【レポート】
昨年12月26日に発生したインドネシア・スマトラ島沖地震は、直後に生じた大津波により、インド洋沿岸の広いエリアに甚大な被害を出した。その時、海底では何が起こっていたのか? 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は16日、横浜研究所の一般公開イベントにて公開セミナーを行い、無人探査機などを使った約40日間の海底調査について、その最新結果を報告した。
速報結果について報告したのは、今回の緊急調査の責任者である地球内部変動研究センター 海洋底ダイナミクス研究プログラム・プログラムディレクターの徐垣氏。冒頭、氏はこの地震について「対岸の火事ではない」と指摘、地震多発国である日本にとっては、必要なデータをできるだけ収集し、防災に役立てることが重要との認識を示した。
まず、この地震の概要だが、余震域の大きさが南北に長い約1,200×200kmと、広大な範囲であったことが特徴だ。遠地地震記録(各国の高感度地震計の記録)からの推定では、まず震源で約70秒間に渡ってM8.2相当の地殻破壊が進行。その後、破壊は北に伝播し、M9.1に相当する地震モーメントが解放された。ユーラシアプレートとインド・オーストラリアプレートがぶつかるこの地域では、これまで記録にあるだけでも19世紀後半から何度も大きな地震が起きているが、それぞれは単独で発生しており、今回のように一度に破壊が進むようなことはなかった、という。
これにより大きな津波が発生したが、たまたま2時間後にインド洋を通過した人工衛星によって、その波高が観測されていた。観測データを解析することで、津波を引き起こした海底面の上下変動が計算され、それによると、東側で陥没、西側で隆起した様子が明らかになった。同機構では今回、調査場所の選定にあたり、震源地域ではなく、この隆起の大きかったエリアを選んだ。これは、最も海底が大きく動いたところを調べることが、「なぜこのような大きな地震、大きな津波が生じたかを知る上で非常に近道になる」(同氏)のだからだそうだ。
こういった調査では、(1)地震直後の様子が生物や海流などによって乱されてしまう(2)時間とともに余震は少なくなり観測が難しくなる--などの理由により、少しでも早く実施することが望ましい。この地域は海賊が多いため、海底の様子もほとんど知られていない状態だったが、急遽、海洋調査船「なつしま」を派遣、2月18日~3月5日、3月10日~19日の2回に分け、海底調査を実施した。内容は、音波による地形調査、無人探査機「ハイパードルフィン」による目視調査、海底地震計の設置などで、インドネシア・ドイツ・アメリカの機関との国際共同研究として行われた。
ハイパードルフィンの潜行は、想像以上の驚きの映像をもたらした。氏によると、これまで日本周辺の海溝型地震での調査では、海底面に破壊の痕跡を見ることはできなかったが、今回初めて、新しい亀裂など、地殻が破壊された様子が明確に確認できたという。また、震動の激しい場所(強震動帯)は点在しながら連なっており、一様な伝わり方ではなかったことも分かった。石が飛び跳ねた形跡も確認されており、これは震動の大きさが重力加速度を超えていた可能性を示唆しているとのこと。
こういった海底観察や地震計の記録などにより、大津波を引き起こした要因が推定された。まだ暫定結果とのことだが、氏によると、(1)プレート境界面において、幅約160kmもの大規模な破壊域が認められており、破壊力そのものが巨大だった(2)地殻の破壊が海底面に近い部分にまで達していたため、震動がより強く伝播した--といった2つの要因が考えられているそうだ。
その後、質疑応答の時間が設けられたが、国内でも新潟・九州と大きな地震が続いたこともあり、多くの参加者から地震に対する質問が寄せられていた。
この結果については、21日に東京・銀座ガスホールで開催される「2004年12月26日スマトラ島沖でなにが起きたか? - スマトラ島沖地震震源域近傍における緊急調査航海報告会 -」でも報告される予定。当日は、地球シミュレータによる地震波伝播の再現結果や人工衛星データを用いた津波の解析結果なども詳細されるので、興味のある人はこちらも参照されたい。
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