【レポート】

Webアクセシビリティシンポジウム - デザイン・フォー・イーチが今後の課題

2 声を上げたい利用者と、声を聞きたい製作者

    石田優子  [2005/06/15]

    制作サイドであるNECデザイン・ソリューションデザイングループの佐藤裕之氏からは、アクセシビリティ向上における企業側のメリットとして、顧客が使いやすくなるという点以外にも、SEO、ブランドマネージメント、雑誌などのメディアでのプロモーション効果などが挙げられた。また、制作会社としても、アクセシビリティのスキルがあるということで、企業や団体からの受注につなげることができるという。クリエイターとしてどうすべきかについては、ユーザーを知ること、何をすべきかを知ることが大切、とされた。例えば、視覚障害といっても、Webの閲覧に音声読み上げソフトを利用している人もいれば、画面拡大ソフトを使っている人もいる。そして弱視、ロービジョンといっても、全体がぼやけて見える人や、非常に狭い範囲しか見えない人、白内障の人らがいて、それぞれニーズが異なる点に留意する必要があるという。

    「視覚障害者の部 パネルディスカッション」参加者

    「インターネットを利用していて困る点は?」というパネラーへの質問には、音声ブラウザがPDFに対応していない、背景を写真画像にして文字を入れている時に見えにくいことがあるので配慮してほしい、W3Cのアクセシビリティ指針には画像に対してalt属性で短い説明を加え、長い場合はlongdesc属性で説明ページを付けることが推奨されているが、未対応のブラウザも多いなどの回答があった。

    PDFについては、弱視の子供が教科書を全部PDF化し、パソコンでPDF文書を拡大して使っているという事例も紹介され、音声読み上げソフト利用者とそうでない人の場合で、困る点が異なっていると指摘された。ある機能がある人には役に立つが、ある人には役に立たないという問題を解消するために、ここでもデザイン・フォー・イーチの必要性が求められた。また、HTMLの文法チェックで100点とされたWebサイトでも、70点や80点とされたサイトのほうが使いやすい場合も多く、単なるチェカーの診断では認識されにくい心のこもったユーザーへの配慮が求められた。

    「第2部 シニア・シルバーの部 パネルディスカッション」では、アクティブにインターネットを使いこなしている女性から、バスや列車の時刻表といった旅行関係の情報を得たり、病気や病院のサイト、患者、家族の書き込みを参考にしたり、さまざまなイベント情報を知るのに便利に感じているという意見が出た。ただ高齢者は目が疲れやすいので、長時間画面を見続けているのは辛いという。

    一方で、メールを利用する程度のライトユーザからは、操作が難しいため、身近で情報提供してくれる人が欲しい、教えてもらってもすぐに忘れてしまうといった声があった。行政のIT講座などではインターネットの講習時間が短すぎて、習得しきれないという。意外に思ったのは、そのようなシニア向けIT講座でディズニーランドなどを紹介すると好評だということだ。子供とその両親が出かけていて、足腰の弱った高齢者は家で留守番という場合が多い。そのような場合、子供たちが行っている場所のウェブサイトを見ると話題を共有できて楽しいという。

    ほかに、インターネットを使う時に困ることとしては、第一にURLやメールアドレスなどを入力するのが難しいという意見が出た。英語の大文字と小文字を打ち分けられなかったり、アンダーバーやハイフンの違いがわからなかったりして、会員登録のID取得に30分以上かかってしまい、セッションがタイムアウトになってしまう場合があるという。また、ダウンロードの途中で使用許諾などのメッセージが出てくると、その小さな文字を隅々まで読もうとし、メッセージをプリントアウトして相談に来たり、セキュリティのアラートが表示されると、パソコンが壊れてしまったのではないかと恐怖を感じる人もいるということだった。

    また、オンラインショッピングではカートに入れてから買い物を完了する手続きが分かりづらく、同じショップで3点買うのに、1点ずつ個別注文してしまって、発送料金を3回払ってしまうというようなミスをする人もいたという。あるいは、生年月日は西暦での入力が多いため、和暦でしか覚えていない人が戸惑う、都道府県の長いプルダウンメニューから目的の県を探すの大変という意見もあった。

    これらは、特に初心者を中心とするインターネットユーザー全般が遭遇する問題であり、今後も広く取り組まれる課題といえるかもしれない。

    「シニア・シルバーの部 パネルディスカッション」参加者

    会場からの質疑応答では、自社でアクセシビリティの向上に動き始めているが、自社サイトに利用者からの声が来ないので、どうしたらよいのかわからないといった声があった。声を上げたい利用者と、声を聞きたい制作・運営者。両者の思いがすれ違っている状態にある中、利用者がまずは声を上げて行くという意味で意義のあるシンポジウムとなった。

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