【レポート】

OpenSolaris - その真意を探る

    後藤大地  [2005/02/24]

    2月1日にSolaris 10の無償ダウンロードが開始されてから、はや1ヶ月がたとうとしている。現在はDTraceといった一部のソースコードが提供されているだけだが、今年の4月から6月にかけてカーネルのソースコードのほとんどが公開される予定だ。日本ではLinuxの話題やIBMの特許公開の陰に隠れて米国ほど話題にのぼっていないものの、Solarisのオープンソース化は商用ソフトウェアが新しい時代をむかえている象徴といえる。Solarisのオープンソース化の真意はなんなのか、それを探ってみよう。

    これまでMozillaやOpenOffice.org、Eclipseのように、商用アプリケーションのソースコードが公開され、オープンソース化されて成功を収めた例はいくつもある。しかし、現状エンタープライズ分野の雄とされているオペレーティングシステムが無償になり、そのソースコードがオープンソースとして公開されるといった事件は今回がはじめてだ。Sun Microsystems(以降 Sun)も本腰を入れており、同社にとってもソフトウェア業界にとっても、オープンソースをとらえる上で一つのターニングポイントになるだろう。

    Solaris 10

    Solaris 10はSunが提供するオペレーティングシステムの最新版だ。すでにソースコードが公開されているDTraceをはじめ、最新の機能が盛り込まれるとともに、いくつかの抜本的な改善がおこわれて全体としての性能が向上している。

    機能面では、128ビットファイルシステムであるZFS(ゼタバイトファイルシステム)の採用、リアルタイムにシステムのトレースをおこなうDTraceの提供、仮想環境を構築するSolarisコンテナや、ハードウェアエラーを予測し自動的に構成からはずして動作させる予測的自己修復機能の追加などがおこなわれている。セキュリティ面では、Trusted Solarisからセキュリティ機能のマージがおこわれている。後方互換性も高い。UltraSPARC系プロセッサのみならず、x86アーキテクチャにも対応し、一般的なPCでも動作する。

    このような高性能オペレーティングシステムが無償化されたことが驚きだが、さらにソースコードまで公開されようとしている。これはいったいどういうことだろうか。

    Solaris 10の無償ダウンロード

    2月1日にSolaris 10の無償ダウンロードが開始されてから、2週間で55万弱のダウンロードがおこなわれた。Solaris 10はウェブ経由で無償でダウンロードすることができ、同じく無償でライセンスを取得することができる。Solaris 10には最初に3ヶ月間の評価ライセンスが付属しているため、その間に無償ライセンスを取得して使用すればいい。

    OpenSolarisプロジェクト

    同社によればオープンソース化の計画はすでにSolaris 8のことからおこなわれていたが、今回の具体的な話が進んだのはこの一年のことだという。SunはSolarisのソースコードをフルビルド可能な形で、OSI認可のオープンソースライセンスであるCDDLのもと提供、同時に1,600にのぼる特許を公開した。このままSolarisの開発をオープンソースコミュニティに移行させていく計画だ。そのプロジェクトこそOpenSolarisプロジェクトだ。SunはすでにUSLから権利の買いあげをおこなっているため、ライセンスに関してSCOに訴えられるといったことはないという。

    OpenSolarisプロジェクトが軌道にのるまでの初期段階では、Sunが開発をおこない、OpenSolarisプロジェクトへ公開していく形をとるが、随時オープンソースコミュニティに移行させ、いずれはOpenSolarisの成果物からSolarisを提供する形に移行させていくという。Linuxディストリビューションを提供しているベンダや、同社がOpenOffice.orgからStarOfficeをの成果を利用して製品化しているような形式に転換していくということだ。

    OpenSolarisの開発に関して、Sun内部のみで閉じ、外部の開発者には内緒でプロジェクトを進めるといったことはしないという。すべてを公開し、開発の主権を一歩一歩コミュニティに移行させていくのだという。

    Javaでは、最終的にSunの認定を得たり、ライセンス料を支払わないとJava自身を公開することはできないが、OpenSolarisではそれがないのである。Sun以外のベンダがOpenSolarisを元にして新しいオペレーティングシステムを作成してリリースすることもできる。

