC60の販売を継続しつつも、次期モデルとしてAMDのGeode NXを搭載した「IPC50」の開発を進めているという。
品川氏によると、IPC50は「CPUがソケット装着になるのでどうしてもサイズがやや大きくなる」という問題点があるが、性能的には現行のIPC60とほとんど変わらないものができる見込みであり、またサイズが大きくなったことを逆手にとって「PCIバスをそのまま搭載するなど、I/Fの拡張性を考慮した」とのこと。開発はかなり進んでいる模様で、同氏によると、早ければ「この夏にもテスト品を公開できるのではないか」とのことだ。
将来的には同じくGeode NXを搭載した「IPC70」や、AMDのモバイル向け64bit CPU「Turion」を搭載した「IPC64」を開発する計画もあるとのことだが、特にIPC64に関しては「64bit機ではメモリの搭載量が増やせるのがメリットだが、一方で512MbitのRAMは1個で5Wぐらい電力を使うので、低消費電力という観点からはあまりメモリを増やすわけにもいかない」(品川氏)との問題があり、まだどのような形で提供されるかは流動的な部分も大きいようだ。
さて、この日の発表の中で最も注目を集めたのが、前述したIPC60ベースの分散ストレージ「IP-Storage540」だろう。これについては富士通研究所の磁気ディスク装置研究部主任研究員である太田光彦氏がその概要を解説した。
IP-Storage540の内部構造は、1台のブレードの中に制御用ノードとしてIPC60Gを1台と、400GBの3.5インチHDDを5台搭載したものが基本単位となっており、1つの筐体にはこのブレードが8台搭載され、合計16TBの容量を持つ。HDDは全てSerial ATA接続となっており、RAIDは一切使用せず全てソフトウェアによるコントロールを行っているとのこと。1ブレード当たりの消費電力は想定値が68Wだったのに対し、実測値では「実際には5台のHDDのうち同時にアクセスするのは2台のみ」(太田氏)という理由もあって約半分の34Wに留まっているほか、温度変化も外気温+7℃程度に収まっているというデータが示された。さらにこの筐体を複数並列に接続することで容量を拡大することも可能。
内部では、各ブレードに搭載されたCPUがそれぞれグリッドを構成して障害を相互監視するようになっており、あるブレードに障害が発生した場合でも自動的に他のブレードにデータが引き継がれ復旧が行われる他、ノードが増減した場合でも自動的にそれに対応した容量の増減が可能だという。またソフトウェア的にも、ファイルサーバソフトとしておなじみsambaはもちろんのこと、富士通研究所が開発した「オーガニックストレージ」などに対応している他、東京工業大学の横田治夫教授らが開発している「自律ディスク」システムへの対応も進められていると語った。ユーザはもちろんストレージの内部構造を知ることなく、透過的なアクセスが可能だという。
今後は具体的な性能検証や、特に放送用のストレージとして現在引き合いが来ているためそれに向けた開発、またハードウェア全体の重量の軽減のために2.5インチHDDを採用したバージョンの開発などを進める意向だという。
これ以外にも同会議では、IP-Processorの初代モデル「IPC10」ベースの携帯電話向けメール配信システム「シエラエンジン」や、KDDIが開発したIPC60ベースのSIPゲートウェイ(KDDIの法人向けIP電話とCisco CallManagerの間のプロトコル変換を行う)などが紹介され、IP-Processorの応用範囲の広がりを感じさせる会議となっていた。
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