【レポート】

いよいよ動き出す「.eu」は人気ドメインになれるのか?

1 6年以上待ち続けた「.eu」、その軌跡

 
  • <<
  • <

1/2

ブリュッセルのマーケット広場

4月21日、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は、「『.eu』へのカウントダウンが始まった」と述べ、運用開始に向けて、トップレベルドメイン(TLD)「.eu」が年内にも本格的に動き出す見通しを発表した。一般が利用できるTLDは、これまで国別(ccTLD)と分野別(gTLD)の2種類だったが、「.eu」は国でも分野でもない、地域を表わすTLD。今後さらなる地域ドメインの誕生のきっかけになるのでは、と期待がかかっている。だが、最初に「.eu」構想が公式に持ち上がったのは、実は6年以上前のこと。長い道のりを経てのスタートとなる。

EUより「.eu」の登録管理を業務委託されているNPO「EURid」(European Registry of Internet Domain names)のプロジェクトマネージャ、Fay Howard氏は、「なんとしてでも、年内にサンライズ期間のスタートを実現したい」と意気込む。サンライズ期間とは、公共機関や商標保有者が優先的にドメイン登録できる期間のこと。すでに5月2日にはルートDNSへの登録が完了しており、予定通りサンライズ期間が年内に開始されれば、来年には「.eu」を含むURLがインターネット空間に登場しそうだ。

ヨーロッパのプライド、「.eu」

「.eu」誕生はEUにとって、さまざまな意味で大きなステップとなる。どうしてEUが「.eu」設立にこだわったのか、まずはそこを見てみよう。

EUの狙いは、単一通貨「Euro」の導入に代弁されるように、北米やアジアに対抗する経済体を形成すること。商取引の場としてのインターネットの可能性は未知数で、サイバースペースで「EU」という"アドレス"を獲得することは、EUの目的実現の上で大きな意味を持つ。そこで、EUは1999年に採択した「eEuropa 2002」という情報戦略体系の下、「.eu」の設立をアクションプランと位置づけた。

この重要な背景として、欧州諸国のプライドがある。現在、gTLDとしての「.gov」「.edu」などは米国組織のものであって、日本をはじめ米国以外の国はTLDとして利用できない。現在、フランス政府は「gouv.fr」、英国政府は「gov.uk」を利用している。EUの中ではこの状況に対し、"誰のものでもないはずのサイバー空間が、ドメインに関しては米国中心の仕組みとなっている"と見る向きもあった。「.eu」設立は、見方によっては政治的な要素も含まれているのだ。

ECが当初発表したワーキングペーパーを見ると、その他の「.com」などのgTLDに関しては、「取得が難しい」とある。この理由としては、利用できるドメインがすでに限定されていること(ドメイン取得は早い者勝ち。インターネット整備が米国より遅れた欧州はドメイン取得でも先を越された)、商標ポリシーが欧州の競争法と一致していないことの2点を指摘している。このようにして、さまざまな期待と思惑をもとに「.eu」構想は生まれたのだ。

構想から6年。長い、長い道のり

ブリュッセルにある欧州連合(EU)本部前

では「.eu」誕生にどうしてこんなに時間がかかったのか? これまでの経過を以下にまとめてみる。

EUにおける政策決定プロセスを簡単に説明すると、ECが政策をとりまとめて提案し、決定機関である閣僚理事会と、諮問・共同決定機関である欧州議会がそれらを決定する。前段で述べたように、「.eu」がEUのアクションプランとなったのは1999年。2000年2月、ECは「.eu」の重要性や実現性を検証・分析したワーキングペーパーを公開し、一般からの意見を募った。その後、ECは「.eu」設立を欧州議会と閣僚理事会に提案、実現に向けて必要なステップを明示し、この年の暮れには「.eu」設立に対し賛同を得た。

