【レポート】
初対面の人に会った時、韓国ではまずサイワールドの住所を尋ねるケースが増えている。ミニホームページに行けば、その人の性格や人間関係、周囲の評価まですべて分かってしまうからである。いつ、どこで、誰と、何をしたのか、詳細な記録が残るミニホームページは、まさに個人の生活を浮き彫りにする場であるといえる。韓国ではそれを、見ず知らずの人でも見られるように公開している人が多い。
韓国のネットユーザーは日本人に比べオープンで、とくに若者は本名や顔写真、生年月日を公開することに対する抵抗感が少ない。深く考えずわりとさらりと公開してしまう。サイワールドのミニホームページと、日本で人気を博すソーシャルネットワーキングとを比べた時、大きく違うのがこの点だ。日本のソーシャルネットワーキングで、本名や顔写真が、プライベートな内容の日記とともに公表されるのは、そこが一見さんお断りの完全クローズドな空間だからといえる。
しかしサイワールドでは、イルチョンだけへの公開制限機能があっても、プロフィールや顔写真などを一般公開する人が多く、誰でもその人について分かってしまう場合が多い。むしろ自己表現する喜びや、楽しかった出来事を共有する楽しみを感じているようだ。「住民登録番号や通帳番号ならまだしも、顔や名前を公開したからといって、被害をこうむったことは一度もないから」というのは、先に出てきたサイワールドの人気者、イ・ジョンウン氏の言葉。「プライベート」ということに対する、日本人と韓国人の考え方の差なのかもしれない。
韓国では少し前に「オルチャン」「モムチャン」という言葉が流行した。オルチャンとはいわゆる顔の良いハンサムや美人のことで、モムチャンというのは体型、スタイルの良い人のことを指す。大半はインターネット出身だ。ブログなどで公開された写真が評判を呼び、人気が出て一躍有名人となり、CMに出た人もいるほど。映画「猟奇的な彼女」や、ウサギのキャラクター「マシマロ」も、もともとはインターネット上に掲載された作品が人気を呼んだものであるし、ある事柄への抗議などを行う際も、まずはインターネットに抗議ホームページや集会所を作り、反対活動を行うことも多い。インターネットが文化を作り、世論を左右するのも韓国社会の側面だ。
韓国ではインターネットが生活の一部となっていて、密着度が高い。公的機関であろうと大企業であろうと、情報の発信源としてインターネットがかなりの頻度で活用され、それを活用せざるを得ない状況にある。情報源がインターネットに集中し、優れたサイトが多いので、韓国の人々はWebサイトに対する目が肥えているし、リテラシーも全体的に高い。韓国のWebサイトを見てみると、1ページあたりの情報量がかなり多く、大部分がFlashなどを多用した装飾性の高いサイトであるため、慣れないと当惑するが、こうした傾向はブロードバンド環境が整っているから可能だともいえる。
現在、韓国版サイワールドの会員になっている日本人は、全体の1.5%程度だという。この数字は他の外国と比較すると多い方ということだ。もちろん、これだけで日本人にも受け入れられるとの判断はできないものの、可能性は十分にあるといえる。現在、サイワールド会員の、とある日本人ユーザーによると「アイコンやイラストが多いサイワールドは操作が簡単。誰でもすぐできるから、日本でも流行するかもしれない」という。
しかし一方では「日本では韓国のように自分の写真を好んで公表する人は多くないのでは。私もサイワールド日本版では、名前も写真も公表しないと思う」とも語る。完全クローズドではないサイワールド。外国人として楽しんでいたから名前や写真を公開できたものの、間柄が遠かれ近かれ、知り合いの多い日本において写真を公開することには抵抗感があるという。
どんなに近い国でも必ずあるのが感受性や文化の違いだ。そのズレが、時には現地進出の壁となる場合もある。これに対しグォン・スンファン氏は「(そうした差があっても)不利というより、むしろ有利とみる」という。人同士のつながりを強めるサービスは、西洋と比べ集団主義的な東洋社会でとくに受け入れられやすいとの見方から。また「『自分を見せたい』『自分だけの空間を作ることができる』というサイワールドの魅力は、人間の中でももっとも原始的な欲求のひとつ。だからこのサービスは全世界で通じるものだと思う」とも意気込む。
日本進出の年である2005年内には、韓国と日本、合わせて2,000万人の会員を確保することを目標にすえる。それに弾みをつけるべく、4~6月頃には、国内で新しいサービスも投入する意向だ。また日本だけでなく、今後は中国や東南アジア方面への進出も視野に入れているとのことで、韓国内にとどまらない広い展望があることを明らかにした。そうした国際展開の最初の地として選ばれたのが日本というわけだ。隣の国から上陸した「流行の目」は、日本のソーシャルネットワークにも、新しい旋風を吹きおこすことができるのだろうか。春のオープンに期待したい。
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