【レポート】
ハードもソフトもユニット化することで、必要な人が、必要な機能だけを使いこなしていくようなシステム、市販の支援装置ではなかなか難しいカスタマイズ、それらを可能にするのが「できマウス。」だ。前述のように、ユーザーの声や支援者の声から生まれた製品でもある。そして、それを補助するような開発者や支援者の輪も広がっている。「私は人に恵まれています」と町田氏は語る。
そもそも「できマウス。」のウェブサイトは、日本障害者協議会情報通信委員会に所属していて、川崎パソコンサポートボランティア代表でもある梅垣正宏氏からメーリングリストとともに無償提供されている。現在、「できマウス。」のメーリングリストには、ユーザーや、支援機器、障害者のIT問題に興味がある人など、127名が参加している。「できボタン+」などは、そのメーリングリストのユーザーのアイデアから生まれたものだ。
また、在野の人ばかりではない。町田氏に、ある日突然、マイクロソフトから連絡があり、2003年9月のWPC EXPO2003(幕張メッセ)では、マイクロソフトのAccessibilityコーナーで「できマウス。」が展示された。「幕張メッセに出展するようなお金はないですよ、と言ったら、無料でいいので展示してほしいということで」(町田氏)。そして、その後、Microsoft Assistive Technology Vendor Programのメンバーとして正式に参加しないかという誘いを受け、現在ではそのメンバーとして、マイクロソフトから支援技術に関する情報提供などを受けながら、「できマウス。」のソフトウェア群の開発に役立てている。
こうして、支援の輪が各方面から広がった「できマウス。」は、草の根プロジェクトとして今日も発展し続けている。「『みなさんの1年は、私の一生……』と書かれてあったサイトを見て、少しでも早くツールをお届けしたいと思いながら開発していますが、たびたび難問にぶつかります。そのことをウェブサイト上に記載しますと、解決案をお寄せくださる方もいらっしゃいます。ユーザー様からの嬉しいメールも届き、パワーをいただくことも多いです。皆さんに後押しされている自分に気づき、それからは、『できマウス。』プロジェクトと称しています」ということだ。
「できマウス。」開発に協力してくれたユーザー、プログラマーや会社のうち、サイトで公開してもいいと了承をもらった人々の名を、町田さんは感謝を込めて自サイトの「ご協力いただいている方々」の欄に掲載している。それを見ると、実に多彩な会社や個人の支えによって「できマウス。」プロジェクトが成立しているのかが分かる。また、ユーザーからのお便り欄のページも設けられている。「インターネットで公開するようになってから反響が凄く増えました。実は、ウェブサイトをリニューアルすればという声もいただいているのですが、スタイルシートなどを勉強する時間がなくて」と町田氏。しかし、ユーザーと交流する姿が、「できマウス。」サイトからははっきりと読み取れる。「私が想像しなかったような視点、たとえば、もともと肢体不自由の方向けに開発してきた『できマウス。』とそのソフトが、視覚障害者が少ないキーで操作するのにも役立つのではないかという御意見をいただいたりして、感謝しています」という。
今後のソフト開発についても、「間もなくコードレスユニットを発表します。不明瞭な音声でも操作できるソフトとか、安価なUSBカメラで操作できるソフト、お好みのスイッチでパソコンの電源を入れたり、携帯電話へメールを発信したりするハードも発表していきます」と町田氏は夢を語る。その町田氏の願いとしては、「できマウス。」プロジェクトに、学生のような若い人も参加してもらいたいということだ。「50歳半ばで、ノウハウも徐々に忘れていきますので、若い方々に伝えることができたら嬉しいです」という。草の根のボランティア活動から出発した「できマウス。」プロジェクトが、今後どのように展開していくか、楽しみである。
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