【レポート】
今後の作業のほとんどは、EURidの手腕にかかっている。5月2日にEURidが発表した今後の予定では、サンライズ期間までの作業として、レジストラ合意書の作成、レジストラ認定、登録や紛争解決などの各種ポリシー策定などを挙げている。この中には、ECの承認が必要なものもあり、登録ポリシーは2カ月の公開期間が必要だ。また、EU特有のステップとして、それらをEUが公用語として認めている20カ国語に翻訳する作業もある。これらの事務作業のほか、登録ソフトウェアなど技術作業も残っている。
「現在フル回転中」というEURidのHoward氏は、「今月末にもレジストラ認定を開始し、レジストラを公開する予定」と語る。レジストラ合意書は完成しており、まもなく公開する予定だ。すでに、EU25カ国を中心に2,500社以上のドメイン登録業者が関心を寄せているという。
その後、いよいよサンライズ期間となるが、「.eu」では2つのフェイズに分けて実施される予定だ。期間は各フェイズとも2カ月。第1フェイズに公共機関と商標所有者の申請を受け付け、第2フェイズには対象を加盟国の法律で認められた他の権利を有するものに拡大する。合計4カ月のサンライズ期間後、早い者勝ちの一般登録がスタートする。
EU特有の問題は、公用語の数だけ必要とされる翻訳だけではない。EUでは、25カ国ある加盟国がそれぞれに商標に関する法を持つため、これらをどうするかでも揉めそうだ。たとえば、EU加盟国内でまったく同じ商標を持つ組織が2つ以上存在するかもしれない。また、ある国では商標として登録できるが別の国では登録できない言葉があった場合、どうなるのか? 例を挙げると、A国では「paper」は一般的すぎるため商標登録できないが、B国では登録できるとすると、平等といえるのか?
Howard氏は、「EUに加盟するためには各種の標準枠組みを遵守していることが前提となっている」と説明、後者のような法の違いによる混乱はないと見ているようだ。一方で、前者の場合(2つ以上の国から商標保有者として名乗りが挙がった場合)は「早い者勝ちになる」とのこと。だが、これだけでスムーズなサンライズ期間になるとはEURid側も想像していないようだ。Howard氏は、「『.eu』成功はサンライズ期間にかかっている」と繰り返し述べるが、この言葉がそれを強調している。
EURidおよびEUは、事務・技術作業を進めるという最優先課題のほかに、もう1つ重要な使命を負っている。「.eu」を人気ドメインにすることだ。そのためには、広報活動と、適度な牽制も必要だ。
牽制というのは、スタート前の混乱を防ぐこと。現在、インターネットで「.eu」を検索すると、"ドメイン先行予約"をうたう業者の広告がヒットする。EURidやEU側はこれらの動きに対し、「認定レジストリはまだ決まっていない」として警告を出している。
だが、一部ですでにドメイン取得合戦は白熱し始めているようだ。先行予約広告を出しているルクセンブルグに籍を置くある会社に問い合わせてみたところ、すでに事前登録件数は万単位に上ったという。この業者は、"事前登録は無料、決定した場合も辞退可能"というポリシーで、一応登録しておこうかという人も大丈夫とのこと。同社のように、事前登録は無料とする業者が多いようだが、最初から料金を徴収する業者も存在する。
一方の広報活動は長期的な取り組みとなる。「.eu」は誕生するまでに時間がかかっているうえ、登録料は国別ドメインより高額になると予想されている。高い値段を払ってでも取得・維持する価値は何か、それをユーザー側に理解してもらうことが必要だろう。---これは当初から言われてきた事柄だ。そもそも、加盟各国はすでに、「.de」(ドイツ)「.uk」(英国)などのccTLDを持っており、多くの企業はすでに何らかの形でドメインを取得しているはずだ。それに加えて、あるいはそれを捨てて「.eu」を取得する必要が、巨大なEU以外にあるのだろうか? 「.eu」を推進するECのサイトを見ると、「.eu」は国別のccTLDと対立するものではなく、国別ドメインよりも分野別ドメインを取得したいと思っている人にメリットがある、と見ているようだ。
EURidのHoward氏によると、現在問い合わせが多いのは、昨年5月にEUに加わったハンガリーなどの新加盟国で、業種別では旅行業が圧倒しているという。インターネットでの商取引においては、チョコレートから自動車まで、各種オンライン小売店からも高い感心が寄せられているそうだ。もちろん、家族の苗字を登録したいのだが、という問い合わせも多いという。
「.eu」ドメイン動向を見てきた英国のジャーナリスト、Kieren McCarthy氏は、この6年間をまとめて、「インターネット時代における行政側の意思決定プロセスの時差が露呈した」と述べる。「現在、企業はとりあえずキープするために購入しようと準備している状態。だが、取得した『.eu』をどう活用するのか、その目的についてはまだ見い出していないようだ」(McCarthy氏)。「.eu」が欧州の人々にとって「.com」並の、あるいはそれ以上の魅力あるドメインになるのだろうか?---まずは、その答えがそう長くないうちに出ることを祈ろう。
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