同時にICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)とのやり取りも進めた。ccTLDは、国際標準「ISO 3166-1」が制定した各国のコード(アルファベット2文字)を利用することになっているが、「EU」は「ISO 3166-1」にリザーブされているものの、EUは国ではない。そこでECはまず1999年、ISO側にTLDとしてのEUコードの利用を申請し、同意を得る。その後2000年7月、EC委員のErkki Liikanen氏はICANNに宛てて、「.eu」導入意思を示した書簡を送った。これに対しICANN側は、ICANNの既定ポリシー範囲内ではないことから「ポリシーアクションが必要」と説明し、「優先扱いする」と回答した。

さてEU側はというと、「.eu」立ち上げで一応の意見の一致を見た後も、作業は極めてゆっくりと進んだ。加盟国が「.eu」に対して共通見解を発表したのは2001年6月。その後議会に提出し、5カ月かかって修正作業を行った(EU側は、これを「(加盟国、委員会、議会、閣僚理事会の)共同意思決定プロセスにおいて、通常のステップ」と説明している)。11月にEC側が戻された修正案を認め、議会と閣僚評議会が承認、2002年3月に正式に「.eu」設立が発表された。当時、メディアは"2003年にも「.eu」がスタートする"と騒いだ。

だが予想は大きく外れた。2002年4月、議会と閣僚理事会は「.eu」実装のための法規制を可決、正式にレジストリ選定するとなったわけだが、この作業が実際に始まったのは9月。手を挙げた業者は予想外に少なかったといわれており、数少ない候補からの選定だったはずだが、ベルギー、スウェーデン、イタリアの3社のレジストリが形成するコンソーシアム、EURidと正式に契約したのは、2004年10月。「通常のステップ」とはいえ、1年以上かかったことになる。

その後はEURidとICANNとのやりとりとなるが、EURidの「.eu」申請に対し、ICANNが承認を出したのは、5ヵ月後の2005年3月末のこと。そして現在に至るわけだ。構想から6年、その間、欧州にはEuroが導入され、EU加盟国は15から25カ国に増えた。ドメインも、「.info」「.biz」など7種のgTLDが導入されている。

このように、「.eu」が難産となった理由は、加盟各国の合意を得ながら進めるという理念ゆえに、決定から実行するまでに時間がかかるEUの執行プロセス、その運営体制に"不透明"などと批判の声が上がることもあるICANNの両方に見ることができる。

  • <<
  • <

1/2

インデックス

目次
(1) 6年以上待ち続けた「.eu」、その軌跡
(2) 「.eu」は成功するのか? EU特有の問題


IT製品 "比較/検討" 情報

転職ノウハウ

あなたが本領発揮できる仕事を診断
あなたの仕事適性診断

シゴト性格・弱点が20の質問でサクッと分かる!

「仕事辞めたい……」その理由は?
「仕事辞めたい……」その理由は?

71%の人が仕事を辞めたいと思った経験あり。その理由と対処法は?

3年後の年収どうなる? 年収予報
3年後の年収どうなる? 年収予報

今の年収は適正? 3年後は? あなたの年収をデータに基づき予報します。

激務な職場を辞めたいが、美女が邪魔して辞められない
激務な職場を辞めたいが、美女が邪魔して辞められない

美人上司と可愛い過ぎる後輩に挟まれるエンジニアの悩み

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事

重要性が増す企業でのCSIRT構築および運用における実態調査
[17:09 7/1] 企業IT
JAL×ポンタ「JAL Pontaカード」誕生 - "ポンタパイロット"を機内でも配布
[17:01 7/1] 趣味
米IBM、インメモリーデータベースの新バージョン「IBM DB2 V11.1」
[16:59 7/1] 企業IT
日産「キューブ」一部仕様向上、エントリーモデルに本革巻きステアリングも
[16:50 7/1] ホビー
【レビュー】Windows 10 Insider Previewを試す(第58回) - 7回のビルドアップを行った2016年6月最後のビルド14379
[16:46 7/1] パソコン

求人情報