【レポート】

南アフリカより愛をこめて - ケープタウンでPC泥棒に怯える日々

1 南アフリカってどんな国?

    伊達くう  [2005/05/19]

    日本と南アフリカ共和国は、14,000km以上離れている。南アフリカ(以下、南ア)に関する情報が散発的にしか報じられない日本では、この国は実際の距離以上に遠い国だろう。南半球に位置する、11の公用語と、主に黒人と白人と「カラード」と呼ばれる混血人種から成り立つ、様々な文化や慣習がミックスされた「虹の国」。アフリカ大陸の中で経済的・技術的にも発達している、と言われている国。

    5カ月前にこの国にやってくるまでは、その程度の知識しかなく、ぼんやりとしたイメージしか沸かなかった。実際に暮らし始めてからは、いろんな意味で想像を裏切ってくれるこの国で、小さなことに驚く毎日。驚いているだけじゃもったいない、ということで、ここ南アについてレポートする。

    この先端がかの有名な喜望峰

    大自然と、都会的な雰囲気と、過去の痛みを感じる南アフリカ

    南アには、3つの首都がある。行政首都のプレトリア(10月に首都名が改名される見通し)、立法府首都のケープタウン、司法首都のブルームフォンテン。そして首都ではないが、南ア最大の経済都市、ヨハネスブルグも有名である。こういった大都市は、インフラの整備が進んでいて都会的な町。私の住むケープタウンは、アフリカと聞いて日本人が思い浮かべる「広大な大自然と野生動物たちがいっぱい」というアフリカのイメージよりも、西ヨーロッパとアメリカ西海岸がミックスされたような雰囲気で、日本人にも馴染みやすい所なのだ。

    ケープタウン、ビルが立ち並ぶビジネス街

    高い青空に届きそうな高層ビル、整備された道路、所狭しと連なる商店やレストラン、石を投げれば……というほど数多い大規模なショッピングセンター。美術館やギャラリー、映画館などの文化施設は充分にあるし、カルチャーイベントも豊富。世界各地の料理が食べられるレストラン、国内外のセレブが訪れる洒落たクラブやバーも簡単に見つけられ(もちろん鮨屋も!)、平日でもカジノは大賑わい。インターネットカフェは町のいたるところにあるし、ワイン造りの盛んなこの地方では、ワインバーも多い。天気のいい日にはカフェのテラスでノートPCを開いて、ケータイ片手に忙しそうなビジネスマンの姿も当然のように存在するのだ。そして、めちゃめちゃ美人で、スタイル抜群で、ファッショナブルな女性が多い。女性の私でも見とれてしまうほどの美女の数の多さに、この国の女性はみんなモデルクラブ所属か ? と錯覚してしまったくらい。実際、南アはモデル産出国とも言われている。

    それでも、南アが洗練された町並みだけで占められているわけではない。やっぱりアフリカ、大自然が美しい ! と感じる壮大な景色にももちろん出会える。ケープタウンの中心には、その象徴である標高1,088mのテーブルマウンテンが町を見守るようにそびえ立つ。1488年にポルトガル人のバートロミュー・ディアスが発見し、その後1497年にバスコ・ダ・ガマが通過した喜望峰から果てしない海を眺めると、まさに地球の大きさを感じることができる。沿岸ではマリンスポーツが楽しめ、私はまだ行ったことがないけれど、サファリでビッグ5(ビッグファイブと読もう)と呼ばれる、ゾウ、ライオン、サイ、ヒョウ、バッファローといった動物たちの自然の姿を眺めたり、北部に広がる砂漠を横断したり、ホエールウォッチングをしたりと、自然が楽しめる場所には事欠かない。南アは手軽に大自然も都会的な雰囲気も味わえるお得な国なのだ。

    霧と太陽の光に包まれるケープタウン

    どこまで行っても青い! 果てしなく広がる水平線

    南アフリカではペンギンの大群にも会える

    テーブルマウンテンから見下ろすケープタウン

    ただし、美しい景色だけが広がっているわけではない。この国で長らく続いていた卑しきアパルトヘイト政策が、法律上から消滅したのが、1991年。ネルソン・マンデラ氏が大統領に就任し、全人種選挙が実施されたのが、1994年。アパルトヘイトが廃止されてから、まだたった10年程しか経っていないのだ。人種的差別こそ影を潜めてきているが、国民の貧富の差は大きく、タウンシップと呼ばれるアパルトヘイト時代に作られた黒人用居住区は、今でも国内のあちこちに点在している。高速道路に沿って続く、板を切り貼りしてできた家々。おもちゃみたいだ、と思うほどの有様で、見ているとなんだかずんと心が重くなる。でも、これがアパルトヘイト10年後の彼らの現実。

    また、この貧富の差の結果ともいえる強盗や殺人、強姦などの犯罪が多いことでも南アは世界的に有名だ。住宅街でも銃声が聞こえたり、ギャング同士の縄張り争いによる殺人事件がタウンシップ内で起きたりすることも珍しくはない。ケープタウンは国内では安全な町だけれど、やはりよほど慣れた場所でなければ昼でも一人歩きはできない。住宅地の家々の周囲には、とげとげしい鉄線が張り巡らされ、すべての窓にアラームが取り付けられている。民間の警備会社のパトロール車が昼夜を問わず巡回している。怖い顔をした番犬は、門に近寄るものにはなりふりかまわず吠えまくる。ちょっとやり過ぎじゃない ? と思えるほどの警戒ぶりだけれど、人口10万人当たりの凶悪犯罪発生率が世界一というこの国の現状を見ると、病的に慎重になるのもわかる。ああ、平和な日本がうらやましい。

    住宅は触ると痛い鉄条網でガードされている

    ここ最近では、住宅地でのノートPC泥棒が頻繁に起きている。住民の就寝中あるいは留守を狙って、アラームが鳴り響く中、すばやくノートPCのみを盗んで去る。その所要時間は1分程度というプロっぽい手口。かなり入念かつ計画的な犯行とみられる。私の住む近所では、一晩に2、3件は起こるというから怖い怖い。私のノートPCも狙われていないか、と内心、心配だったりする。そんな中、町の広場の屋外マーケットで破格的な値段でノートPCが売られているのをよく見かける。なんだかちょっぴり怪しげな人たちが売っているのを見ると、盗難PCがこうやって堂々と出回っているのか? と、疑わずにはいられないのだ。

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