【レポート】

eMEX2004とITベンダーの産業集積が進む中国/長江デルタの現状

4 輸出型から内販(中国国内市場)を狙う動きへ

    吉村章  [2004/12/20]

    華東地帯(長江デルタ)が注目されているもうひとつの理由は、上海を中心とした国内市場規模の急成長である。市場として中国を考える場合、中国全体を見るのではく、地域ごと(経済圏ごと)に考えるべきというのが鉄則である。つまり、ターゲットを絞って地域戦略を考えることが重要である。

    事実、華南地域(珠江デルタ)、華東地域、北京地域など、経済成長が著しい沿岸部であっても地域差があり、それぞれの地域的な特徴、経済事情、省ごとによって違う風俗習慣、人々の地域性の特徴など、地域の特殊性を十分に考慮し、市場開拓の戦略を考えなければならない。内陸部、西部開拓の対象となっている各省での市場開拓を考える場合、沿岸部とはまったく別のアプローチが必要だろう。

    eMEX2004フォーラムでスピーチを行ったジェトロ上海センターの丸屋豊二郎所長によると、上海地区のひとりあたり国民所得は5,600ドル、「新富裕層」という市場を形成しつつある。一説には、上海ドリームをつかみ、所得が1億元を超える層が人口の5%近くいるという。

    eMEX2004フォーラムで基調講演を行ったジェトロ上海センター丸屋豊二郎所長

    eMEX2004フォーラム風景

    日系を始め外資系企業が市場としてターゲットとする所得層は、一般的におよそ3,000ドルといわれている。こうした中間所得層を見ても、1995年には上海市の人口の10%ぐらいであったのに対して、2000年には40%、2003年末の統計では、60%に達している。

    つまり、グレーター上海と呼ばれている華東地域だけでも、8,000万~1億人となる巨大な市場が存在するのである。面積は日本の2分の1であるが、人口では日本とほぼ同じ規模の経済圏である。

    また、中国ビジネスでは「上海を制した者は中国を制する」といわれている。上海は情報発信地であり、情報の国内流通の最大の拠点であるといわれている。省都の地方都市に立地する大手デパートの購買担当者は、常に上海での売れ筋をチェックしているという。つまり、「上海で売れているものを仕入れて、店頭に並べれば間違いなくヒットする」と考えているのだ。

    欧米や日本から入ってくる文化は、まずは上海に上陸する。上海で流行したファッションは必ず地方に伝播する。上海製はいいものというイメージがあり、上海製というだけでブランド力がある。こうした上海のイメージが流行やマーケットを先導し、こうした情報が流通していく仕組みが、上海から江蘇省、浙江省、そして各省の省都へ広がっていくのである。

    中国ビジネスにおけて日本企業はさまざまな問題点を抱えている。スピーディな意思決定ができる組織作り、中国ビジネスに対する長期的方針の再検討、駐在する現地責任者のスキルと本社の支援体制、優秀な人材の確保など。eMEX2004フォーラム(10月22日)の席上、参加したパネリストから以上のような点を指摘する発言が数多く聞かれた。

    しかし、「中国企業は経営体質的にはまだまだ脆弱で、足腰がふらふらしている」というのが、基調講演を行ったジェトロ上海センターの丸屋豊二郎所長の考え。さらに、「ターゲットを中間所得層や新富裕層に絞り込み、まずは上海を制することが中国ビジネスを成功に導く鍵である。生産拠点から内販へ、激烈な競争を伴ってめまぐるしく変化する中国ビジネスであるが、日本企業が『強み』を発揮するチャンスはまだまだある」というコメントでスピーチを締めくくった。

    上海ガニ、右のはさみについているのはICチップが埋め込まれたリング。清澄湖でとれた上海ガニあること(偽者ではない)ことの証明

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