    Solarisはもともと国際版しかないため、公開されるOpenSolarisがそのまま日本語版としても使用できるということだ。

    CDDLというライセンス

    CDDLはOSI認定のオープンソースライセンスだ。Mozillaプロジェクトが採用しているライセンスに特許対策条項を追加したようなライセンスで、とくに作成に参加した開発者が特許関連で被害を被らないように配慮されている。

    SunがOpenSolarisプロジェクトの発足にあたり、ライセンスとしてGPLではなくCDDLを採用した理由は、GPLがもっている伝播性とソースコードの開示義務が提携企業の要求と合わなかったためだという。Sunと提携している企業では、自社のノウハウを公開したくないために、組み込むソースコードを隠蔽したいことがある。GPLを採用した場合はそうしたことがおこえない。このため、提携企業ともやりとりがしやすいCDDLを採用したということだ。

    Solarisは?

    同社ではまだはっきりとしたロードマップを持っていないが、いずれはOpenSolarisの成果物をまとめてSolarisというOSを形成するようになるという。現状のLinuxディストリビューションに近い形になるといえるだろう。まとめる段階でSunとして品質の検証や認定を行い、SunからSolarisを提供することになる。もちろん、Sunは5、6千人近いソフトウェア開発者を抱えており、引き続きSolarisの開発をおこなうことから、Solarisテクノロジが衰退することはないという。

    OpenSolarisプロジェクトでは、Sun以外の企業も、OpenSolarisから自社オペレーティングシステムを開発することが可能になる。これは一見Sunにとって問題のようにおもわれるが、Sunとしてはそれは仕方がないことだと認識しているという。Sunからは従来通りSun品質のSolarisを提供していくし、別途OpenSolarisからオペレーティングシステムがリリースされても、それによって市場が広まれば、Linuxでみられるようななよい循環が生まれるという期待に重きをおいているようだ。

    SunにおけるSolarisという位置づけ

    SunはLinuxDesktopも提供しているが、サーバはSolaris、デスクトップはLinux、という位置づけではないという。Sunにおける中核テクノロジーはSolaris、SPARC、Javaであり、デスクトップもサーバもSolarisが主役。Linuxは需要への対応にすぎず、例えばメモリと同じで、指定された銘柄の部品を提供しているのと同じ感覚なのだという。

    また、Sunが提供した特許もSolarisに関するものであり、Sunが中核テクノロジーとして位置づけているものを公開したことになるのだ。Javaはすでに公開されており、SPARC技術も提携企業間ですでに技術の共有がはかられている。これで、Sunはすべての中核テクノロジーに関する情報を公開したことになる。

    なぜいまオープンソースなのか

    Sunはもともとすべてをクローズドに扱ってきた企業ではない。NFSは廉価なライセンス料で公開されたため、UNIXの標準的なファイル共有ファイルシステムとして定着している。JavaはSCSLというライセンスのもとソースコードが提供されているし、限定的ではあるにせよ、Solaris 8でもソースコードの提供がおこなわれてきた。途中で戦略が変更されたこともあったが、x86版Solarisも提供されてきた。なぜ今、Solarisをオープンソース化したのか。それは端的にいってしまえば、Linuxのインパクトによるところが大きいのだという。

    Sun全体の収益からみると、Solarisの販売による収益はわずかでしかないという。よって、Solarisをオープンソース化することによって生じる損益というのは、すぐに回収できるものなのだそうだ。

    SunはもともとBSDから派生してたオペレーティングシステムをベースにして成長してきた企業だ。最近のLinuxの状況は、そうしたSunの創業当時の雰囲気に近いものがあるのだという。だからこそ、創業当時に立ち返った結果が、今回のSolarisオープンソース化なのだそうだ。

    Linuxは良い循環を実現させている。広く公開されているため、開発者が集まり、アプリケーションが開発され、それ故にまた開発者が集まる。Sunではこれをオープンソースエコシステムととらえ、Solarisにおいても同様の循環を実現させたい意向だ。すでに、Solarisの無償化や、OpenSolarisプロジェクトの発足にともなって、Solaris対応をうたったアプリケーションの数が増え続けている。この数は今度も増え続けるだろう。基本的に日本で独自のコミュニティを発足させる予定はないが、IPv6のように日本で開発が活発な分野もあり、状況に応じて日本におけるコミュニティ発足も考えるということだ。

    Solarisのオープンソース化によるSunの真意は、オープンソースの利点を享受するという点にほかならないといえるだろう。ここにきて、Solarisの今後の展開が楽しみになってきたといえそうだ。

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