【レポート】

LinuxWorld Expo/Tokyo 2005 - Linux採用でさらに高機能化する携帯電話

 

LinuxWorld Expo/Tokyo 2005の3日目、基調講演に立ったのは、NTTドコモ移動開発部ソフトプラットフォーム開発担当無線技術開発担当の照沼和明担当部長。照沼氏は、携帯電話用のOSとしてドコモが推奨するLinuxについて、そのメリットなどを解説した。ドコモは、Linuxに加えてSymbianも推奨しているが、今回はLinuxWorldにおける講演ということで、Linuxに絞った話題となった。

NTTドコモの照沼和明氏

 

冒頭、照沼氏は携帯電話の現状について説明。照沼氏によれば、世界の携帯電話契約数は約17億に達し、4~5年前と比べると3倍にまでふくれあがった。人口普及率は25%だという。昨年6月の時点で、アジア太平洋地域が6.2億(普及率28%)、西欧が3.6億(同85%)、北米が1.8億(同56%)、日本が8,700万(同57%)という契約数で、西欧が飽和に近い反面、アジア太平洋地域では伸びが期待でき、特に中国の契約数は3億、普及率は24~25%だという。「ポテンシャルが高いのはアジアや中南米で、大きな成長が期待できる」(照沼氏)。また、高機能携帯電話も伸びており、特に日本で普及しているようだ。

ドコモの高機能端末であるFOMA端末は、順調に契約数を伸ばしており、2005年4月末で1223万契約、今年度末までには2千数百万契約に達する見込みだという。

携帯電話は、当初は音声通話のための通信インフラという位置づけだったが、1999年にドコモがiモードサービスを始めて以降、次第にITインフラへと変わっていき、最近ではカメラ搭載から始まり、赤外線、非接触IC「FeliCa」、外部メモリ、バーコードリーダーとさまざまな機能を詰め込んでいき、「ITインフラから生活密着のライフインフラ」(同)となってきている。

そうした高機能端末の普及に伴い、携帯電話の開発はいっそう複雑になってきている。開発期間や開発コストなどの問題に対して、端末メーカー側は提携関係を結ぶことでそれに対応しようとしており、たとえばNECとパナソニックモバイルコミュニケーションズ、三菱電機と東芝、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズとシャープ、カシオ計算機と日立製作所による合弁会社、といった具合に、各社が開発期間やコスト削減を図っている。

ドコモ側でも、開発コストの投資などでバックアップを行っており、SymbianとLinuxを端末の推奨OSとし、それぞれのOS向けのプラットフォームを開発、ソフトウェアの基礎部分を共有することで、端末メーカーの開発負担を減らそうとしている。

新サービスの開発や、従来サービスの継続・拡張を続けてきた結果、携帯電話のソフトウェアのサイズは5年前と比べて約15倍にまで拡大、「サーバ系システムと同等」(同)にまで大型化してしまった。「4~5年前の開発手法では限界」(同)で、新たな手法を取り入れざるを得なくなってきている。

従来使われていたのはリアルタイムOSのμITRONなどだが、メーカーがメンテナンスを行い、メーカー開発の独自アプリケーションとソフトウェアベンダー開発のモジュールを組み合わせるなど、「バラバラに開発」(同)していく仕組みであり、リアルタイムOSが提供する機能の少なさ、アプリケーションを追加、拡張したことによるシステム全体に与える影響の大きさも課題だった、という。

それに対するのがLinuxの採用だ。NEC、パナソニックモバイルと共同開発したLinuxプラットフォーム「MOAP(L)」は、ミドルウェア、アプリケーションフレームワーク、通話機能などのテレフォニーAPI、iモード関連などのモジュールを共通化し、開発の効率化、短期間化によるメーカーの負荷軽減などを狙う。

Linuxを搭載したNECの携帯電話「N901iC」(写真左)と 「N700i」。最初のLinux搭載携帯電話だった「N900iL」は、当初「不安定という問い合わせもあった」(照沼氏)が、端末開発を重ねていくうちに安定性は向上しているようだ。このあたりについても「Linuxはこれから」(同)として、今後に期待しているそうだ


Linux自体はMontaVista Linuxを採用、プロセス管理、ファイルシステム、プロトコルスタックなどを備えた高機能OSへ移行することで、従来のように電話機能などの基本的な部分まで、独自に機能を追加する必要がなくなる。また、今まで1つのCPUしか使えなかったところが、複数のCPUに対応、通信部分とアプリケーション部分を分離することができるようにもなった。

オープンソースソフトウェアであるLinuxは、コミュニティによるメンテナンスが行われ、新機能の追加も早く、モジュールが無償で提供され、開示されているソースコードによりメーカー側の変更もしやすい、といったメリットが存在。Linux技術者も多く、教育コストも削減できる。デジタル家電にもLinuxを搭載する例が増えていることから、「今後、デジタル家電ソフトとの連携も推進できる」(同)という。

携帯電話の基本的な部分が共通化されることで、メーカー側は独自のUIなど、他社との差別化となる機能のような「高いレイヤー」(同)の開発にリソースを集中できる。PC用シミュレーターも提供され、携帯電話特有の着信や端末の開閉、といったイベントも確認できるので、ハードウェアと同時にソフトウェアを並行開発できるそうだ。

高機能OSのLinuxを使ったことによるアプリケーション例。これは地上デジタル放送のデモだが、映像を画面右上に表示しつつ、Webブラウザでサイトを表示、サイトのニュースをJavaアプリに読み込む、というマルチタスクをこなしている

こちらは音声認識により端末 内のヘルプを表示する音声 認識機能のデモ。今年1月 に発表されたもの


ドコモでは、MOAPをソフトウェアベンダーや端末メーカー、チップセットベンダーへ提供、それぞれの製品を組み合わせて完成した携帯電話を事業者(ドコモ)が販売するという「エコサイクルを形成したい」(同)考えで、さらに、MOAPを海外ベンダーなどへも提供することも視野に入れているという。

MOAPにより、メーカーが開発しやすい環境を整え、特徴的なアプリケーションの開発を促進、ドコモのサービスの幅を広げていく「Linuxエコシステム」を構築することで、効率化や品質向上(Quality)、コストの削減(Cost)、新サービスと同時期という早期の端末提供(Delivery)という「QCD」の実現を目指す。「エコシステムを活性化し、多種多様な端末を提供」(同)することが狙いだ。

なお、Linuxを採用しているため、GPL/LGPLに抵触する部分のソースコードについては、「要望があれば提供する」と、LinuxWorld展示会場のNECブースの担当者は話していた。ただし、現時点でそうした要望があったとは「聞いていない」そうだ。

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