【インタビュー】

「連想プロセッサ」の開発 - 賢いコンピュータを目指して

16 異分野との交流が新しい研究を生む

    古林高  [2005/01/01]

    -- 実際の生体、医学、人間の行動科学といったところからLSI、コンピュータシステムの研究に対してフィードバックがありえるということでしょうか。

    ありえると思いますね。私たちの研究グループは、心理学の先生とも付き合いがあります。今回も心理学の先生に特別講義をしていただきましたし、私も心理学科に行って自分たちの研究を紹介したりといったこともしています。

    -- かなり異分野の研究者と交流しながら研究を進められているのですね。

    そうですね。ここはそもそも新領域創成科学研究科といって、従来とは違う新しいものを作るというのが、この研究科のミッションですから、違う学問分野を融合して新しい学問分野を作ろうということは大いにやっています。学内でも、私と文学部の視覚心理の佐藤先生(佐藤隆夫氏:東京大学大学院人文社会系研究科 教授)と、神経細胞を研究されている久恒先生(久恒辰博氏:東京大学大学院新領域創成科学研究科 助教授)と3人で合同ミーティングもやっています。そうしたこともヒントになっています。そういう意味では大学は分野の異なる方々がいらっしゃるので、刺激があって面白いです。

    -- 先生の研究が実用化し産業に結びついて、世の中を大きく変えて下さると良いと感じるのですが…。

    そうなると良いのですが…。まだまだこの研究は力不足なので、もっと育てて行きたいと思います。このような考え方をする学生も育ってきて、メーカーにも入り始めていますので、こういう考えにも協力してもらえるようになってくることを期待しています。もう少し出来てくると、産業応用に結びついてくるのではないかと思います。暖かく見守って欲しいと思っています。

    -- 研究はとても大変ですので、時間がかかると思います。今日は大変示唆に富んだ貴重なお話を頂きましてありがとうございました。

    研究室のメンバーの皆さんと柴田教授

    今後に大きな期待

    筆者はヒューマノイドロボットの技術の今後にも強い関心を抱いているが、現在注目されている技術が、やや2足歩行など運動能力に偏りすぎているきらいがあるという意見を持っている。現在のヒューマノイドロボットに欠けている能力は、まさに今回のテーマのような直感的情報処理能力と言えないだろうか。ヒューマノイドロボットに必要な、周囲の状況を認知する、人の会話を認知する、そういった課題に対して、従来のようにロジカルな分析で行うのではなく、過去の記憶とその重ね合わせによって認知を行うという今回のパターンマッチングの手法はきっと有効に違いない。もちろん、ロボットへの応用に限らず、柴田教授の話にも出てきたように、幅広い分野で有効な基礎技術となりえるのではないかと感じる。

    また、今回のパターンマッチングは回路の非線形特性を利用している。非線形性は21世紀の重要なキーワードと呼ぶ研究者もいるなかで、そのような言葉が関連する研究であるということも興味深い。現在は比較的シンプルな手法だとしても、今後研究が本格化していくなかで、非線形性を深く利用して生体と脳の情報処理機能を実現していく方向性が出てこないとも限らない。

    連想プロセッサが創り出す新しいコンピューティングの世界に期待したい。

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