【レポート】

日本の音楽配信の未来を映す、韓国MP3事情

4 顧客獲得競争とそれに伴う多様なサービス

    佐々木朋美  [2005/04/01]

    一方、インターネットでの配信形態にもユニークなものが導入されるようになってきた。中でも代表的なものが、DANALの「OHDIO」だ。本来は月3,000ウォンで提供しているストリーミング聴き放題の料金制が、平日の昼の間のみ月2,000ウォンで楽しめるようになる「昼間割引制」、1時間100ウォンの「時間制」、1日500ウォンの「日割り制」、さらに1つのIDを友だちと共有できる月5,000ウォンの「カップル・友だち料金制」などを導入している。

    「インターネットで音楽を聴く人の代表的なスタイルとして、会社員が仕事中にストリーミングで音楽を流すというパターンが挙げられています。それに合わせたサービスを提供したかったことと、競争が増す中、他とは差別化されたサービスの必要性を感じたことが、こうしたサービス導入の大きな理由です」とは、同社インターネット事業部の音楽事業チーム長であるパク・へソン氏だ。

    さらにストリーミングで流された音楽の中から、気に入ったものがあればダウンロードするというユーザーのパターンに合わせ、ヒット曲の裏に隠れつつも優れた曲を推薦したり、アルバムの一括ダウンロードや古い曲の提供を割り引きしたりといった工夫も行っている。

    「ユーザーがサイトで音楽を買うポイントは、そのサイトが音楽数、最新曲、ともに多く、それらがいち早く登場すること。価格はその次です。だからこそ差別化されたさまざまなサービスを提供することで、ユーザー数を増やしていきたいと思います」とパク・へソン氏。今年が有料音楽配信サイトの正念場とも言えるだろう。

    ユニークな料金制度を導入している「OHDIO」は、20~30代の社会人が主なターゲット。こうした層の感性に合うよう、スマートでシンプルな画面作りに徹しているのだという

    DANALのパク・へソン氏。「OHDIOは1カ月で約1万5,000回のダウンロードがありますが、人気のアルバムなどが出るとさらに増えます。やはりユーザーの意識が有料化の方向へ変わってきていることは間違いありません」

    しかしこれまで全く制限のなかったところに、昨年から徐々に台頭してきている有料サービス。果たして無料に慣れたこれまでのユーザーに受け入れられるのだろうか。

    「確かに、いまだ無料サイトや交換ソフトを活用する動きは残っています。しかし、無料で得た音楽データは音質に問題があったり、ダウンロードしたら空のフェイクファイルだった、という事故もたびたびあるので、その点安心してダウンロードできる有料へ移るユーザーも少しずつですが増えています。今は、サービスを提供する側が主導で市場を育てている時期と見て良いでしょう。現在行われているサービスは全て市場の活性化へ向けたもので、市場が大きくなればユーザー・提供側ともに利益も得られるようになります。そうした意味でも今年は『オンライン音楽元年』と言えます」と、SKTのド・フン氏は語る。

    韓国では2003年に、データをダウンロードして聴くオンライン音楽が、CDなどのオフライン音楽市場の規模を超え、以来、年100%増近い成長率を見せている。ここまでに成長しているオンライン音楽市場の拡大を見据え、音楽業界でも配信音楽へ向けた動きが活発だ。

    昨年12月1日には若手人気歌手のSE7EN(セブン)が、デジタルシングル「クレイジー」をインターネットで発表。1曲800ウォンで提供されたこの曲は、今年1月初旬には29万ダウンロード、計2億3,000万ウォンもの収益を記録した。先のOHDIOでも、昨年12月に「美しき日々 Vol.1」というリメイクアルバムを発表し、ユーザーからの好評を得ているという。もともとインターネットリテラシーが高く、インターネットが生活に密接している韓国ならば、こうした活動を継続することでユーザーの関心も高まり、前出の韓国政府による啓蒙活動も本格化すれば、人々の意識は大きく変わるかもしれない。

    韓国の音楽配信市場は、ダウンロード、ストリーミングを含めると昨年5,000億ウォンという巨大な市場にまで成長している。数字だけ見ると市場規模が拡大していることだけが目立つが、その裏には激しい生存競争があるのも事実だ。とくに顧客獲得競争は激しさを増しているようで、「携帯電話の会員でなければ使えない」「限られたプレイヤーでしか再生できない」といった囲い込みにつながっているようにも見える。ユーザビリティに直結する部分だけに、さらなる市場の開放が必要に思える。また今後は、単純に1曲あたりいくら、というものから、OHDIOのような多様なサービスが生まれることも予想される。

    こうした傾向は他国も同様だ。MP3フォンやMP3プレイヤーの流行で音楽配信サービスが活性化すればするほど、顧客獲得競争とそれに伴う多様なサービスが生まれるのは当然のことであり、そうした意味でも韓国は注目に値する市場だといえるだろう。

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