【レポート】

GLOCOMが研究会開催 - 漫画国に押し寄せるデジタル映像の新しい波

1 「デジスタ」でおなじみの中谷日出氏が国内のコンテンツ事情を紐解く

    和泉真葵  [2005/02/07]

    NHK解説委員で、BS「デジタルスタジアム」キャスターの中谷日出氏

    「日本発のコンテンツの可能性と課題を探る」ことを目的としたセミナーである「拡大版IECP研究会(コロキウム)」を、国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)が1月31日から連続開催している。その第2回目である「デジタル映像の新しい波」では、NHK解説委員で、BS「デジタルスタジアム」キャスターの中谷日出氏と、映像クリエーターであり、評論家、ジャーナリストでもある大口孝之氏が講演した。

    2004年4月、政府の知的財産戦略本部はコンテンツ専門調査会による「コンテンツビジネス振興政策」を発表。この中で「コンテンツビジネス振興を国家戦略の柱」とすることを明言した。今回の講演は、政策的振興に対する、実際のクリエーター、産業などコンテンツ創発の現場の動向をテーマに行われた。日本発コンテンツのIT推進や輸出産業としての重要性だけでなく、"智業"時代の「ソフトパワー」としての有効性を探るのがねらいだ。

    「デジスタ」でおなじみの中谷日出氏が国内のコンテンツ事情を紐解く

    まず、国内のデジタルコンテンツの現状と試みについて、中谷氏は、自身がキャスターを務める「デジタルスタジアム」の目的、成果を例として挙げながら解説した。

    若手デジタルクリエーターの作品を募集しているデジタルスタジアムへの応募件数は、番組開始当時、週に10件程度だったものが、5年が経過した現在、週に50~70件にまで増えているという。応募者も小学4年生から74歳までと、デジタル映像制作をする人の層も厚くなっている。その中で中谷氏は、クリエーターたちが映像を作ることで生計を立てられるよう、優秀なクリエーターのプロモーション活動も行っている。「デジタルスタジアム」は、ただ番組というだけでなく、クリエーターのモチベーションを高め、デジタル映像を世に出す「ムーブメント」であると、中谷氏は位置づけている。

    中谷氏は映像と音楽とのコラボレーションが、よりよいコンテンツを作るために重要だと感じている。最近ではNHK「みんなのうた」で2004年10月、11月に放送された「月のワルツ」が、デジタルアニメーションとのコラボレーションで話題になり、12月に発売されたCDの売れ行きも好調。会場で放映された「月のワルツ」は、曲のストーリーと、映像のストーリーが絶妙にからみあって、何倍もの感動を生み出していた。少し不気味だったり幻想的だったりする印象深い映像と、ジャズ風の曲調のバランスも心地よい。

    テレビの普及によって映像と音楽は切っても切り離せない時代になった。そこにデジタル映像を参入させようというわけだ。「みんなのうた」ではほかに、「道」で実写の静止画とデジタルの動画を組み合わせるなど、新たな試みに余念がない。中谷氏は、このような「ビジュアルミュージック」によってメディアアートのマーケットを開発していく意気込みだ。

    NHKは、デジタルアートフェスティバル東京(DAF東京)を2003年度より開催し、クリエーターの活躍の場を広げている。ストーリー性の強いエンタテーメント作品から、ファインアート的なものまで、実に様々な作品が集まってくる。「デジスタ」と同様、作品の発表の機会を設けることでクリエーターの制作意欲を高められる。優秀なクリエーターを発掘して、さらに多様なコンテンツを制作していきたい、と中谷氏は話した。

    このような日本発のコンテンツを、海外にPRするために重要なのは、日本の風土、文化を生かしたオリジナリティだと、中谷氏は言う。たとえば、韓国で制作された3Dアニメーション「祝生日(Birthday Boy)」が、アメリカでSiggraph(シーグラフ)ベストアニメーションを受賞し、アカデミー賞にもノミネートされている。戦時中の韓国を題材にした、韓国らしさあふれる作品であることがひとつの勝因であると中谷氏は見ている。

    未来を担うクリエーターに必要なもの、それは映像を制作する技術だけでなく、リサーチ力、「未来」を見据える力、ストーリーを生み出す力、プレゼンテーションの力、さらには様々な意味でのコミュニケーション能力なのだと述べ、中谷氏は話を終えた。

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